試合レポート

浦和学院vs前橋育英

2013.05.23

浦和学院vs前橋育英 | 高校野球ドットコム

山口 瑠偉(浦和学院)

浦和学院が執念の粘り打ちで好投手を攻略!3年ぶりの関東大会制覇!

 関東大会決勝戦は3年ぶりの関東大会優勝を狙う浦和学院と2年連続群馬県勢優勝を狙う前橋育英前橋育英はエース・高橋 光成(2年)を先発マウンドに立てた。浦和学院は背番号10の山口 瑠偉(3年)だ。

 1回表、前橋育英は山口の立ち上がりを捉え、二死一、三塁のチャンスを作るものの、無得点。先制はならなかった。

 準々決勝以来の登板となった高橋光。初回に二段モーションを指摘され、球速も135キロ前後と速球が走っていなかったが、2回以降から140キロ連発。特に4回表が素晴らしかった。まず2番贄隼斗を140キロ台の速球で追い込んで、フォークで空振り三振。3番山根 佑太(3年)には最速144キロを計測。140キロ台の速球で追い込んで、再びフォークで空振り三振。高田も三ゴロ失策、木暮 騎士(3年)を左飛に打ち取り、4回までノーヒットに抑える完璧な投球だった。

 高橋光。来年のドラフト候補に上がる逸材であることは間違いないだろう。187センチという長身。長身だけではなく、身のこなしにセンスがあり、大物感を漂わせる。そしてフォームも下半身主導の動きができる完成度の高い投球フォーム。フォームが良いので、140キロ台の速球、フォークを制球良く投げられる。クイックも187センチの長身ながら1.1秒~1.2秒前後と実にスムーズ。技術的、能力的なモノは高校2年生の春の時点で合格レベル。
 彼を高く評価するのはそれだけではない。試合前からの投球練習から彼の意識の高さが伺えたのだ。

 試合前のブルペン。彼はただストレートを投げるだけではなく、カーブ、スライダー、フォークを色々試しながら投げていた。見る限り、ストレートよりも変化球の投げる割合が多かった。この試合は変化球のコントロールが大事と捉えていたのだろう。そしてランナーがいることも想定して、セットポジションからの投球もしていた。しっかりとテーマを持ってプレーしているのが伝わった。浦和学院戦へ向けてどういう準備が必要なのかを理解しているのだろう。その取組が前半まで活きていた。


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優勝旗を持ち、ダイヤモンドを周る浦和学院ナイン

 好調の高橋光を捉えたい浦和学院は5回裏、6番斎藤 良介(3年)がストレートを捉えて、右前安打、7番西川 元気(3年)もストレートを狙い打って、見事な右打ち。右前安打となって、無死一、二塁のチャンス。8番山口が1死二、三塁のチャンスで9番服部 将光(3年)。高橋は抑えようと140キロ台のストレート、スライダー、カーブ、フォークを厳しいコースへ投げようとしている。だが服部はしぶとくファールを続ける。3ボール2ストライクとなって12球目。しぶとく食らいついた打球は前進守備を敷いていた二遊間を抜け、中前安打に二者生還し、2点を先制。服部の粘りが先制を呼び込んだ。

 1番竹村 春樹(3年)が三ゴロで二死二塁となって2番贄が中前適時打を放ち3対0とする。チャンスをしっかりとモノにする浦和学院のしぶとさも素晴らしいが、しっかりとホームイン出来る抜け目の無い走塁も見逃せない。

 浦和学院の先発・山口は135キロ前後のストレート、スライダー、チェンジアップ、ツーシームを投げ分け、要所を締める投球。8回表に土谷 恵介(3年)に中犠飛を許したが、1失点に留める。

 追加点を入れたい浦和学院は8回裏、二死三塁から高田が真ん中に入ったスライダーを捉え、レフトの頭を超える二塁打で4対1に。9回表、山口が締めて、ゲームセット。浦和学院が3年ぶりの関東大会優勝を決めた。


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関東大会準優勝の前橋育英ナイン

 今年の浦和学院。常にコールド勝ちをするような周りを圧倒するような強さはない。ただこのチームは小差で勝てるのが最大の強みではないだろうか。

 関東大会のスコアを見ると日大三に2-0山梨学院大附には6対3東海大望洋に3対2、そして今日は4対1といずれも3点差以内だ。決勝は好投手・高橋に対して、粘り打ちで3点をもぎ取った。そしてダメ押しとなる高田のタイムリーと抜け目がない。小差でも勝てるチームこそが本当に強いチームだと考えているが、浦和学院は小差で勝てるチームなのだ。

小差で勝つために攻撃では常に全力疾走、少しでも先の塁を狙う意識、無駄球を打たず、カットをし続けて、打てる球を確実に撃つ打撃。少ないチャンスから点をもぎ取ろうとする野球が出来ている。そして守りでも投手は徹底としたインコース攻めでつまらせ、守りでは球際に強い堅実な守備。少ないチャンスをモノにする攻撃ができて、簡単なミスを許さない守備が出来るのだ。

 センバツでは2年生左腕・小島 和哉が優勝投手となったが、春季大会では山口が活躍。関東大会で2試合完投勝利。小島を投げさせなくても、頼りになる投手が台頭したのは今大会の収穫といえるだろう。

 浦和学院は優勝が決まった瞬間。ガッツポーズや選手間でのハイタッチなど全くなく、そのまま整列に向かった。喜怒哀楽を表に出さなかった。あくまで関東大会は通過点として考えているのだろう。次へ向けて見据えているように見えた。夏までさらに隙のないチームへ成長していくのか注目していきたい。

 敗北した前橋育英。リベンジは果たせなかった。だが一瞬のミスを逃さない高いレベルの野球を実現する浦和学院と対戦した経験は前橋育英ナインをより大きくさせていくのではないだろうか。雪辱を晴らすには夏の甲子園に出場するしかない。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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