奈良北vs王寺工
エース今村(奈良北)
二枚看板、堂々と発進。
秋季奈良大会が開幕。
この時期の下馬評はというと、ほとんどアテにならない。参考にできるのはこの夏に試合に出ていた選手が多いチームが注目を浴び、そうじゃないチームは未知数と評価される程度だ。僕自身も「その程度」の下馬評を信じて、球場へ向かう。
下馬評どおりの時もあれば、予想外のことも起きる。それが「秋」なのである、
そういった意味で、開幕戦に登場した奈良北は、注目のあったチームだ。今村・幸山の二人の左腕は、この夏、3年生に交じって、試合に出場していた。いわば、夏3試合を先発したエースの今村と救援で好投を見せた幸山のピッチングがこの日の注目だった。
今村はインステップする投球フォームから右打者のインコースを突いてくる。手元で鋭く曲がるスライダーは、そう容易な球ではない。
ただ、インステップする分、球にばらつきがあり、ストレートをそろえると狙われる傾向がある。スライダーにしても、ストライクを取りに行く球は狙い目である。
1回裏はそれを狙われ、簡単に先制を許した。しっかりとらえられた当たりではなかったとはいえ、いきなりの1失点は今村の悪さがでた。逆転してもらった直後の4回裏にも、四球から好機を作られ2失点している。試合の頭と逆転直後に失点をしたことは、彼の今後の課題になるだろう。
とはいえ、その2イニング以外は快投を見せた。特に、先も書いたが、右打者のインコースに食い込むスライダーは、追い込まれてからはつい手が出てしまう。秋の時点で、あの球を勝負球に使われると、打者も大変だろう。8回途中で降板したが、7回0/3を5安打9奪三振は褒められるべき数字である。
その今村を好救援したのが幸山。今村ほどのキレはないが、コントロールとテンポのいい幸山は2イニングを1安打無失点。8回は無死一塁からの登板だったが、それも難なく、抑えた。投球リズムがいいから、野手陣も守りやすいといった印象だった。
ボールの質で勝負する今村とテンポのいい幸山と、二枚看板はいい形で、秋の初戦を滑り出した。
(文=氏原 英明)