天理vs登美ヶ丘
2010年10月11日 佐藤薬品スタジアム
天理vs登美ヶ丘
2010年秋の大会 奈良県秋季大会 準々決勝
天理・西浦は2安打2得点
新生・天理 登美ヶ丘を圧倒し準決勝進出
打球が抜けない――。
試合開始早々から、とらえたはずの打球が天理の守備網にかかる。
普通なら、抜けていると思われた打球を、苦もなくさばいていく。
1回表、登美ヶ丘が、天理の先発・井上を捉えた。先頭の森本が右翼線への痛烈な当たり、2番山中も、左中間へ快心のあたりを放った。
しかし、森本の打球は天理の右翼手東田のもとへ、山中の打球は左翼手・森口のもとへすっぽりとおさまった。
天理守備陣の、守備範囲の広さかと思ったが、よくよく見ていると、守備陣形にあった。
「今日は選手に任せてある。自分らで考えて、あの守備陣形を取っていた」
試合後の、天理森川監督である。
左翼手・森口は大幅にセンター寄りにポジションを取り、全体的に深めで右寄りの守備陣形を取っていたのである。
「うちの投手陣なら、そんなに引っ張られることもないと思ったというのもありますし、練習試合の時から、森川先生に、思い切ったことをやれっていわれてきたので、その通りにやった結果です」
扇の要を務める捕手・吉田がそう話してくれた。
こうしたコメントからしても、旧チームとはまるで違ったスタイルで戦うのが、今年の天理だ。
天理・中谷は好投
試合は、初回に2番・西浦の二塁打で好機をつかむと、5番・森口が左翼前適時打を放ち1点を先制。しかし、3回表に同点に追い付かれると、先発・井上をあっさり諦め、中谷にスイッチ。旧チームほどの攻撃力がないと踏んだ、僅少差狙いを選んだ采配である。
これが見事に当たる。
2番手の中谷は、ストレートを主体に内外に投げ分ける。そう速いわけでないのだが、テークバックの時に左手が隠れる投球フォームは、登美ヶ丘打線を惑わせた。消えたと思った左手が突然出てきて、インコースのひざ元を突く。
中谷は6回2/3を3安打8奪三振無失点に抑えた。
打線は3回裏に、相手投手に乱れに付け込み1点を勝ち越すと、6回裏には西浦が中前安打で出塁、二頭を決めた後、3番・吉田が左翼前安打で続くと、4番・長谷川の内野安打、森口の適時打で追加点を奪った。8回には中谷が出塁して作った好機で、長谷川が2点適時打。
大きな打球を打つ打者はいないが、しっかりつないで足をからませる、そつのない攻撃だった。
絶妙なポジショニングといい、無駄のない攻撃といい、2011年の天理は別なるスタイルで頂点を目指している。伊達は言う。
「今年のチームとも、去年のチームとは、違うということを切り替えて出来ています。今年は、しっかり守って機動力のチーム。先輩らと比較されるのはプレッシャーではありますが、それにしっかり勝って戦っていきたい」
（文＝氏原 英明）
