奈良大付vs橿原学院
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奈良大付・湟打
土壇場の逆転劇 奈良大付、橿原学院に7-6で競り勝つ
これが積み重ねというものか。
得点の奪い合いとなった私学同士の対決。終盤に追いつき、延長に勝ち越した橿原学院がそのまま制すかと思われたが、奈良大付がひっくり返して、サヨナラで勝利をもぎ取った。
今大会の組み合わせが決まった時、奈良大付にとっては厳しい戦いになるなと思ったものだ。というのも、初戦となった2回戦は関西中央、今日の3回戦が橿原学院を勝ち抜かねばならなかったからだ。
関西中央も、橿原学院も、今や野球に力を入れる私立校。
大がかりな勧誘とまでは行かないが、それなりに選手を集めることができる。一方で、奈良大付・田中監督は勧誘をあまりしない。
しかも、今年の奈良大付は旧チームの松田のような大黒柱もいなければ、それほど、粒がそろっていたわけではない。
その中で、旧チームから投手陣が残っている関西中央や橿原学院と対戦しなければならないとは、正直、厳しいなと思ったほどだ。
ややもすると、天理・智辯学園を除いたこの私学勢の勢力図が変わるかもしれない。そんなことを思ったほどである。
ところが、2回戦の関西中央には競り勝ち、この日も、橿原学院に土壇場で打ち破った。
試合後、「たまたまですよ」を繰り返す奈良大付・田中監督に、その要員は何かと探ってみた。
「弱いチームやから必死のパッチ」という田中監督が、執拗な筆者の質問に、応えを絞り出してくれた。
「自分たちの野球を作ろうとやっていますんで。できる・できないは、勇気があるかないかで変わってきますけど、先輩らがやってきた野球をやろうというのは、あるかもしれません。得点を奪うのはダイヤモンドを回すということですから、送りバントだったり、盗塁だったり、エンドランを決めることで回すことになる。守備についても、きっちりひとつひとつ守る」
もちろん、試合の中ではミスも起きるが、受け継がれてきた伝統とういうのか、勝ち方を知っているというのか、彼らは、「らしくない」試合運びをしないのだ。
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仲本(橿原学院)
田中監督は続けて言う。
「監督の指示を待っていないとできないと駄目ですよね。勝手にできるくらいでないと」
延長10回裏はまさにそんな展開だった。
1死1、2塁と攻めていた奈良大付は、二走・上治が単独スチールを仕掛けて成功させさせたのだ。
一走も二塁を陥れ、二、三塁と好機を広げた。そして、、3番・湟打の適時打で試合をひっくり返したのだ。
奈良県は私学2強の天理・智辯学園が、依然、先頭を走っている。
奈良大付は数年来、その後を追う存在だったが、ここ数年で力を入れる関西中央や橿原学院の私学勢などが、ヒタヒタと後を追っかけていたのだ。
だが、そういう流れになっても、奈良大付は、関西中央や橿原学院にはやられないのだ。
追随を許さず、位置関係を代えない。
これは、もはや、積み上げたことの違いと言っていいだろう。
「そうはいっても、智辯学園・天理に勝って、甲子園に行かないかといかんのですけどね」
そういって苦笑いを見せた田中監督。
準々決勝の相手は智辯学園。いつも以上に力の差はあるのは確か。
厳しい戦いになるだろうが、関西中央、橿原学院を破って智辯学園との挑戦権を得たことに、非常に意味のあることだ。
(文=氏原 英明)