鎮西vs熊本商
![鎮西vs熊本商 | 高校野球ドットコム](/images/report/kumamoto/20101106002/photo01.jpg)
鎮西・濱純司
垣間見るどころか強さを感じた鎮西
秋季大会後に行われる1年生大会が、高校野球のシーズン最後の大会となる。
高校に入学し、約半年が経った1年生にとって自分たちがメインで出場する初めての大会であり、公式戦を経験するという貴重な大会でもある。
また、未完成な1年生の才能を“垣間見る(かいまみる)”ことも楽しみの一つだ。
鎮西・濱純司、熊本商・森川祐至。
互いに180センチを超える将来性豊かな本格派右腕の投げ合いでゲームは始まった。
4回、5番・山下が左中間への二塁打で出塁するとバントで送り、1死三塁。ここで7番・田川が中前適時打を放ち、鎮西が先制点を奪った。
すると透かさず江上寛恭監督は投球練習をする濱に声を掛けた。
「点が動くと(逆も)必ず動く。しっかりと締めていけ」と普段から言っていることを念押した。
そして1年生のキャプテンを務めるエース・濱は、指揮官の言葉をしっかりと噛みしめていた。次の回、そしてそれ以降もピシャリと抑え続けた。
初戦の九州学院戦、準々決勝の済々黌戦と続いて、中二日、中二日と投げてきた背番号1の濱。
本来、カーブ、スライダー、チェンジアップ、フォークと多彩な変化球を投げるが、この日は封印。
威力あるストレートを中心に変化球はカーブ、スライダーのみで勝負し、熊本商打線を5安打で完封した。
「高校入学してから体力がついたので疲れはありません。明日の決勝も、完封で優勝したい」と力を込めた。
![鎮西vs熊本商 | 高校野球ドットコム](/images/report/kumamoto/20101106002/photo02.jpg)
熊本商・森川祐至
守りでは7回表、一塁手の山下がカメラマン席に飛び込む気迫のキャッチをすると、続けとばかりに左翼手の井手が、左打者特有のレフト線へ切れていく打球を見事なランニングキャッチで好捕。立て続けにファインプレーが出るなどバックが無失策でエースを盛り立てた。
さらに鎮西は“足技”でも魅せた。
7回裏、1死一、二塁の場面で諸永と坂田(一)が相手の隙を突くダブルスチール。
「この学年は足もあるので、狙っていました(江上監督)」
そして4番・坂田(裕)の中犠飛で諸永が3点目のホームを踏み、試合を決定づけた。
この試合、鎮西が記録した盗塁は5。エンドランのサインで結果的に盗塁死となった井手以外、すべて盗塁を成功させていることになる。
試合前、江上監督は「まだまだ1年生ですからね」と謙遜していたが、その言葉の裏を返せば、手応えを感じていたのかも知れない。
走攻守バランスが取れ、勝負強さも兼ね備える鎮西。
“垣間見る”どころか1年生としては高い完成度を誇る鎮西の“強さ”を筆者は目の当たりにした。
立岡宗一郎、猪本健太郎(ともに現・ソフトバンク)らタレント軍団といわれた’06年以来の1年生大会優勝へ向け、あと一つだ。
(文=PN アストロ)