Column

【三年生座談会】成立学園高等学校(東東京)

2012.10.01

僕らの熱い夏

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▲左から小柳君、亰田君、見目君、篠崎君

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 この夏の東東京大会で、6試合のうち4試合で1点差ゲーム。うち3試合でサヨナラ勝ち、延長が2試合という勝ち上がりで、苦しみながらも初の甲子園出場をつかんだ成立学園

 赤羽にある学校から、グラウンドと寮がある東鷲宮まで約1時間をかけて通うという毎日の中で、掴んだ栄冠だった。初めての甲子園出場に、これまでずっと野球部を応援し続けてきた地元の人々や、成立学園卒業生など、この夏は熱く沸いたという。

 甲子園では、1時間16分の試合で東海大甲府に敗退したものの、選手たちは確実に新しい歴史を築いた。そんな成立学園の3年生4人に、熱く燃えたこの夏を振り返ってもらった。

◎座談会メンバー
見目 雅哉:主将・セカンド
篠崎 悟:4番・ファースト
亰田 一世:センター
小柳 大樹:キャッチャー

甲子園初出場を決めたこの夏を振り返って

▲見目雅哉主将(成立学園)

――まずは、この夏の東東京大会を振り返ってみてください。 

篠崎 最初(3回戦の紅葉川戦)から苦しい戦いが多くて、いつ負けてもおかしくない状況だったと思います。それでも、このチームで最後まで戦うことが出来て、甲子園まで行けたので、誇りに思っています。本当によかったと思います。

――初戦を延長戦で何とか切り抜けて、次が関東一ということになったのだけれど、それは意識していた?

見目 抽選の時にも、記者の人から「一つ勝ったら関東一だけれど、どう?」というようなことを聞かれたんですけれども、「ただ、やるだけです」とだけ答えていました。ただ、やはり一つのヤマだと思っていましたし、意識はしていました。

――試合前の意識としてはどうだったのですか。

見目 チームの状況とか、力とかいろいろ考えたときには、普通にやったら負けると思っていましたが、それでも勝てたんで、それが、その後にも大きかったと思います。

亰田 決勝でも、9回に追いつかれて、それでもすぐに小柳が出て、見目が返すという、3年生の活躍で最後、勝てたのがよかったです。

小柳 9回の守りで、それまで1点で抑えていたし、2点リードでしたから、油断ということではないですけれども、抑えられるだろうとは思っていました。それが、2点取られてしまって、それでもまだ一死満塁だったので、キャッチャーとしてはどうしたらいいのかと思っていました。もうそうなったら、そこでどうこうするという問題ではなかったですね。

▲篠崎 悟(成立学園)

――2点リードして最後の守りについたときには、甲子園が頭にチラチラしたということはなかったですか。

篠崎 ありましたよ。ただ、すぐに先頭が出てしまったんですよ。

見目 詰まった打球が落ちたものでしたからね。

小柳 あれで、いやな感じがして、簡単には終われないなという気がしていました。

――結局追いつかれて、同点のままで何とかその裏の攻撃に入ることが出来たんだけれども、その時にベンチではどんなことを言っていたのですか。

小柳 延長にしないで、この回で、決めるぞということを監督さんからも言われていました。それで、決めてやろうと思いました。

見目 自分に回ってくるということは、あまり意識はしていなかったのですが、打順が来たので思い切っていきました。

――最後、サヨナラで決勝戦を勝ったときは、どんな思いが横切りましたか。

篠崎 自分たちが目標にしていた甲子園に行けることになったんですけれど、最初は実感がわかなかったですね。初戦を勝てるかどうかも分からないような自分たちが、甲子園へ行けるなんて、思ってもいませんでしたから、驚きの方が大きかったです。

