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神宮大会を振り返って 来春の注目選手を先取りチェック

2010.12.28

第24回 神宮大会を振り返って 来春の注目選手を先取りチェック2010年12月28日

(右投手編) 来年を代表する好投手 素材は去年以上!

神宮大会を振り返って 来春の注目選手を先取りチェック | 高校野球ドットコム

吉永健太郎(日大三)

 今大会は素質が高い投手が揃った。去年と比べると完成度・素材の良さは断然上であり、彼らが期待通りの成長を見せれば高卒で指名される可能性は高いだろう。

 優勝投手となった日大三吉永健太朗は来年の高校球界を代表する本格派右腕だ。最速147キロのストレートだけではなく、スライダー、チェンジアップ、フォーク、カーブと球種は多彩。投球フォームの土台、体格も良く、間違いなく高卒プロの素材だろう。来年はドラフト1位指名に相応しい投手になれるか注目してみたい。
 

また、最速152キロ右腕・釜田佳直は今大会で150キロをマーク。速球の速さだけではなく、制球力の高さと切れの良いスライダーも光り、ただの速球投手ではない。

 課題は空振りが奪えないストレート。この冬でストレートを磨いていくことが課題になってくるだろう。
さらに最速148キロを計測した天理西口輔は馬力なら今大会NO.1。まだ制球力、変化球の精度、マウンドさばきに課題を残すので、選抜まで投手らしさを増すことができるか。
 関西水原浩登は最速142キロを計測した本格派右腕。投手だけではなく、打者としてもライト方向へホームランを飛ばした長打力も魅力。来年の選抜で適正を見極めていきたい。

(左投手編) 技巧派が揃った今大会

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野田昇吾(鹿児島実)

 左腕投手は高卒プロと匂わせる投手はいなかった。大学・社会人で実力を磨いてほしい投手が多かった。

 プロ注目の関西堅田裕太は絶不調に終わった。コントロールが荒れてしまい6四死球。球速こそ140キロは出ていたものの、切れを感じない。今年の左腕では上位に入る投手だけに冬にフォームの修正を行い、選抜ではスカウトのハートを射止めるような投球を見せてもらいたい。
 鹿児島実野田昇吾は尻上がりに調子を上げていった左腕。120キロ台だったストレートも中1日を空いたことで138キロを計測するほどまでに。甲子園よりも変化球の切れ・使い方が上手くなり、投球ができる左腕になった。

 ただ甲子園から神宮大会決勝までほぼ一人で投げ抜いてきた。疲労は相当なはず。しっかりとケアを努め、少しずつ体を大きくする努力をしてもらいたい。打撃・走塁も良い選手であることも付け加えておきたい。
 大垣日大葛西侑也は神宮大会で投げた左腕投手の中ではNO.1の内容。速球派が多い現代の野球で、打たせて取ることを極めた投球スタイルは面白い。高卒プロタイプではなく、大学・社会人になってからの成長が楽しみな投手だ。

 野手はタイプ付けしていこう。スラッガー編・好打者編・俊足堅守編に分けてみた。


(スラッガー編) 楽しみなスラッガーがずらり!

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北川倫太郎(明徳義塾)

 今回はスラッガータイプが多かった。木製バットの対応によって打撃スタイルの変更を余儀なくされる選手も多いが、純粋に長打力を伸ばしてほしい選手をリストアップした。

 今大会でスラッガーの力を示したのは日大三横尾俊建だろう。西武の中村にあこがれる横尾。本家に負けないほどのフルスイングを見せ、決勝戦ではスライダーを捉え、レフトスタンド中段へ持っていくホームランを放った。
 捌くのが難しい低めに入る変化球を簡単に捌いており、生粋のローボールヒッターだろう。個人的には大学経由するよりも高卒プロを狙ってほしい選手。

 不発に終わった明徳義塾北川倫太郎。打者としての雰囲気、打球の速さは目に見張るものが、厳しいマークが続く中で如何に強打をアピールできるかが勝負になる。
 東北上村健人はスケール溢れるスラッガー。抜群のヘッドスピードから放たれる打球は尋常じゃない。体格も良く、非常に楽しみな打者。
 関西渡辺雄貴は身体能力抜群の中距離打者。リストが強く、明徳義塾戦ではあわやバックスクリーン直撃と思わせる一打を放った。足も速く、強肩。来年はドラフト候補と呼ばれる右打ち内野手が少ないので、ぜひ台頭してほしい素材だ。
 鹿児島実揚村恭平はスケール溢れるスラッガー。甲子園では当たりを見せていたが、神宮大会では不調に終わった。もう一度バットを振り込み、体のキレを生むトレーニングを積んでキレのあるプレーを臨みたい。キレが出てくれば、持ち前のパワーを発揮できるだろう。

