Column

国士舘高等学校(東京)

2011.06.30

国士舘高等高等学校

国士舘高等学校2011年06月30日

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【目次】
1.4試合で長打14本のパワー打線
2.選手が力を発揮しやすい環境を作るのが、指導者の仕事
3.自主練習のモチベーションを選手同士でアップ

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4試合で長打14本のパワー打線

【国士舘=守備・走力のチームカラーに、新たに“強打”】

 昨夏の東京大会5回戦で、東東京の横綱・帝京高校を14対6の7回コールドで打ち破った国士舘高校。

「去年の帝京戦は、相手をビックリさせるようなこと。嫌がる野球をやっていかないと、こちらに勝機はないと考えていました」と、箕野豪監督は序盤からエンドランを仕掛け、国士舘自慢の機動力を武器に果敢に帝京を攻め続けた。

 また、150キロ投手を擁する帝京の投手陣対策として、大会前から打撃練習ではエア式のトップガンを使用。各バッターは打席に立って150~160キロ近くの速球を体感して目を慣らしていった。実際の試合で国士舘は、当時2年生だった伊藤拓郎など帝京の4投手を引きずり出し、計15安打の猛攻をみせている。

 白星を挙げた準々決勝までの5試合で43得点を叩き出した国士舘は、この年の夏、東東京大会ベスト4まで駒を進めた。準決勝では修徳に敗れるも、これまでの「国士舘=守備・走力」のチームカラーに、新たに“強打”を印象づけた夏となった。

 そして、今年の春季東京大会でもベスト16入り。準々決勝までの4試合で長打14本。うち7本塁打を6人の打者で放つなど、打撃力の高さは昨夏に続き、今年のチームも健在だった。

 かつて国士舘といえば、守備力強化のために、いち早く地下足袋を導入するなど、「守り重視」でチームを作り上げてくるイメージが強かった。それは、1983年からの22年間、国士舘を率いてきた永田昌弘監督(現国士館大監督)が作り上げてきたものだ。

 そして5年前、国士舘高校野球部に永田前監督の教え子でもある箕野監督が就任すると、これまでの伝統を継承しつつ、新たな風を徐々に吹き込んでいった。
箕野監督は、国士舘高から東北福祉大卒業後、社会人野球の強豪・松下電器(現パナソニック)などで内野手として活躍。05年には日本選手権で優勝を経験。現役時代、自身のウリでもあった走塁やバッティングの理論を現在は、高校生向けに分かりやすく噛み砕いて伝えている。

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【目次】
1.4試合で長打14本のパワー打線
2.選手が力を発揮しやすい環境を作るのが、指導者の仕事
3.自主練習のモチベーションを選手同士でアップ

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選手が力を発揮しやすい環境を作るのが、指導者の仕事

【選手のいいものを伸ばしていくような提案を】

 「バッティングではタイミングを一番大事にしています。来た球に対して自分のスイングが出来るかどうか。低い変化球がきて態勢を崩されながらも、バットの芯近くに当てるスイングが出来るのか。ポイントを変えても、自分のスイングが出来るようなタイミングの取り方を練習していますね。

 例えば、球の待ち方でいえば、インコースの一番速い球にタイミングを合わせて取りながら、外側を待っておいて、もしインコースにきても対応できるか。ただ、そのために、『バットとボールの捉え方をこうしなさい』とか、『フォームをこう直しなさい』とは言いません。

もし最初に伝えたバッティング方法が合わなかったら、次にトップの位置や、違うタイミングの取り方を提案して『とりあえずやってみろ。だめなら次の方法』と型にはハメない。選手のいいものを伸ばしていくような提案を心掛けています」。

 そんな箕野監督の指導を選手たちはこう話す。

「監督は、自分たちに思いっきりプレーさせてくれます。野球に対しての考え方や、アドバイスも深いです」。これは、正捕手でありながら、マネージャーの仕事もこなす一ノ瀬優の言葉だ。

