愛工大名電vs愛知
![](/images/report/aichi/20100926001/photo01.jpg)
浜田達郎(愛工大名電)
大型選手揃いの愛工大名電。村山、浜田ら注目選手が目白押し
米大リーグ・マリナーズのイチローや、中日ドラゴンズの堂上兄弟(剛裕・直倫)は、愛工大名電の出身だ。イチローはこのほど10年連続200安打の偉業を達成し、堂上兄弟も今年ブレイクした。
囲み取材でその話題を振られると、倉野光生監督は「(愛工大名電に)風が吹いてきたかな?という気はしますね」と、多少のリップサービスはあるにせよ、OBの活躍と新チームの好成績を重ねて、良い流れを感じている様子だ。
昨秋は県大会で初戦敗退を喫したが、今秋は東邦などライバル校を撃破。この試合もつけ入る隙を与えない試合運びで大勝し、東海大会の出場権を手に入れた。
投打の軸が活躍した。投げては、1年生左腕の浜田達郎が7回を無失点に抑えた。
「この大会で成長している。何が良いのか分からないけど、夢中で投げているのがいいのかもね」と倉野監督は話すが、浜田の素質の高さは注目に値する。
ストレートの最速は137キロ。変化球も多彩で、最大の武器はパームというからおもしろい。182センチ、87キロの体格通り既に貫禄十分で、1年生とは思えないマウンドさばき・落ち着き。コントロールに気をつけながら、いい意味で淡々と放れるのだ。
![](/images/report/aichi/20100926001/photo02.jpg)
村山賢輔(愛工大名電)
「最初(1回表)のサードの打球を見ても分かるように、かなりのパンチ力がありますよ」と倉野監督が期待する1番打者の村山賢輔は、4回表に高校通算26弾目を左翼席へ運んだ。
低目の球に足で粘って、柔軟かつ豪快なスイングから放たれた素晴らしいホームランだったが、それ以上に1回表に放った「最初のサードの打球」が衝撃的だった。痛烈なサードへのゴロで、三塁手が弾いてしまったのだが(強襲ヒット)、弾かれた打球は勢いを失うことなく、中堅手の前まで転がっていったのだ。普通、三塁手が弾いた打球は遊撃手の周辺に転がるものだが、打球の勢いそのままにセンターまで届くというのは、いかに打球が猛烈だったかを物語っている。
さて、村山に大きな注目が集まるが、3番を打つ田中彪(ひょう)も見逃してはいけないので、ここで是非紹介しておきたい。この日はセンターからライト方向へしっかり叩きつけるバッティングで3安打2打点。
重厚な打球音からも強打者ぶりが分かり、高校通算ホームランは21本を数える。「村山とは、チーム内で競い合う間柄です」とは本人談。183センチの大型で一塁を守るが、決して動けないわけではなく、50m走で6秒を切る俊足、遠投100mを超える強肩を持ち合わせる。中学時代はボーイズリーグの強豪・四日市トップエースに所属し、同ボーイズの先輩・谷口雄也(前チームの主将)に憧れて愛工大名電に進んだそうだ。
他にも愛工大名電には、バットコントロールがいい5番打者の幸村一輝(身長181センチ)、軽快な守備が光る遊撃手の冨沢一晃(同178センチ)など、上背がありセンスもスピードも光る選手が揃う。また、1年生ながら二塁手でレギュラーの佐藤大将(だいすけ)は、守備が特筆モノで、センターに抜けるかという打球にことごとく追いついていた。際どい打球にも足で追いつけるから、その後の送球にもブレがない。センター方向へ弾き返す巧みな打撃に、走塁もスピーディー。これらの選手も、またあらためて詳しく紹介できればと思う。
次の土曜日に県大会決勝、1ヶ月後には東海大会が控える。「翌春のセンバツ甲子園を見ちゃった(=意識してしまった)チームは負けるんだよね。目の前の一試合一試合をしっかり戦っていくだけです」と、倉野監督は最後に気を引き締めた。
(文=尾関 雄一朗)