(好打者編) キラリと光る左の好打者陣

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高山俊(日大三)

 やはり好打者タイプは非常に多いので、厳選した。

 優勝した日大三は1番・高山俊と3番・畔上翔をリストアップ。北海戦でホームランを放った高山俊は一発を狙えるパンチ力とバットコントロールを兼ね備えた外野手。都大会では不調だったが、神宮大会で徐々に調子を上げていった。俊足且つ強肩で、楽しみな外野手。

 3番・畔上は都大会から好調だったアベレージヒッター。変化球も難なく対応し、右、左に打ち分ける。特に光るのは強肩。センターから素晴らしい返球を見せて、アウトにできる選手だ。

 鹿児島実豊住 康太は好打堅守強肩の外野手。選手権から大当たりを見せ、九州大会、神宮大会でも好調をアピールした。

 左右に打ち分けるバットコントロール、思い切りの良いプレースタイル。そして決勝戦で二塁走者を補殺した強肩。打撃面の成長を見せれば、ドラフト指名候補として期待できる選手だ。この3人は来年のドラフト候補に挙がるといっていいだろう。他にはシャープなスイングを見せる濱田竜之介鹿児島実)、ミートセンス抜群の小林賢剛浦和学院)にも注目だ。


(俊足堅守編)チームに欠かせないいぶし銀 

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時本亮(大垣日大)

 俊足堅守型の選手といえば鹿児島実平山大海が挙げられるだろう。抜群な動きを見せるショートストップで、走塁センスも抜群。打撃が鍛えられれば面白い存在。

 東北小川裕人もリズムの良い守備を見せる遊撃手。打撃も力強く、大型ショート候補だ。大垣日大時本亮はディフェンス力ならA級。大垣日大のここ2年の躍進を支えている捕手だ。課題は打撃強化とスローイングの矯正だ。
 この他にはキレの良い動きを見せた明徳義塾のセカンド梅田翼、堅実な守備を見せた浦和学院のセカンド・遠藤生。そして日大三の正捕手・鈴木貴弘も吉永の持ち味をうまく引き出した。

(期待の1年生)光る素材が続々!

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佐藤拓也(浦和学院)

 多くの1年生が出場していたが、特に浦和学院の1年生コンビは注目だ。

 エースの佐藤拓也は130キロ台なものの、多彩な変化球を織り交ぜる技巧派右腕。打撃も軸がブレない打撃フォームから右、左に打ち分ける。
6番に座る石橋司は強肩強打の外野手。一本足の打法から鋭い打球を飛ばす。一歩目の速い守備も武器だ。二人とも今後の成長が楽しみ。

 投手としては天理中谷佳太をリストアップ。出所の見づらい左腕。神宮では136キロを計測したが、ビシッとした球筋のストレートはまだ少ない。素材は良いだけに来年の進化に期待。

 日大三戦で登板した北海玉熊将一平田成もリストアップ。玉熊は最速136キロのストレートに切れ味鋭いスライダー、カーブを投げる技巧派右腕。実戦経験は豊富だが、技巧派右腕でもストレートが良い投手が活躍する。この冬にストレートを磨いてほしい。平田は経験が少ないが、素材は良く、右オーバーから130キロ前後のストレートを投げ込む。体が出来れば140キロ台が期待できる投手だ。
 日大三の一塁手・金子凌也も軸がぶれない打撃フォームは魅力。両サイドに打ち分けるミートセンスは山崎福也を彷彿させる。飛ばす能力は山崎に負けていないし、楽しみなスラッガーだ。

自分の持ち味・武器を把握し、秋よりも成長した姿を!

 多くの選手を紹介してきたが、皆、キラリと光る武器は持っている。選手たちには自分の持ち味と武器をしっかりと把握し、更なる上達を目指し、取り組んでいただきたい。
 春、夏で最高のパフォーマンスを残すためには、この冬の取り組みが非常に大事になる。そしてこの期間はじっくりと自分を見つめ直せる時間だ。この時期は練習だけではなく、広い視野で野球と野球以外の物事を勉強してほしい。自分で考え、自分で行動を起こせる選手が初めて自立・自律できる選手と呼べるのである。まだ花でいうと蕾の彼らが、選抜の舞台で開花することを期待している。

(文=高校野球情報.com編集部 河嶋 宗一)

■ 写真で振り返る 明治神宮野球大会 PhotoGallary
第1回 明治神宮野球大会
第2回 明治神宮野球大会 注目選手

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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