三豊工vs津田
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岩原史弥投手(三豊工2年)
試合を決めた「ガッツボーズ」
「あの『ガッツポーズ』がなけりゃあねえ・・・」
この試合を終えた後、アークバリアベースボールパーク志度ネット裏本部席に陣取った先生方や、引き上げてきた審判団が振り返った勝敗を分けたポイントは例外なくこれであった。
2対5と3点のビハインドを追う8回表・津田の攻撃でその「ガッツポーズ」は起った。2四死球を選んでここまで4安打に封じられていた三豊工先発・岩原史弥(2年)を降ろした1死1・2塁。主将・捕手とチームの要である5番・大杉龍之介(2年)が、宝田達也(2年)の直球に詰まらされながらもパワーでレフトの上を超えた一打は2者を迎え入れる追撃のタイムリー2塁打に。
もちろんここまでは言うことなしだ。
しかしながら大杉は2塁ベース上に到達するや、なおも相手がホームへの中継をもたついているにもかかわらずベンチに向かって大きくガッツポーズ。
3塁への進塁機をみすみす逃した彼のボーンヘッドは、結果的に続く鏡原裕平(2年)のライトファールフライを同点犠牲フライにできなかったどころか、12安打を浴びながらも粘り強く完投した鏡原の投球をフイにし、三豊工に2006年夏以来となる公式戦白星を献上することになってしまったのである。
誤解のないように触れておくが、筆者はガッツポーズ自体を否定しているわけではない。高校生であれば自分の喜びをなんらかの形で表現したいのは当然のこと。むしろガッツポーズはチームのムードを一層上げる戦術的効果もあると思っているくらいである。
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鏡原裕平投手(津田2年)
ただしそのガッツポーズには当然「判断」が伴うべきだ。「勝負に対する甘さが出た。あれが今のチームにおける象徴です」と津田・福井博三監督はため息交じりに当該シーンを振り返ったが、「プレーは動いている」(福井監督)以上、ガッツポーズは一旦プレーが止まってからなされるべき。
津田も6回表「2・3塁の場面では常に頭に入れるように言ってある」2ランスクイズを打者・大杉、2塁走者・棚田雄祐(1年)の連携で見事に決めているだけに、一層勝負所でのミスが悔やまれるのだ。
せっかくいいプレーをしたのに、のべつまくなしのガッツポーズ1つで自分やチームの評価を下げてしまうのは何とももったいない話。津田の選手たちにはこの冬、おおらかさは失わないまま判断力を磨いてほしいと切に願うと同時に、現在全国津々浦々でセンバツを目指している高校球児の皆さんも、その手を高々と上げる前にぜひもう一度、現在の状況を自らしっかり判断してほしいと思う。
(文=寺下 友徳)