香川西vs徳島城南
![香川西vs徳島城南 | 高校野球ドットコム](/images/report/zenkoku/20101024009/photo01.jpg)
エースの宇都宮健太
「怒りの獣神」に応えた香川西、徳島城南との消耗戦を制す!
過去のレポートにもあるように、これまで選手たちが垣間見せる心の緩みに決して迎合せず、怒りの采配を何度となく振るってきた香川西・岩上昌由監督。
その姿勢は創部112年目にしてはじめて秋の徳島県大会を制した徳島城南との四国大会準々決勝でも全く揺らぐことはなかった。
「来週の準決勝からは別の大会。今日を新チームの集大成にしよう」と選手たちと確認しあって臨んだこのゲーム。
4回表までは相手先発・竹内勇太(2年)に対し、順調に得点を重ねて4対1とリードした香川西だったが、4回裏になると3回まで8奪三振と快調そのものだったエースの宇都宮健太(2年)が突然、リズムを乱してしまう。
先頭打者の8番・柳川慶太(2年)にヒットを許し、送りバントでランナーを進められると、1番・多田康貴(2年)からの4連打で4失点。逆転されたという明確な数字以上に、「連打がない打線だが、あそこでやれるという感じになった」(森恭仁監督)徳島城南に自信を与えたこのビッグイニングの供給は、残りのイニングを戦う上でも計り知れない悪影響を与えるものとなった。
もちろん、岩上監督がこの事態を黙って見逃すわけはない。
5回のグラウンド整備中には選手たちに「どう考えても負けるゲーム。今までこういう野球をやってきたのか?もう好きにせい!」と敢えてネガティブ要素を並び立て、宇都宮には「10点取られても、20点取られても今日は絶対に代えない」と完投指令。
試合中のベンチではホーム寄り一番前での仁王立ちが常である34歳の青年監督は、正にアニメやプロレスの世界でいうところの「怒りの獣神」と化したのであった。
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4回の集中打に盛り上がる徳島城南ベンチ
ただしその一方で、「でも、ここからゲームを取れたらお前らの財産になる」と選手たちに道筋を指し示すことも忘れなかった指揮官の檄に、選手たちは再び奮い立つ。
香川西は7回表に4番・小林正和(2年)の2点タイムリー3塁打で再び勝ち越すと、続く8回にも1番・太田洋都(1年)のタイムリー2塁打で追加点。
宇都宮も最終回に1失点し、最後は2死満塁と一打逆転サヨナラ負けの状況まで追い込まれるも、気迫で最後の打者をショートゴロに打ち取り199球完投勝利。
2時間47分に及んだ徳島城南との消耗戦を制した彼らは高知が待つ準決勝へと駒を進めたのである。
試合後には「高知との力の差は3対7くらい歴然とした差があるが、3であっても全力を出してゲームを作りたい」と、初のセンバツ出場への入り口に立つ秋季四国大会初のベスト4進出にも殊勝な言葉を忘れなかった岩上監督だが、飴と鞭とを巧みに使い分けて選手たちの力を引き出すその手腕は特筆に価するもの。
全く正反対のアプローチでチーム力を上昇させている高知・島田達二監督との「監督対決」は、グラウンド内の攻防以上に、実に興味深いものとなりそうだ。
(文・撮影=寺下 友徳)