九州国際大付vs波佐見
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4番に抜擢された小野丈一郎(波佐見)
攻める波佐見
準々決勝で龍谷との強打対決をモノにし、甲子園出場をほぼ手中にした波佐見が、準決勝でさらに攻めてきた。
波佐見が長崎を制した攻撃的オーダーとは田中佑弥、柴山純平、松田遼馬というチームのキーマンをそれぞれ1、3、4番に置いたものだった。
ところが、得永健監督は龍谷戦までのオーダーに大きく手を加え、柴山を5番に、松田を6番に、切り込み隊長の田中に至っては9番に置くという大胆な配置転換を施してきた。
1番にはそれまで6番を打っていた山口優大を起用し、3番には龍谷戦で6番で4打数4安打だった小峰史也を、4番には同じく4打数3安打の8番・小野丈一郎を抜
擢している。
言うまでもなく、春の甲子園とは「選抜大会」である。得永監督もやはり「準々決勝以上に攻めた結果のオーダー変更」と認めているが、ベスト4に入ったとはいっても試合の内容次第では甲子園に選抜されない危険性もあるのだ。たしかにこれほどアグレッシブな“采配”はないかもしれない。
それも無理からぬ事情がある。
1986年の秋季大会だ。1番打者の主将として活躍していた波佐見の得永監督は、ノーマークに近い状態からあれよあれよと勝ち進み、九州大会の準々決勝で亀山努(後に阪神)、忍というスター選手を擁する鹿屋中央に延長13回で逆転サヨナラで勝利している。
これで選抜選考の基準をクリアした波佐見だったが、地元対決となった準決勝の長崎海星戦で1-8のコールド負けを喫してしまい、握り締めていたはずの甲子園切符をスルリと手放してしまうという失敗体験をしている。
「当時、選考基準も何も知らなかった我々は、あまりにも大騒ぎする周囲を眺めて『なんだ。これでもう負けてもいいのか』と、緊張を緩めてしまったんです」
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先制適時打を放った山口(波佐見)
その話は、当確ランプが灯った準々決勝の後に選手たちにも伝えた。
「龍谷との試合に勝った後、選手たちは泣きじゃくっていました。こういう心理状態が凄く怖かった。だからこそ、あえてビリビリした雰囲気を強化して、選手たちの心を締めなおしたんです」
主将の山口がいう。
「監督さんが『ベスト4に入るためにここに来たわけじゃない。優勝を目指してきているんだ。絶対に獲りにいくぞ!』と気合を注入してくれました。また、監督さんの体験談を聞いて、ここで負けるわけにはいかないと思いました。自分からも他の選手に『絶対に勝つんだ』という話をしました」
ここで隙を見せてしまえば、甲子園どころではない。
しかも、彼らの下には準々決勝で敗退した興南が大きく口を開けて待っているのだ。
「選手たちを奮い立たすいみでも手段として『興南』というフレーズをミーティングで使いました」と得永監督。
「ベスト4チームになにかあれば、いつでも準備しているよ」とは言わないだろうが、春夏王者のプレッシャーは準決勝を戦う各チームにこれほどまでの脅威を与えていたのである。
すでに敗れているにもかかわらず、だ。
かくして、果敢なオーダー変更に踏み切った波佐見。
2回には1番に入った山口に先制適時打が飛び出すなど、序盤は得永監督の仕掛けが見事に的中したといえる。
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エース・松田(波佐見)
一方、波佐見先発のエース・松田は4回までに4つの空振り三振を奪うなど上々の立ち上がりを見せるも、二巡目に捕まってしまう。
九州国際大付、3回の攻撃だ。得永監督もポイントに挙げた一死一塁、1番・平原優太の場面だ。
平原は松田の得意とする直球、チェンジアップをことごとくファウルでカットし、この打席だけで11球も粘った。これをきっかけに九州国際大付打線が繋がり、3番・三好匠の強烈な中越え打(記録は中堅手の失策)などで3得点。試合は一気にひっくり返ってしまった。
松田は8回にも三好に左前適時打を浴び4失点。これで勝負は決する。
波佐見2-4九州国際大付。
松田が与えた9四死球のうち、5つが死球である。
ただ、九州国際大付打線を抑えるには内角攻めは欠かせない。
波佐見バッテリーが果敢に攻めた結果の数字といえるだろう。
むしろ、9回で164球を投げ被安打9、9四死球と苦しみながらも4失点に抑える松田は、さすがに北部九州屈指であると評価して良いのではないかと思う。
さあ、朗報を前に波佐見にも冬がやって来る。
ガンガンに振る。ビッシビシ投げる。パワープレーに徹し土壇場での“怖さ”を克服した波佐見野球が、春にどのようなパフォーマンスを発揮してくれるというのか。
早くも半年後の解禁が待ち遠しくなってきた。