Column

特別対談 工藤公康選手(上)

2010.11.22

殖栗正登のバランス野球学

特別対談 工藤公康選手(上)2010年11月22日

今回の「殖栗正登のバランス野球学」は工藤選手との対談をお送りします。

現役最多の224勝(2009年終了時点)を挙げるなど、現在も活躍を続ける工藤選手に、理想のフォーム、フォーム作りのポイントについてお話を伺ってきました。

これから来春までのオフシーズンを迎えるあたり、冬季トレーニングでの皆さんの参考になれば幸いです。


フォームに関する2つのイメージ

【高校野球情報.com】特別インタビュー 工藤公康選手

殖栗:インタビューアー(以下「殖」) 今日工藤さんに主にフォームとスピードについて中高生球児の参考にとお伺いできればと思います。

工藤選手(以下「工」) どうぞ!なんでも聞いてください!

「殖」 工藤さんが考えている理想のフォームとはどのようなものだと思いますか?

「工」 理想のフォームといっても難しいのですが、フォームというのは自分が育った環境とか身長とか骨格の大きさとかで変わるものなので、理想のフォームというのは僕から言えば無いんですよ。

「殖」 なるほど、人それぞれ体型、年齢によって違うということですね。

「工」 ただ、その中で自分にあったフォームを身につけることが大事で、当然小学校の時は骨格が小さかったけど、中学高校と大きくなった人もいるだろうし、その逆もあると思うんですよ。

 僕はフォームに関して2種類のイメージが持っています。いわゆる1つは軸回転をさせるというものと、人間の体重を使って振り下ろすというものです。

「殖」 2つのフォームの違いはどこからくるのでしょうか?

「工」 特に身長の大きい子は振り下ろないと軸が長くなってしまって故障してしまう。遠心力で引っ張られてしまって自分の思う球が投げられない。だから身長の大きい子は意外に後ろを余り大きく使わずに前大きくつかいます。逆に身長が小さくて手足があまり長くない子は、いわゆる「ふれる」という感覚があるので、自分の体から逃げていかない、引っ張られすぎないので、横軸を回転させるんです。まずそれに合っているかを見るんです。

「殖」 なるほど、その投手が遠心力を使うフォームなのか、回転で投げるフォームなのか、どちらが合っているのかをまずチェックするんですね。

【高校野球情報.com】特別インタビュー 工藤公康選手

「工」 子供たちを見るにしても、選手を見るにしてもそうなんですけど、それにあっているかあっていないか、今の時点でという考え方でいいんですけど。プロに入ってくるとそれが乱れている子がいるんですよ、つまりどっちでもない。
 それは多分、身長が急に大きくなったり、身長が止まってしまったりして、中途半端な使い方が原因になって、上と下のバランスが取れていないということにつながっていたりするので、フォームしても体の使い方にしても、まずそこから教えなきゃいけない。

「殖」 そうですね。

「工」 プロでも言いますよ。なんでプロでうまくいかないかというと、プロって一年中投げるじゃないですか。だから壊れてしまうんです。高校、小中高大学もそうですが、ある程度投げる時期と休む時期があるから、その時はうまくやって来れた。
 ではなぜプロに高校から入って一年目から入って投げられるかというと、そういう子たちはずーと投げてきているんですよ。

「殖」 それは良いフォームだからでしょうか?

「工」 えぇ、ずーと投げてきて、休んでもいいよといわれても投げてきて、そういうふうにしてきた子は、逆に言えば良いフォームとしているから投げてこれるというのもあるし、自分で投げたいと思えるのはそんなに疲れていないと監督やコーチに表現する一つの表現する方法でもあるし、もっと自分で学びたい気持ちがあるというのもあるし、でも投げたくないと思っている子は一試合投げただけで疲れちゃう。

「殖」 なるほど。

「工」 そういう子たちのフォームをどうすればいいかというとなかなか難しいんですけど、僕の中では股関節と体幹と肩という3つのポイントがあってそこがうまく使えているかを見ます。まぁいろんな投げ方をしているけど、それが先の2つのどちらに属しているのかと、股関節、体幹、肩の回内旋、回外旋は連動していなきゃならない。その連動がうまくいっていない場所を見つけて選手に伝えます。

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縦回転と横回転のフォームの違い

【高校野球情報.com】特別インタビュー 工藤公康選手

「殖」 工藤さんが考える縦回転と横回転のフォームの大きな違いってなんでしょうか?

