成章vs愛知商
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原田投手(成章)
新チームらしい、元気のいい溌剌感あふれた試合は成章が制す
秋季大会の面白さの一つは、チームの新鮮さを感じることである。初めて公式戦を体験する選手たちの、「よーし、これからはオレたちの時代だ」という活気が溢れているのを見る楽しさがいい。
この試合はそんな、いかにも秋季大会の序盤という雰囲気が感じられたのが見ていて心地よかった。もちろん、ブロック予選を戦ってきているのだから、初めての公式戦というわけではないが、それを勝ち上がって、最初の目標でもある県大会へ出場を果たしたということで、モチベーションも上がっている。そんな思いが伝わってきた。
成章は夏のベンチ入りメンバー20人中18人が3年生だった。つまり、新チームはほとんど経験のない選手ばかりでまったく新しく作り上げることになっているのだ。
そんな中で、2年生でベンチ入りしていた三番ショートの松坂君と主将で二番センターの楢谷君がチームを引っ張っている。とはいえ、この二人とてほとんど守備固めでわずかに出た程度というから、県大会レベルは全員が初体験という布陣である。
その成章だったが初回、一番平川君が左越二塁打するとバントと四球で1死一三塁とし、四番山本君の右中間をライナーで破る二塁打で2点を先取した。しかし、愛知商も2回に松野君の安打などで好機を作り、八番原田君の右犠飛で1点を返した。
その後も、愛知商は安打の走者を出すものの、3回、4回といずれも成章の原田君が6-4-3の併殺で切って取った。このあたりは、原田君の投球の巧さといってもいい。体型はどちらかというとずんぐりタイプで、糟谷寛文監督をして、「いい年をした草野球の投手みたいでしょう」という感じだが、カーブを巧みに使い分けるのは本人の工夫でもあり、野球頭のいいクレバーな投球術ともいえる。それに、精神的にも強い部分があるので大崩れしないという安定感もある。
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主将市村君がベンチの指示を伝える
ただ、打たせて取る投手だけに、守りの破綻は避けたいところなのだが、それが7回に出てしまって追いつかれる。それでも、九番加藤君に同点二塁打されるものの、逆転の走者は松坂君の好中継もあって本塁で刺したのは、相手に行きかかった流れを阻止したという点でも大きかった。
その直後の7回、成章は四球の樽谷君がすかさず盗塁すると、松坂君が返して再び突き放した。さらに1死後、代打河合鉄君が左線二塁打して加点。七番の原田君も右前適時打して自らを楽にした。これで成章としてはこの試合の主導権を完全に握った。
例年に比べると比較的小柄な選手が多いという印象の成章である。試合経験も浅い選手が多いのだが、「みんな楽しそうに伸び伸びとやっていたので、ミスもあったけれども、こっちも可能性を感じながらやっとるけど面白いね」と、ベテランの糟谷監督は、これからの選手たちへの期待も含めて、新しいチーム作りを楽しんでいるようでもあった
(文=手束 仁)