試合レポート

日大三vs鹿児島実

2010.11.18

日大三vs鹿児島実 | 高校野球ドットコム

秋を制したのは日大三

今シーズン公式戦ラストゲームは・・・

 今シーズンラストの公式戦となった明治神宮大会決勝戦。鹿児島実野田 昇吾(2年)、日大三吉永健太朗(2年)の両エースがマウンドに上がり、勝敗こそついたものの、素晴らしい投げ合いを演じた。
 前日(17日)が雨天順延。寒い時期に緊張感のなか試合を続けてきた選手にとっては、肉体、精神ともに疲労を取る良い休養になったのは間違いない。その象徴が両チームベストメンバーで臨んだことだ。全国が注目する決勝でエースを立てられたのは大きな材料。

 実は日大三の小倉全由監督は2試合完投した吉永の疲労を考えて、当初決勝の先発に立てる予定がなかった。それが中1日の休養を経たことで、「吉永が投げたくてウズウズしている」とエース先発に変更したという。
 一方の鹿児島実・宮下正一監督は現時点での大エースである野田に予定通りマウンドを託した。この時点でこの決勝戦が意義深いものになったのは間違いない。

 その決勝。大きなポイントとなったのが一回裏だ。日大三高の1番高山俊(2年)がヒットで出塁。これを2番谷口雄大(2年)が送って一死二塁となった。そして3番畔上翔(2年)がライトへ先制タイムリー。さらに4番横尾俊建(2年)もヒットで続いた。立ち上がりに不安のある野田は、続いて5番の清水弘毅(2年)にもライト前ヒットを打たれる。その打球をみて二塁走者の畔上は三塁ベースを蹴る。だが、ライトの豊住康太(2年)からキャッチャーの黒木兼太朗(2年)へ見事な返球で畔上はタッチアウトとなった。

 大量失点を防いだ豊住のビッグプレーで野田は救われた。もしこれがセーフになっていたなら、無失策試合もなかっただろうし、選手の張りつめた気持ちも切れていただろう。このワンプレーで鹿児島実は好ゲームへの布石ができた。


日大三vs鹿児島実 | 高校野球ドットコム

3試合完投勝利の吉永

 日大三は四回裏、横尾の本塁打と、8番吉永のタイムリーなどで、3点を追加する。「強打の三高」を見せつけた。 しかし、鹿児島実は五回表に1番平山大海(2年)のタイムリーで1点を返し反撃の兆しを見せる。
 一塁ベース上には走塁センス抜群の平山。その平山が2番脇園寿大(2年)の初球で仕掛けてきた。それにしっかり対応したのがキャッチャーの鈴木貴弘(2年)。平山は二塁で憤死し、反撃の芽はここで潰えた。

 日大三の吉永は結局8安打を浴びながらも、すべて散発に抑え1失点で完投。野田に投げ勝った。

「優勝を目指してきたので、できてよかったです。でも完封できなかったので失点をされないピッチャーになりたいです」

と、吉永は向上心を忘れなかった。一方、野田は

「悔しいです」

と肩を落とし来年への雪辱を誓った。

 実は、この神宮大会を臨む上で各チームは「寒い時期だから」「優勝しても自分達にとって大きなメリットがないから」「甲子園じゃないから」「色々な選手を試したいから」と考えて戦術を練るチームが多いと聞く。さらには「センバツに出る他のチームに戦い方を丸裸にされるから」と甲子園で勝つことしか考えない指導者もいるのも事実だ。

 だが、秋の日本一を決める大会に成長した神宮大会を制することができるのは全国で1チームだけ。甲子園優勝と同等の評価を与えるべきだし、選手も大きな誇りとしてほしい。
小倉監督は試合前選手に「全国で(秋季地区大会を制した)10チームしか出られない大会」と言ったそうだ。だからこそ、優勝した時、ナインは甲子園と同様にマウンドで喜びを見せた。
世代最初の優勝校としてこれからプレッシャーはあるだろうが、この優勝を誇りにして来年春に備えてほしい。

(文=松倉 雄太)
(写真=高校野球情報.com編集部)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.20

枕崎が1時間半遅れの試合でも集中力を発揮!堅守を発揮し、2年連続の8強!【24年夏・鹿児島大会】

2024.07.20

高田商、御所実、大和広陵が奈良8強入り!【2024年夏の甲子園】

2024.07.20

山形城北、羽黒、山形商、米沢中央が山形8強入り!【2024年夏の甲子園】

2024.07.20

和歌山では高野山、日高、海南がベスト16!【2024年夏の甲子園】

2024.07.20

センバツ8強・阿南光がコールド発進!春準V・池田は逆転負け【2024年夏の甲子園・徳島】

2024.07.14

甲子園通算19度出場・享栄が初戦敗退 1点差でまさかの敗戦【2024夏の甲子園】

2024.07.15

ノーシード・二松学舎大附が2戦連続で延長戦を制す【2024夏の甲子園】

2024.07.15

プロ注目153キロ右腕が3回戦で姿消す 好リリーフ見せるもあと1点及ばず【2024夏の甲子園・兵庫】

2024.07.20

枕崎が1時間半遅れの試合でも集中力を発揮!堅守を発揮し、2年連続の8強!【24年夏・鹿児島大会】

2024.07.20

高田商、御所実、大和広陵が奈良8強入り!【2024年夏の甲子園】

2024.07.08

令和の高校野球の象徴?!SJBで都立江戸川は東東京大会の上位進出を狙う

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.23

大阪桐蔭が名門・日体大に1勝1分け! スター選手たちが快投・豪快弾・猛打賞! スーパー1年生もスタメン出場 【交流試合】

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」