試合レポート

浦和学院vs横浜

2010.11.05

浦和学院vs横浜 | 高校野球ドットコム

1番ピッチャー・佐藤拓也(浦和学院)

敵将も認めたクレバーなバッテリー

 試合後のベンチ裏。敗れた横浜・渡辺元智監督は「完敗でした」と一言。

 一方、勝った浦和学院・森士監督(今大会は部長で登録)は「こんな試合ができるとは」と少し驚きを見せた。10安打で8得点、浦和学院にとっては、長年やられ続けてきた横浜に快勝した形だ。
 この日の立役者はやはり1番ピッチャーの佐藤拓也。そして女房役の林崎龍也の1年生バッテリーだった。浦和学院の小林賢剛主将(2年)はこの一戦のじゃんけんに勝ち後攻を取った。

 1回表の守り。横浜の4番樋口龍之介(1年)にタイムリー二塁打を浴びて、2点を先制されてしまった浦和学院。立ち上がりの佐藤は直球を捕えられていた。2点を追う2回裏。5番日高史也(2年)に2ランが飛び出し同点に追いついた浦和学院。さらにチャンスを繋げて、1番の佐藤が犠牲フライを放ってこの回だけで逆転することに成功。

前日のインタビューで「自分で打てればピッチングも乗ってくる」と佐藤は話している。まさにその通りの展開。

 先取点を直球を打たれる形で取られたため、2回以降捕手の林崎は勝負球にやや沈むツーシームを多投した。それが功を奏して、横浜打線は佐藤に打たされ始める。2回から4回までは無安打に抑えて、完全に立ち直りを見せた佐藤。
 4回裏、浦和学院は9番荒井大樹(2年)がスクイズを決めると、続く佐藤がセカンドを強襲するタイムリーでリードを3点に広げた。

 その直後、佐藤は5回表に併殺の間に1点を失い、2点差で前半を終える。

 グランド整備の間、横浜はいつものようにベンチ前に選手が座って、渡辺監督のミーティングを聞いていた。当然、佐藤に対する攻略についても話が出ていたであろう。


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クレバーなリードを見せた林崎(浦和学院)

 後半6回表、3番近藤健介(2年)から始まる横浜打線に対し、林崎は配球を変えてきた。立ち上がりと同じ直球主体、それにスローカーブを多く混ぜた。対応できない横浜打線は三者凡退。
この日の流れはこれで決まったといっても良い、大きなイニングだった。

 その裏、佐藤が犠牲フライを放ち1点を追加した浦和学院は、7回にも6番石橋司(1年)の三塁打と7番林崎のタイムリー。差を5点と広げて、横浜の先発・山内達也(1年)はマウンドを降りた。
渡辺監督は

浦和学院のバッテリーは、ストレートを速く見せるような配球をしてきて上手かった。うちの近藤(捕手)にもこういうリードを勉強してもらいたい」

と試合後に舌を巻いた。

 敵将が讃えたクレバーなリードを見せた林崎は、前日の準々決勝・千葉経大付戦(2010年11月4日)に続きこれが公式戦2試合目の出場。つまり県大会までは1試合も出場していない。森監督から先発出場を言われたのは関東大会が始まる1週間ほど前だという。

 「お前しかできないプレーをやってくれ」と指揮官から言葉をもらった。そのプレーを尋ねると「守備だと思います」と答えが返ってきた。8回表に走者二塁からヒットを打たれた場面で、本塁に突入しようとする走者に体を張ってブロックしている。リードだけではなく守備全体でエースを援護した1年生キャッチャー。森監督も「落ち着いていた」と評価。

 「ストレートを速く見せるのはいつも意識している」と声を揃えた1年生バッテリーが、昨秋準々決勝(2009年11月2日)で敗れた東海大相模との決勝に挑む。
 

(文・撮影=松倉 雄太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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