今治西vs東温
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シートノック前・気合の内野ノックを行う今治西
勝敗を分けた「試合前」
まだスタンドには人影もまばらな試合開始40分前の[stadium]西条市ひうち球場[/stadium]。シートノックまでまだ間があることから、今治西はいつも通り外野芝生部分で外野ノック、続いて三塁側ファウルグラウンド部分で内野ノックを行った。
そしてこれも普段、学校内グラウンドでよく見られる光景ではあるが、大野康哉監督は選手たちの捕球にわずかでも緩みが見られると、速射砲のように叱咤激励の言葉を飛ばし、選手たちも「はい!」の叫びでこれに呼応する。その一方で素振りの手を休め、その様子を眺める一塁側東温ベンチ。選手たちの表情には感嘆というより明らかな怯えの表情が見て取れた。
2005年(平成17年)春には西条監督としてセンバツ出場経験を持つ八木俊博監督も「まだまだ」と指摘する敵の気合に対するはね返りのなさ。かくして東温ナインの「怯え」は初回から、守備の破綻となって現れた。
初回は先頭打者の死球から4番・合田亮弥(2年)の犠牲フライで先制点を与えた後、ライン際のフライをレフトが落球して2失点。2回も2四球が絡んでの2失点。
強豪相手の自滅に近い形での大量失点は、新人戦が公式戦初登板と経験値の低い相手先発・矢野敦士(2年)を調子の波に乗せてしまう要因をも作ってしまった。
ただし3回以降は、「2回までに取られてズルズル行かなかったことはよかった」八木監督も褒めたように、1年生左腕・加藤省吾の好投し、最終回には3点をあげ2点差にまで迫るなど終始相手の気合に押されて5回コールド負けを喫した今夏3回戦・済美戦からチームが確実に成長していることを示した東温。それだけに序盤の無駄な失点は本当に悔やまれるものであった。
そんな東温に対し、「(右ほほ骨骨折明けの)エース林正也が十分でないことから、継投でいくしかないので、序盤の得点は楽になました」と試合後、大野監督がホッとした表情で振り返ったように、最後は薄氷の勝利で5年連続センバツ出場への最低ノルマであった県ベスト4進出を決めた今治西。しかしながら試合前に敵を圧倒した彼らの臨戦態勢を見れば、この日における勝利はむしろ試合前から約束されたものであったとも言えよう。
(文=寺下 友徳)