見目 そうですね、やはりまだ実感はなかったですね。「あっ、勝ったんだ」とは思いましたけれど、これで甲子園だ、とは思わなかったですね。

亰田 何だか(大会が)まだ、これから続くんだろうな、という感じでした。

――決勝のホームを踏んだ小柳君はどうですか。

小柳 走っている時は、ホームへボールが帰ってくるのかということもわかりませんでしたし、どこへ飛んでいるのかもわからなかったです。夢中だったんですけれど、キャチャーにボールが返ってこなくて、そのまま滑り込めました。それで、その時に勝ったんだなという気がしていました。

[page_break:夢の舞台で感じたこと]

夢の舞台で感じたこと

▲小柳 大樹(成立学園)

――そうして、甲子園へ出場することになったのですけれども、甲子園の感想を一言、聞かせてください。

篠崎 甲子園は、レベルが高いなと思いました。確かに、自分たちも勝ち上がってきたのですけれども、相手のレベルが高いという感じがしました。アガッたというか、緊張感もありました。

見目 外から見ると冷静にやっていたかのように見えたかもしれないですけれども、緊張はしていました。それでも、守りでは冷静には出来たと思います。ただ、高目のボール球につられてしまいました。

――高目のボールにつられないというのは、実は関東一対策としてもやってきたことですよね。

見目 そうです。関東一の時も、二松学舎の時もその対策を練ってきたのですが、やはり甲子園では相手の投手が上だったというか、結局手が出てしまいました。

亰田 甲子園は、広かったという印象でした。それと、お客さんが多く入っていて、ビックリしました。中学の時に、テレビで開会式を見ていたこともあったのですけれど、そこに自分がいるというのは、何か不思議な感じがしていました。

小柳 ボクとしては東東京大会から通じて、一番緊張しないで出来たと思います。あの舞台で緊張して、自分のプレーが出来ないというのは、もったいないと思いましたから、勝ち負け関係なく、楽しんでやろうと思っていました。それが出来たと思います。捕手として、背中でいろいろなものを感じていました。

――甲子園の印象としては、どうでしたか。

小柳 負けたということよりも、自分としてはここまで来られて、そこでプレー出来たことがよかったなと思いました。

見目 前の試合が長くなって、待ち時間が出来てしまったのですが、相手も同じなので、準備だけは怠らないようにという気持ちでした。その時間も含めて、楽しめたんだと思っています。

▲京田 一世(成立学園)

――成立学園での3年間というか、実質野球部生活での2年半なのですが、それを振り返ってみて、苦しかったことは何でしたか。

篠崎 冬の練習がきつかったですね。朝5時45分に起床してすぐにランニング、100メートルダッシュ、50メートルダッシュ、30メートルダッシュと何本もやるんですけれども、その後にすぐに丼飯2杯を食べるんです。それが苦しかったですね。冬は、これが毎日続きました。

――それが、体作りにつながったということですよね。

篠崎 はい、そうだと思いますけれども、これでメンタル的にも強くなれたんじゃないかと思います。

見目 最後の結果がよかったので、これまでやってきたことが生きたのだと思いました。もちろん、きついこともありましたけれど、結果的にはよかったと思っています。

――見目君は栃木県から来たのだけれど、選択として成立学園へ来たことはよかったということですね。

見目 そうです。中学の時の監督さんから紹介されて、ここ(成立学園)を見に来て、最終的には自分で決めたんですけれど、いい結果が出せたと思っています。

亰田 練習はきつかったんですけれど、それを乗り越えてこられたので、今思えばすごくよかったと思っています。

小柳 練習もきつかったのですが、寮生として先輩がいるときは、いろいろ気を遣ったりということもあって、それがプレッシャーにもなっていたことがありました。練習が終わった後でも、気を抜けないなという感じでした。もちろん、3年になったら、そんなことはありませんでした。

――よかったこととしては、やはり最後に甲子園という結果が出せたということになりますか。

小柳 もちろんそうですね。

見目 結果がよければ、やはり、よかったということになります。

[page_break:後輩へのメッセージ]