 箕野監督の指導方法のバリエーションの広さは、打撃だけでなく、守備や走塁でも細かな戦術を持つ。キャプテンの坂本大起は言う。

「走塁に関する戦術もたくさんあって、Wスチールやエンドランなど攻め方がたくさんあるので、僕らはまず見て覚えていきます」。この“見て覚える”お手本のプレーを実演するのは、箕野監督だ。今年33歳となる箕野監督は、社会人野球の現役時代から体格は少しも変わっていない。また、自ら動き体の使い方を教えるのと同時に、野球における“考え方”も伝えていっている。

【選手とコミュニケーションを図るコーチ】

「感覚は教えられませんが、考え方を伝えることなら出来る。バッティングであれば、どんなイメージで打てばいい当たりが出るのか。振り方じゃなくてイメージですね。バットの軌道をイメージさせて、このスイングで打ったらどんな当たりが飛ぶのか確認する。漠然と打つと何も得られませんからね。

 守備であれば、頭の中でランナーを動かすこと。例えば、ランナー付きノックでは、『ここはこういう打球が飛んでくるだろう』とか『このカウントならこう動こう』とか。野球は確率のスポーツですが、試合のデータを参考にするのではない。データだけを頭に入れていても、予期しないことが起こるのが野球なので、試合では自分で判断して動ける選手を作っています」。

 そういった選手の感性を養うために、そして選手が力を発揮しやすい環境を整えるために、心掛けていることの1つが相互理解。

「選手とコミュニケーションを図ることを大事にしていますね。それぞれの選手がどんな性格で、どういう考え方をしているのかを理解しようと、まずは選手の考えを聞くようにしています。学校で間違ったことをしていても、グラウンドでミスしても、自分が悪いと感じていないと先に進めないので、まず聞いて、そのあとどういう行動をとるのか。選手たちと会話をするうちに、『こんな表情するんだ!』『こんな反応するんだ!』と気付くことは多いですよ」。こういった会話の中で、選手の性格や得意なこと、弱い点を知り、各選手にあったアドバイスや、チームの中での役割を見つけ出していっている。

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【目次】
1.4試合で長打14本のパワー打線
2.選手が力を発揮しやすい環境を作るのが、指導者の仕事
3.自主練習のモチベーションを選手同士でアップ

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自主練習のモチベーションを選手同士でアップ

【基本的な練習を徹底的に積み上げてきた】

 国士舘に新たな風を吹き込んで5年目の今年の代は、箕野監督の想定以上に、選手たちは大きな成長をみせている。

 このオフシーズン、10月後半から2月までの4ヶ月間は、グラウンドの改修工事のため、トレーニング中心の練習となったが、その分、基本的な練習を徹底的に積み上げてきた。

「冬の間は、腹筋や背筋などの体幹のトレーニングや、周りの競技場を借りてランニング。打撃練習はティーバッティングやスイング。守備練習に関しては、たまにキャッチボールをするくらいでした。ノックでは、投げずに取ることだけを繰り返していました」春はサードコーチャーを務めた水川啓伍が振り返る。

 ここに、指導陣が知らないエピソードが1つある。室内練習場もないため、「各自で家に帰って振り込もう」と部員同士で約束した。その間、学校内ではこんな会話が自然と生まれていたという。授業の休憩時間になると、野球部員は廊下に集まり出し、「お前、昨日どれくらい振ったの?」とお互いに確認し、「俺は今日500スイングする!!」と仲間の前で宣言するなど、意欲的に取り組んでいったという。普段、箕野監督やコーチから教えられている、タイミングの取り方やバットの軌道をイメージしながら振り込んだ結果、この春の4試合で7本塁打を放つというパワー打線が誕生したのだ。

 しかし春季大会終了後、打撃練習を行ったのは、1ヵ月間で4回だけ。ほとんどの時間を守備と走塁練習に時間を割いてきた。夏の大会に向けて、やはり最後は国士舘野球部の伝統でもある“守備力”を徹底的に鍛え上げている。

「1年1年が勝負だと思っているので、思い切った指導と采配をこの夏もしていきます」。

 5度目の夏に挑む箕野監督と、国士舘ナインたちの熱い夏が今、始まる。

(文・安田未由

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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