尽誠学園vs志度
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高畑祐人遊撃手(尽誠学園1年)
尽誠学園の個性派1年生、「競争意識」に火を付ける!
伊良部秀樹(元ニューヨーク・ヤンキース)、谷佳知(巨人)、大沼幸二(埼玉西武)など、古くから個性派の選手たちを生み出すことで定評がある尽誠学園。
今夏は全国レベルの卓越した打撃技術を持つ平井孝治投手を大黒柱に有しながら高松一の前にまさかの初戦敗退に終わったが、平井の他にも185センチ・95キロの巨漢から繰り出す豪快な長打が魅力であった小林竜太朗三塁手など伝統の「個性派集団」はそれでも健在であった。
そして「去年より力がないので、どんな相手でもトントンで勝負しないといけない」(下山優監督)中で再出発となった新チーム。軟投派の顔を持ちながら時に鋭いフォークを投げ込む多田南斗(1年)がマウンドに立つ志度が対戦相手となったこの試合では、特に個性派1年たちの台頭が目を引いた。
その筆頭格はチームの芯を通す二遊間を守る2人であった。
2番を打つ迫川勝也(大阪・オール住吉ボーイズ出身)は、4安打を放ったシェアなバッティングもさることながら、球際の強さとリードを大きく取る走塁意識の高さはこの時点で四国ではトップクラス。3番を打つ高畑祐人遊撃手(香川・善通寺西中出身)も、最終回に1失策はしたものの足さばきのよさに立脚した守備範囲の広さと周囲に声をかけるリーダーシップは、大器の予感を漂わせる。
その他にも5番を打ち、2番手としてマウンドに立った香川知正も田中将大(東北楽天)を輩出した兵庫・宝塚ボーイズ出身者らしい体幹のしっかりした投打と、5回にはスクイズも難なく決める技術の高さを披露し、100mリレーで全国中学校体育大会出場経験を持つ多田羅裕斗左翼手(香川・高松ドラゴンズボーイズ出身)も、豪快なスイングで攻撃型リードオフマンの片鱗を見せるなど、それぞれが自らの持ち味を出し切ろうとしていた。
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2回表先制2ランの安岡宏太三塁手(尽誠学園2年)
となれば旧チームでは平井、小林といった上級生に頼りがちだった2年生も発奮しないわけがない。
指揮官いわく「本来は中軸も打てる力がある」8番・小椋将裕三塁手がレフトポール直撃の先制2ランを含む2安打3打点でチームを波に乗せれば、捕手から右翼手へのコンバートと同時に新チームの主将にも指名された高田京も2打数2安打2打点。
さらに右腕・西中孝史が8月末に負ったけがで出遅れたこともあって、晴れて今大会のエースナンバーを与えられた左腕・日下部安彦も先発で7回、3番手で3分の2回を投げて2失点と勝利に貢献するなど、中盤以降に失点を重ねた反省材料を除けば概して良好な内容で彼らは3回戦に駒を進めることになった。
ちなみにベンチには昨年台湾で開催されたIBAF・第14回AA(U-16)世界大会代表の下平恭大(東京・八王子ボーイズ出身)も控えるなど、まだ有望選手たちが出場機会を虎視眈々と出場伺っている尽誠学園。
気付いてみれば2007年(平成19年)夏の第89回大会以来、3年以上甲子園から遠ざかっている彼らだが、この個性派1年生たちが火を付けた「競争意識」が「チーム力」へと昇華できれば、胸に「尽誠」が入ったユニフォームが大舞台で躍動する日もそれほど遠いことではなさそうだ。
(文=寺下 友徳)