試合レポート

北海vs札幌第一

2010.10.12

2010年10月11日 札幌円山球場

北海vs札幌第一

2010年秋の大会 第63回秋季北海道大会  準決勝

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工藤洸投手(北海)

1年生に頼るな!

 スタメン発表を聞いて『?』と感じたファンも多いのではないだろうか。北海の先発がエース玉熊将一(1年)ではなく、背番号『12』の工藤洸(2年)だったからだ。休養日と雨天順延で中2日空いている。常識的にも、チーム打率5割6分8厘の相手(札幌一)を考えてもエース先発が妥当な所だ。

そんな中で先発に工藤を立てたのには訳があった。玉熊がケガをしていたからである。3日前の北海道栄戦、玉熊は打席でバントを試みた際、右人差し指を痛めた。大きなケガではなかったそうだが、この日の登板は厳しいと平川敦監督は見ていた。

北海のチーム構成に1年生は2人。玉熊と背番号『15』の松本桃太郎だけである。2年生がほとんどの中に1年生エース。当然2年生投手の力はエースに劣るというのが大半の見方だ。そのエースが投げられる状況にない。
主将の西尾匡人(2年)によればこの日、平川監督から「1年生に頼るな」という言葉があったという。

1回表、マウンドに立った工藤は、いきなり札幌一・1番の三浦拓馬(2年)ストレートの四球を与えてします。続く2番加勢一心(1年)への1球目はボール。ストライクが入らない・・・

明らかに焦る工藤に対し、札幌一は上策である送りバントを2球目に仕掛けた。結果は成功。しかし1つのアウトが工藤に落ち着きを取り戻させた。後続を打ち取り、立ち上がりを無失点で切り抜ける。

その裏、北海はコントロールに苦しむ札幌一の左腕・西島隆成(2年)を攻め立てた。1死1塁からエンドランを成功させて1、3塁。ここで4番川越誠司(2年)はスクイズを敢行。三塁走者の川崎和哉(2年)はタッチを掻い潜って1点をもぎ取った。

〝初回で4番にスクイズ〝

春夏合わせて45回の甲子園出場を誇る伝統校らしい強かさ。


西尾匡人主将(伝令に走る)(北海)

さらに満塁とチャンスを広げると6番玉木昂大もスクイズ。これが相手のミスを誘って走者が全員生還。初先発の工藤にとって、大きな大きな4点が1回に入った。

2回以降、完全に乗った工藤は4回まで札幌一打線を2安打に抑える。しかし5回、連続四球に続き二塁打を浴びて2点を失った。

それでも5回裏に突き放す北海。ところが・・・

この5回裏の攻撃で北海サイドは先発の工藤の打順で代打を送っていた。これが札幌一打線に息吹をもたらしたのか、6回表に猛攻を起こす。

北海の2番手笠松一真(2年)、3番手太田裕也(2年)が打線の餌食となって一挙6点。試合はひっくりかえった。継投に失敗した平川監督は、サードを守っていた多間泰介(2年)を4番手としてマウンドに送る。

この場面でもブルペンで準備していた1年生エースを使わない。指揮官の意図を感じた多間は何とかそれ以上の失点を食いとめた。

「(不安な投手で)取られたら、その分取り返す」。西尾主将が試合後に話したチームの決意はビハインドでも揺るがない。

7回に9番磯田功洋の2点タイムリー二塁打で同点。8回表に本塁打で勝ち越されるが、その裏にまたも追いついた。

最後は9回裏、エースのいないマウンドを守った多間自身のサヨナラ打で2時間44分の壮絶な試合に決着はついた。

試合後のロッカールーム。「気持ちの強さを見せられた」と話した主将。誇らしげな顔で先輩を見つめる1年生エースの姿もあった。

(文・撮影=松倉雄太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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