「工」 大きい違いというのは、下のフォームは基本的に股関節しか動かないので、それを伝わってくる動きによって角度が変わってくるんですよ。
 振り下ろすという、回転を加えることに関していえば、上げた状態でないと力が振り下ろせない、そういう場合は足の使い方が変わってくる。力の出る方向ってのがあるじゃないですか、その力のでる方向があまり大きい、動きがないというのが基本なんですよ。

「殖」 えぇ。

「工」 足を上げたときに、大きく後ろに振ってしまうとどうしても上半身が横の回転になってしまうので、そういう人たちってのは足をあげたらそのまま下に引き下ろすという、「引き下ろす」というのが1番いい表現ですが、そうやってやると、一番大きい回転の動きがないので、そのまま腕が上がって振れば、伸ばされた状態から縮むという動きが上と下でできるんですね。

 それが軸になっている所が(右投げの人だったら左の股関節)、そこからどうしても上体の長さが長いので、自分のリリースポイントに来ない。それだけの筋力を高校、大学だけで身につけるのはほぼ不可能です。

「殖」 選手を教えていて思うのですが、理論だけではだめだなと。やはり感覚的なことも大切だと思うのですが、工藤さんはどう思いますか?

「工」 理論だけでやったために故障した選手も沢山いるんです。お医者さんもそうだし、みんな理論はわかっているんですが、それを選手に言ってしまうと選手とは全く合わない。先生たちは人の動きを見ていて、僕らは投げている実際の感覚を言っている、そこにズレはあります。

「殖」 そこは選手に強くいわないと。

「工」 そうですね、それが助長されてしまい、肘を壊したり、肩を壊したりということにつながっていきます。


ジャイロボールはストレートではない

【高校野球情報.com】特別インタビュー 工藤公康選手

「殖」 僕は雑誌で工藤さんが、「ジャイロボールはストレートではない変化球で、ストレートの定義をしっかりした方がいい」と言っていた記事を拝見したのですが、まっすぐってトップスピンの回転じゃないですか、ジャイロボールっていうのは違う回転で、あれっていうのはストレートではないですよね?

「工」 全く違います。そう回転をかけて、ドリルみたいに空気を突き抜けるように。じゃあなんでスライダーは曲がるんですかって話です。これは曲がるんですけど、これは曲がらないんですか?そんなことありえないです。縫い目が4つあってそれにひっかけて投げてどっか空気との圧力が変われば当然曲がってくるはずで、ジャイロボールだけはまっすぐいくってのはありえない話です。そういう理論で考えている人と話しても、会話が成り立たないです。

「殖」 あぁやっぱり。僕もこの前140km/s後半投げる選手が、130位しか投げられなくなり来院したんですが、ジャイロ投げだったんです。

「工」 なるほど、そうだったんですか。

「殖」 ジャイロボールは変化球だよと。まっすぐはこうでしょと説明して元に戻すのが大変だったので、一回プロの工藤さんからそのことを高校球児のために聞いておきたかったんです。

「工」 これは問題が多くて、僕も昔そういう話を聞いて、自分が納得しない、絶対に違うと思ってその人とはわかれたんですが・・・。理論がわかる、お医者さんの理論がわかるんですが、あくまでもそれは人間の生理学的な理論の中で行われているのであって、それは神経伝達と別のところにあるという考え方を持っておかないと、それは投げるときに人間の体を守ろうとする中で動きがあるわけで、つくるもんじゃないとしっかり理解しておかないと、やる側の人達の感覚とズレてしまい、変に助長されてより壊す確率が高くなるんですよ。
 これって難しいんですよ。体作りのタイミングもそうだし、今高校に入ってきたばかりの子にプロに入るためにまず何をしなきゃいけないかというと、レントゲンなんですよ。

「殖」 自分の体をしっかり把握してからプレーすることが大切ということですね。

「工」 骨がまだ発育している状態で激しいトレーニングをしたら余計骨棘が出来易くなってしまう、まだ骨が大きくなろうとしているので。骨って簡単に壊れてしまうものです。それがもうしっかり固まっているかそうでないかでトレーニングの質も中身も替えなくちゃならないです。
 高校生でもそうですよ。これからまだ大きくなっていくわけでしょ。球を早くしたい、遠くに飛ばしたいということやっていくと、そこでバランスがくずれきたり、骨が変形したり、それがプロに入って何年かやっていくと持病になってしまうケースが多いんですよ。たいがいの選手が故障したりするのは、昔高校の時こういうことをやってきたとか、どっかで傷がはいったり健がきれたりしておかしいと感じながらも高校だから投げたりとか、いわゆる自分より格下ばかりだとそんなに力いれなくてもいいじゃないですか。

「殖」 高校まではそうなりがちですよね。

「工」 でもプロに入ったら自分より上の選手ばかりだから全力で投げなくちゃならない、そこがきっかけできれてしまう。そんなことがいっぱいあるんですよ。そういうことを含めて、レントゲンやMRIを一番最初とってどこがどうなっているか、本人との診断の中でやっていく。それは高校生でも中学生でもそうですよ。小学生、中学生のとき大きな怪我をしたことがないかと聞くんです。

「殖」 今新潟県でそういった取り組みがあると聞きました。

「工」 僕も今度山形の方とトレーナーセミナーを行ないます。トレーナーや整骨院の方、みんなでそうやって輪を作っていけばと思います。もっと野球の理論だけでなく、生理学というのも知らなくてはならない。

「殖」 判断材料が多いほうが良いということですね。

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今回の対談は、特別インタビュー 工藤公康選手(下)へ続きます。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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