試合レポート

鳥羽vs石山

2011.10.26

鳥羽vs石山 | 高校野球ドットコム

鳥羽の4番・枝

胆力

 胆力。
京都大会を1位通過した鳥羽の強さを表現すると、この言葉が一番合う。
鳥羽・山田監督は苦笑していう。
「どことやっても、うちはこういう接戦になるんですよね」。
鳥羽が3-0で勝った。この試合は21日に鳥羽が1-0でリードしている時点で降雨ノーゲームとなり再試合となって行われた試合たが、それでも、鳥羽は、変わらず持ち前の試合運びで勝利したのである。

ノーゲームで勝っていたチームは、再試合になると苦戦すると言うのは高校野球の中で、たくさん見てきた。だが、鳥羽は、前の試合と同様に積極的かつ粘り強く、高いパフォーマンスを発揮していた。

例えば、1回の攻撃。
前回の試合では、先頭打者が出ると、バントは使わずにエンドランで好機を広げたが、今日も、それは変わらない。

1回裏、1死から2番・神埼が右翼前安打で出塁すると、強攻策で好機を拡大する。3番・伊坂、4番・枝の連続安打で満塁として、5番・五味の適時打で2点を先制したのである。

また、バッターボックスの徹底も見事で、右方向を意識したバッティングを実践。相手先発の勝永の緩い変化球に対し、球に逆らわないバッティングで安打を連ねていた。作戦の徹底は、日1日でどうにかなるものではない。日頃からの練習環境や生活習慣がチーム力につながっている証と言っていい。

それは、粘り強いピッチングを見せた、エース・五味にしてもそうだ。

五味は前の試合では、1回表に1死・1、3塁のピンチを作ったが、後続を併殺打で切り抜け、チームにリズム作った。この日の試合も同様で、1回表に二人の走者を出してピンチを作るも、後続を断った。2回には2死から得点圏に走者を許すも、タイムリーは許さず。3回のピンチも断ち、5回表には、3度出塁を許したが、併殺打とけん制死でピンチを脱した。7、8、9回は走者を一人も出さずに、6安打完封勝利。

打ちそうで打ち崩すことができない。チームにも派手な強さは感じないのだが、目には見えない強さが鳥羽に感じられるのだ。
ただ単なる、戦術や技術力だけではないのだ。


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鳥羽のエース五味

山田監督は言う。
「とにかく、この子らに、練習にしても学校生活にしても、我慢をさせてきました。練習では僕も部長も、厳しく言いますので、それで粘り強くなったのかなと思います。選手たちに逃げ道は作らせていないですね」。

人は逃げ道を作ると、そこに助けを求める。しかし、それを繰り返していると、なかなか強い精神性は育まれない。練習をしているだけでは培われないその強さは、チームで徹底しているのだろう。

エース・五味に粘り強さの根源を聞いた。
「僕の中では学校生活が大きいと思います。練習で最後まで集中してやるのは当たり前のことだと思うんですけど、学校生活で我慢することが野球につながると思います。心がけてきたのは、授業の一番最後ですね。特に最後の15分は集中して、疲れていても寝ないようにしてきました。それがマウンドでの我慢強さにつながっている」

次戦は、今大会の優勝候補の一つ智弁学園である。勝てば、センバツ出場をぐっと手繰り寄せることにつながるが、五味は「相手がどうこうよりも、自分たちの野球をしてチーム全体で勝てたらと思います。チャレンジャー精神で臨みたい」という意気込みで締めた。
山田監督が最初に語った「どこと試合をしても接戦になる」という確立しつつあるチームスタイルが、智弁学園戦でも発揮されれば、11年ぶりのセンバツ出場が大きく近づくことになる。

(文=氏原 英明)
(撮影=試合シーン04~37 中谷明)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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