Interview

読売ジャイアンツ 鈴木 尚広選手(相馬高出身) Vol.02

2014.09.29

 4回連載でお届けしている読売ジャイアンツの鈴木尚広選手のインタビュー。第2回では、走塁における3つのヒントを鈴木選手から教えていただきました。「セーフティーリード」で準備をするお話しから、スタートと加速時のポイントなど、ぜひ参考にしてみてください!

ヒント1:「セーフティリード」で準備する

読売ジャイアンツ 鈴木尚広選手

「まずは自分のセーフティリードを知る必要があるかと思います。帰塁することに重きを置くのか、スタートすることに重きを置くのか。人それぞれで割合が相当変わる部分ですね。僕の場合も、帰塁する意識ももちろんゼロではありません。

 でもたとえ牽制がきて逆を突かれても帰塁できるセーフティなリード幅を知っていることで、塁へ戻ることに対する意識がなくなります。だって絶対戻れるのですから。この話をすると、消極的な感覚を持つかもしれませんが、逆に積極的なスタートを切るためととらえてほしいですね」

 盗塁で難しいのは行くか、戻るか、まったく逆の動きを瞬時に判断する必要に迫られるからだ。もしスタートを切るだけでよいのであれば、運動会の徒競走と同じ。スタートのピストルが鳴ったら(ピッチャーがモーションに入ったら)一目散にゴール(次の塁)へダッシュすればいい。

 やっかいなのは、「牽制がくるのではないか」という心理的なブレーキだ。このブレーキを解除するには、牽制がきてもアウトにならないギリギリのリード幅を知っておくことで実行できる。

「安易にリードを小さくする、という意味でいっているのではありません。普段の練習などから、セーフティな範囲で、かつギリギリのラインを見極めておく、ということです。あくまでいいスタートがきれる条件を整えるためのものですから」

 そう。すべては盗塁を成功させるために、いいスタートをきれる準備を自分で整えていくのだ。鈴木選手は、さらに微調整を加えるという。

「塁上に立ったときにしか味わえない感覚というものがあるんです。そのときマウンド上にいるピッチャーもタイプはそれぞれ。そこで自分の感覚とピッチャーの感覚を合わせていくようなこともします。つまり、セーフティリードと一口にいっても、必ず同じリード幅とは限らないということです。

 相手の牽制が速いと感じるのか、遅いと感じるのか。たとえば一塁にいて、左ピッチャーでもゆっくりな牽制であればもっとリードをとってもいいと判断できます。逆にいつもより逆を突かれる牽制が多いと感じれば半歩縮めてみたり。リード幅を縮めることは必ずしもマイナスにはなりません。すべては自分の中の心理的ブレーキを解いて、スタートを切りやすくするための準備、ととらえれば誤解しないで取り入れられると思います」

 絶対に盗塁を成功させたい場面がやってきたとする。そのとき、「速く走る」ことばかりに注意が向き過ぎていないだろうか。盗塁成功の肝はスタートにある。高確率でいいスタートをきるのに、まず大切なのは準備。安心してスタートできる状態を作り上げることが大切だ。

【9月特集】スピードを生かす技術

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ヒント2:ピッチャーを「俯瞰して」見る

読売ジャイアンツ 鈴木尚広選手

 セーフティリードを心得た。実際にそのリードを保つことができている。お次に来るのはスタートをきるタイミング……ピッチャーとの駆け引きになる。

 リードをしながらピッチャーの動きを観察する際、どこを見るかというのも人によってそれぞれだろう。鈴木選手はさぞかし集中力を発揮してピッチャーを見ているのでは、と思っていたが、本人の口から出てきたのは驚くことにまったく逆の答えだった。

「ピッチャーというものを“少し大きく”見ていますね。ひとついえるのは、物事に対して一点に集中しすぎてしまうと、周りのものが見えなくなってしまう、ということです。これは盗塁を狙うランナーも同じ。目が一点に集中すればするほど、じつは知らないうちに筋肉も固まりやすくなります。

 僕も集中はもちろんしてますけど、凝視しすぎることはありません。たとえばピッチャーの軸足だけに注視すると、気づけないその他の点が増えすぎてしまうんです。大まかに見ることで、ピッチャーの始動する箇所やその他の身体的クセを探すことができます。

 あまりに集中しすぎると、その時点で既に力んでしまっていて、いざスタートしたときには力が入らなくなってしまうんです。力の入れ所がズレてしまうんですね」

 ここまで鈴木選手の話を聞いていると、塁上に立った時点から「流れ」を大切にしているように感じとれる。力を入れ過ぎないことで柔軟に対応できる状態を保ちながら、準備とピッチャーの駆け引きに臨む。「無理に」「強引に」いくことなく、マイペースだけれども試合の流れにうまく乗り合わせていくのだ。

【9月特集】スピードを生かす技術

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ヒント3:「床反力」でベストなスタートと加速を!

読売ジャイアンツ 鈴木尚広選手

 ギリギリのセーフティリードをとり、ピッチャーを俯瞰してみることでスタートの準備を整える。では、実際に盗塁のアクション面、特に最重要とも言われるスタートに関して、鈴木選手はどのような考えを持っているのか。

「力を出しっぱなしの状態でモノを押してもなかなか押しきれない、という経験をしたことはありませんか? それよりも一瞬力を抜いてから入れることで反発力が生まれるんです。『床反力』というものなんですけど――」

 床反力とは。ニュートンの第3法則である作用・反作用によると、人が立っている足底には動こうとするとき、その人の体重と推進力と同じだけの力が地面から反力として作用する。この地面からの反力を『床反力』という。

 鈴木選手が言いたいのは、力を出しっぱなしの状態でスタートすると自分が生み出した推進力しか用いることができない。一方、一瞬力を抜いてから力を入れることで、床反力を得、そこに自分が生む推進力をプラスできる……ということだろうか。

「やってみてもらえればわかると思いますが、一瞬力を抜くとその反動でポンと進む感覚が得られます。

床反力を利用することで、一瞬にして最大の力を発揮できるんです。だからスタート時は力を入れるのではなくて、抜くんです」

 力を抜くといっても、一瞬、スッと抜くイメージ。そうすることでフルの力が生かせるばかりか、ムリがないぶん、スムーズに足を進塁方向へ出すことができる。ロスがないぶん、一歩目の歩幅も力みのある一歩目に比べて長くなる。

さらに、このスタートが塁間走の加速にもつながってくる。
「スムーズにスタートができれば、上体が起き上ってきません。逆にスタートにムリがあったり、力みがあると上体が伸びあがってしまって、その時点で加速が期待できなくなってしまいます」

 スタートとその後の加速は流れとして一体化している。考えてみれば当たり前のことなのだが、スタートはスタート、加速は加速で別々に考えている選手も少なくないのではないだろうか。

 スタート直後に上体が起き上ってしまえば、それだけ空気抵抗を受けて減速する。その起き上った状態を無理に抑えようとすれば、また余計な力が体に入ってしまう。「力を入れずにスムーズにかつ速く走る。このイメージを練習で意識して追い求めていけばできるようになると思います」

(第3回へ続く)

(取材・文/伊藤 亮

【続きを読む】読売ジャイアンツ 鈴木 尚広選手(相馬高出身) Vol.03

【9月特集】スピードを生かす技術

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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