銚子商vs県立銚子
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銚子商業・小原
銚子商業・4番川口の3ランで決着!
■東部地区野球大会とは?
11月中旬に行われる東部地区野球大会は千葉県第6ブロックの加盟校による非公式の大会である。
千葉県の春季と秋季大会は県大会を前にブロック予選が行われる。千葉県は8ブロック別に分かれており、第6ブロックは海匝地区(銚子・飯岡)、香取地区(佐原・成田・香取・小見川)、山武市、印旛郡(八街・酒々井)、山武郡(横芝光)で構成されたブロックとなる。このブロックには今夏の甲子園でベスト4入りした成田や、伝統校・銚子商、メジャーリーガー大塚晶則を輩出した横芝敬愛、07~08年の間にベスト4入りをニ度経験した新鋭気鋭の東総工など実力校が多い地域である。
東部地区野球大会は、第6ブロックの親睦と、さらに新チームになって少しずつチームとして形になってきたところでさらに11月で実戦の機会を積み、来年度へ繋げていく為に行われたものである。
チーム事情によって様々だが、勝ちに行くチームと、多くの選手に経験を積ませながら勝利を目指すチームで分かれる。
今日は[stadium]横芝坂田池球場[/stadium]で2試合が行われた。1試合目は銚子商対県立銚子の銚子勢対決。
試合は3回表、県立銚子の9番高橋が放った当たりはセンターへ。センターの小林が目測を誤り、頭を越える二塁打に。さらに1番飯笹はバント。投手・木内が処理に入り、一塁へ送球するが、カバーが入っておらずセーフ。県立銚子は無死一、三塁のチャンスを作る。2番鈴木はスクイズを敢行。打球は投手前に転がり木内はグラブトス。しかし送球は捕手のミットの頭上を超える悪送球となり、三塁ランナーがホームイン。これで県立銚子が先制。さらに無死ニ、三塁から3番小林のスクイズで2点目を加える。
3回裏、銚子商は4番川口が左中間へ場外に消えるホームランで1点を返す。そしてニ死二塁で7番滑川。滑川はセンター前ヒットを放ち、銚子商がすかさず同点に追いつく。このタイムリーは県立銚子のシフトが生み出したものだった。県立銚子は滑川のときにセンターは左中間寄りに守らせた。ここでバッテリーはカーブを選択。しかしこのカーブが高めに入り、滑川はがら空きの右中間へ打ち返した。シフトがいないところに打った滑川は見事だったが、県立銚子バッテリーの詰めの甘さが残った。
しばらく試合は膠着し、7回裏。一死から連続四球で一死一、ニ塁を迎えたところで先ほどホームランを打っている川口。川口はインコースの直球を引っ張りレフトスタンドへ運んだ。4番の3ランで銚子商が勝ち越した。そして銚子商は5回から登板したエースの小原が締めてゲームセット。銚子商が勝利を収めた。
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銚子商業・小原
■チーム総評
銚子商は、正捕手・川口の存在は大きい。打者としても、捕手としても頼れる選手だ。エースの小原もこの試合は不調であまりボールは走っていなかったが、場数を踏んでおり、落ち着いた投球を見せる。
ただチームの完成度はまだ低く、カバーリングを怠ったり、目測を誤ったり、ヒットを打ってもつながらないところに弱さを感じる。バッテリーは良いので、あとは野手陣を鍛え上げ、成長を図ることができれば来年、甲子園を狙える位置まで到達するだろう。
県立銚子は小林―今井のバッテリーを中心にまとまったチームだ。エースの小林はオーソドックスな右投手。ストレートのスピードは120キロ前後だと思うが、カーブのキレが中々なものがあり、ストレートとカーブのコンビネーションで投球を展開していく投手。コーナーに突くことができて、銚子商打線を6回まで2失点に抑えた。守備も打者によって守備位置を変えていて、ポジショニングを重視しているチームに見えた。極端なポジショニングは時に外れることもあるが、考えて野球をやっている証明であり、方向性は間違っていない。あとは一つ一つのプレーを突き詰めていけば、強豪校を脅かすチームになっていくだろう。
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銚子商業・川口
本日の一押し選手はもちろん、2ホーマーを放った銚子商の川口一也(捕手/右投右打/173センチ72キロ)だ。本塁打を打った内容は素晴らしかった。
まず第2打席。直球を捉えた打球音は鈍かった。詰まっていたので、レフトフライになるかと思われたが、打球の勢いは全く落ちない。ぐんぐん伸びて打球は場外へ消えた。この打球には度肝を抜かれた。さらに第4打席。インハイのストレートに肘を畳んでレフトスタンドへ持っていった。まさか非公式の小さな大会で一個人のプレーに衝撃を受けるとは思いもよらなかった。
技術的に見ていくと川口はスラッガータイプにありがちなトップを高く構える大上段の構えはしない。グリップが高すぎることも、低すぎることもなく、肩の位置に置いてバランスよく構えることができている。いわゆる自然体の構えだ。
投手の足が降りたところから始動を仕掛けていき、足を回しこむように上げて真っ直ぐ踏み込んでいく。トップをぐいっと深く取っていき、振り出す。右肘の畳み方が上手くインパクトまでバットが遠回りせず振り抜くことができている。押し込みの強さとリストの強さも相まって力強い打球を飛ばすことができる。
彼が詰まってもホームランにすることができているのは押し込みの強さにあるといえる。直球だけではなく、変化球もしっかりと溜め込んでから打ち返すことができており、変化球の対応力も高い。
観察してみると技術のレベルも高い事が分かった。彼が詰まってもホームランにできるのは潜在的に備わっているパワーだけではなく、技術の高さによってそれを伝えることができるのではないだろうか。打席に入ったら入念に足場を固めて構える姿を見ると、その集中力の高さを感じられる。それは、自分の狙った球を逃さない鋭さにつながっている。打者としてのレベルは千葉県でも5本の指に入る選手といえるだろう。
次に捕手について。ワンバウンドになったらすぐにボールを拭いて投手に返し、ピンチになったら、さっとマウンドによるなど投手への配慮はしっかりしている。スローイングタイムは2.00秒~2.10秒と平均的なのが残念。上のレベルを目指すのならば、スローイングのタイムを縮めながら、コントロールの良いスローイングができるフォームにする努力が必要だ。
初めて見た選手だが、想像以上にレベルの高い選手で驚かされた。体力面も、技術面も、精神面でも銚子商の選手の中では際立ったものがある。来年の春季大会では注目を浴びるキャッチャーになることは間違いない。ぜひ上のレベルを目指して欲しい選手の一人であった。
(文・撮影=河嶋 宗一)