神港学園vs飾磨
![](/images/report/hyogo/20100926002/photo01.jpg)
河野太郎(神港学園)
意地
神港学園の先発・河野(かわの)太郎(2年)が9回2死まで投げて1失点と見事なピッチングで準々決勝進出を決めた。
河野は前日の明石商業戦で6回コールドながらも完投し、連投でのマウンド。北原光広監督は「調子が良いのと、変化球でストライクが取れるから」と前日の試合後、すぐに先発を本人に告げていた。
しかしこの日は直球が走らず、序盤はピンチの連続。スライダー中心に切り替え、バックの好守にも助けられて何とか切り抜けた。
その間、味方は着実に得点を重ねる。回を追うごとに制球も安定しだした河野。8回、無死満塁のピンチも1点で凌いだ。
「良く投げてくれた」と北原監督は2年生右腕を讃えた。
実はこの河野が背負う番号は『10』。エースナンバーはこの日最後にマウンドに立った1年生左腕の藍畑秀孝がつけている。
1年生だった昨秋はわずかだが登板経験がある河野は今春の選抜でもベンチに入った。当時下級生でベンチに入っていた投手は河野だけで、本人も「新チームではエースナンバーは僕がつける」と思っていたそうだ。ところが選抜の後の県大会から河野はベンチを外れることになる。
原因は極度の不調。
代わりに夏もベンチに入ったのが期待の1年生左腕・藍畑だった。調子を落とした2年生に対し、順調に実績を積み上げる1年生左腕。北原監督はかなり早い段階で河野に夏のベンチ入りはないと告げたという。
![](/images/report/hyogo/20100926002/photo02.jpg)
河野太郎(神港学園)
そんな河野だが、大きな転機となったのが夏の大会前。伊藤諒介(3年)などを擁した強力打線の旧チームを相手にシート打撃で登板。練習ながら当然、真剣勝負の舞台で「甘い球は簡単に打たれる」という感覚を掴んだ。
決してスピード型の投手ではない河野はここで制球力を磨けていたのかも知れない。
この日、三振は10個奪ったが、球数は111と少なく、与えた四球はわずかに2だった。ピンチの時にこそ打たせて取るピッチングが出来ていた。
「1年生の藍畑も決して調子が悪いわけではない」と強調する北原監督。それでもやはり2年生右腕の上級生としての意地を信じているからこその連投だった。
次の相手は強豪・東洋大姫路。近畿大会へ出場するためには大一番となるが、この連投をきっかけに背番号『10』の右腕がエースと呼べる存在に生まれ変われれば頼もしい。
(文=松倉 雄太)