大阪桐蔭vs履正社
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サヨナラ本塁打を放った西田直斗(大阪桐蔭)
大阪桐蔭、秋連覇は劇的に!
高々と上がった打者の右手拳。その場に跪いてしまった投手。大阪1位校を決める決勝戦は、大阪桐蔭の1番・西田直斗(2年)が放った打球で、最後の最後に勝者と敗者が入れ替わった。
履正社・飯塚孝史(2年)、大阪桐蔭・藤浪晋太郎(1年)と連投の両投手がマウンドに上がった一戦。常に試合を先行したのは履正社だった。
2回表、8番野村惇(2年)のタイムリーで履正社がまず先制点を奪う。飯塚はコントロールに苦しんだ前日の準決勝(上宮太子戦 2010年10月16日)と違い、この日は持ち味のテンポの良さが戻っていた。
ただ、簡単に打ち取らせてとくれないのが大阪桐蔭の打線。3回裏、1番西田のタイムリー二塁打で大阪桐蔭が同点に追いつく。直後の4回表にもう一度、1点を勝ち越した履正社。
5回表、履正社がまたも突き放す。1番海部大斗(2年)が三塁打で出ると、2番正木健太郎(2年)が二塁打、1死後、4番石井元(2年)がタイムリーと、今度は2点をリードして藤浪をノックアウト。大阪桐蔭の西谷浩一監督はエースナンバーの中野悠佑(2年)をマウンドに送った。
その中野は藤浪が残したピンチを何とか切り抜ける。その裏、食い下がる大阪桐蔭は、河原の内野安打で1点を返し4対3。ただこの回はこの1点のみで、点を取っては追いつかれの流れがここで止まった。
6回以降、立ち直ったのは飯塚。6、7、8回と大阪桐蔭打線を三者凡退に切って取る。飯塚の球を受ける坂本誠志郎主将(2年)は「球に勢いが戻ってきた」と感じていた。
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飯塚孝史(履正社)
一方の中野は、履正社打線に捕えられ、7回、8回と走者を三塁まで進められる。しかしここから得点を許さなかったのが2年生エース。先発の1年生右腕がノビノビと投げられるのは、旧チームから経験豊富な中野の存在が大きい。履正社サイドには、追加点のチャンスで取りきれないもどかしさが残った。9回表、中野は初めて三者凡退に切って取った。
そしてドラマが起こった9回裏を迎える。大阪桐蔭は代打の上出晃大(2年)がショートゴロ、7番川端晃希(2年)が空振り三振に倒れてあっさりと2アウト。マウンドの飯塚にとってはまさにあとアウト1つまでこぎつけた。
打席には8番山足達也(2年)。こちらも中野同様、旧チームからレギュラーを張るが、この秋は西谷監督が何度も喝をいれるほどの不調で打順を落としていた。
この山足が飯塚に2球目を捕える。打球はレフトを守る大西晃平(2年)の遥か頭上へ。あわや本塁打というフェンス直撃のあたりで、山足は二塁まで進んだ。
打席にはリリーフの中野。中野は飯塚の4球目に手を出すと、打球は三遊間奥深くへ。ショートの石井はこれをうまく処理するが、間に合いそうにない一塁へ投げてしまった。中野は懸命に走って一塁はセーフ。その瞬間、一目散に本塁を目指した山足が見事に陥れた。
「偽投で三塁に投げられたらアウトになる。(山足は)走る場面ではなかった」と苦笑いしたのは大阪桐蔭の有友茂史部長。履正社・岡田監督は「一塁は絶対にセーフになる打球。投げるべきではなかった」と厳しい表情。坂本は「まだアウトにできるかもと思った石井は責められない」と庇った。三者三様の難しい場面。
高校野球でこの場面の答えを見つけ出すのは難しい。ただそこに、9回2死から同点になったという事実は残った。
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優勝旗授与 大阪桐蔭・廣畑実主将
そして打席に西田。
西谷監督が「西田まで回れば」と願っていた形になった。3球目、直球はやや浮き気味に中に入った。マスクを被る坂本が「彼の一番得意なコース」と悔やむ失投を西田は見逃さなかった。振り切った打球と手応えに西田は「完璧だった」とすぐに右手拳を突き上げた。
「ホームランは出来すぎですが、2アウトからよく粘れた。痺れた試合でした」と西谷監督。さらにエース中野の粘投を讃えた。
履正社・飯塚と坂本のバッテリーにとっては痛恨の一発。跪いて項垂れる飯塚の表情が勝てる試合を落としたショックを物語っていた。
「9回2アウトからのちょっとした油断が出てしまった」と振り返る坂本。前日に履正社らしい試合ができていないと話していた岡田監督は「今日負けて、このままではダメだとわかったんじゃないですか」とあえて選手を突き離した。
多くの高校野球ファンや関係者が大会前からそう見ていた中で、秋の決勝で戦った両校。それぞれ課題も多く出たが、秋の段階とは思えない高いパフォーマンスも見ることができた。
この後近畿大会もあるが、来年夏へ向けて今回の対戦がどのような化学反応を起こすか楽しみだ。
(文=松倉 雄太)