後輩へのメッセージ

▲左から京田、見目

――引退していく3年生として、後輩たちへのメッセージがあれば、お願いします。

篠崎 今の2年生とは、一緒に1年以上寮生活で過ごしてきて、いい思い出も悪い思い出もあるかもしれないけれど、自分たちと一緒に過ごしてきて思い出を次に伝えられるようにして、自分たちよりも、もっと強い成立学園を作っていってほしいと思います。

見目 甲子園に行ったということは忘れて、初心に戻ってまた、やってほしいと思います。

――新チームは、前主将として見てどうですか。

見目 自分は、(家が遠いので)今でも寮にいますから、練習にも出ているのですけれど、強くはないと思います。去年の秋の自分たちと同じくらいですね。だから、これからどんどん練習していって、強くなっていってほしいと思います。

亰田 冬の方が練習はきつくなっていくと思うのですが、チームワークよく頑張って、また甲子園に行ってもらったら嬉しいです。


小柳 1日1日を大事にして、それでも3年生で最後になった時に、悔いは残ると思うんですけれど、自分の中でやりきったという気持ちで引退していってほしいと思います。

▲成立学園野球部寮

――最後に、成立学園の自分たちのチームで一番よかったところは何でしたか。

篠崎 どんな時でも、笑っていられたことでした。ピンチの時でも、自分たちが苦しい時でも、みんな笑っていました。それがいいところでした。

見目 チームワークが良かったと思います。3年生同士もそうですけれど、1年生、2年生、3年生という関係も良かったと思います。それは、寮生活があったからこそというところもあったと思います。

亰田 そうですね、やっぱりチームワークの良さでしょうね。練習の時もトレーニングできつい時にも、声かけて、盛り上がってやれたので、そういう時はいいチームだなと思っていました。

小柳 みんな、何だかんだ言いながらも野球が好きだったことじゃないでしょうか。口では、「もう野球は、いやだ」みたいなことを言っていたんですけれども、根の部分ではみんな野球が好きだったから、続けてこられて、最後にみんな気持ちが一つになれたことで、甲子園に行かれたのだと思います。 

[page_break:監督が語るこの夏の戦い]

監督が語るこの夏の戦い

菅澤剛監督にも、今年の夏の戦いを振り返ってもらった。

――このところ過去3年、ベスト4続いていたのですが、ようやく壁を破ることが出来たという感じでしたね。

菅澤 剛監督(成立学園)

菅澤 そうなんですけれど、私としてはここ数年の中では一番力がないのではないかと思っていました。一昨年くらいが、チームとしては最も力はあったと思います。ただ、今年は早い段階で甲子園ベスト4の関東一と当たって、それに勝ったことは大きかったですね。

 当たる前に一度、関東一の(エース)中村 裕太君を見たんですが、そんなに調子はよくはないなと思ったんです。特に、高めのボールに手を出さないことだということを徹底しようと思って、マシーンでも高めを見送る練習をしていました。

――それが功を奏したという感じでしたね。

菅澤 そうですね。ただ、ウチは先まで見据えてという戦いはしていませんでしたし、そういう戦いは出来ませんから。そういうチームですから、以前だったら次の広尾戦を(延長にもつれたし)落としていると思うんです。それがなかったということは、やっていくうちに自信になったんだと思います。

――結果的に甲子園出場を果たすことが出来ました。

菅澤 はい。正直、甲子園には勝ちに行ったというのではなく、こんな環境で試合することが出来るのだから、思い切り楽しんでもらえればという思いでした。素晴らしい天気の日だったのですが、選手たちには試合前に、「せいぜい2時間か2時間半だから、笑って気分良く野球をやろう」と言いました。それが、結果的にはちょっと短くて1時間半もなかったですけれどもね…(苦笑)。

 成立学園はスポーツ推薦があってアスリート選抜クラスはあるのだが、特待生制度はない。学校の方針としても、スポーツを通じて人を育てるということを方針としているので、「甲子園出場が絶対だ」というプレッシャーをかけているわけではない。そうした中で、この夏、初めて勝ち得た甲子園出場だったのである。

(取材・構成=手束仁

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