試合レポート

佐原vs二松学舎沼南

2010.09.08

2010年09月07日 習志野市秋津球場

佐原vs二松学舎沼南

2010年秋の大会 二次予選 代表決定戦

一覧へ戻る

瀬川君(佐原)

佐原が攻守にはつらつとプレーして二松学舎沼南を振り切る

 佐原がいい雰囲気の野球を展開して、かつて何度か甲子園に手の届きかかったこともある強豪二松学舎沼南に快勝した。先制して、一旦は追いつかれても少しも慌てることもなく、その直後のチャンスをしっかりものにしていくという堂々たるものだった。

 1―1の同点で迎えた4回、佐原は安打と二つの失策などで1死二三塁の好機を得る。ここで、二番比嘉君がスクイズと見せかけて投手をけん制しながら好球を待ち左前へ2点タイムリー打を放った。このあたりは、ベンチワークに選手がしっかりと応えたという感じだった。

 比嘉君はこの試合ではキーマン的な存在となっており、6回にも1死一三塁で右前打してこの日は打点3。2回には、1点先制してさらに満塁というところで回ってきて、打たされた形で投ゴロに倒れてしまっていたが、それを取り返してあまりある活躍となった。

 佐原の瀬川投手は大きく足を上げて腰をきゅっとひねって投げ込んでくるトルネード型の投げ下ろしだ。ストレートは低めでグーンと伸びてくる感じで角度もある。腰をしっかりとためて回転を利用して腕を振ってくるというタイプなのでセットになると、少し投げ急ぎ気味になって球威も落ちるかなというところもある。2回はそこを突かれて一番森田君以下に4連打されて1点を失った。それでも3回以降はそのあたりも多少修正できたのか、ほとんど危なげなかった。

 奪った三振は6個で思ったよりも少なかったが、上手に打たせていたといってもいいであろう。5回以降はわずかに2安打と後半になってからの内容がよかったことで、この投げ方でもスタミナも十分にあるということを証明してみせた。

 一方、二松学舎沼南の角田君は時に帽子を飛ばしながらの力投だったが、6イニングで9安打を浴びて5失点。制球を意識しすぎて、球が集まったところを打たれたという感じだった。それに、4回の2失点など守りの破綻も痛かった。

 二松学舎沼南は90年代には夏の大会で二度決勝に進むなど、県内の強豪として君臨していたが、その当時に比べるといくらか小粒になったという印象は否めない。学校の方針など、さまざまな状況や環境の変化もあるのだろう。しかし、伝統のタテに漢字の「二松学舎」のユニホームは変わっていない。同デザインのユニホームを着用している東京の二松学舎大付も夏の東東京大会決勝に進出すること七度、その壁を突破しきれていない。このユニホームが夏の甲子園ではまだ姿を表していない。それを待ち望んでいるOBや関係者は多くいる。

(文=手束 仁


瀬川(佐原)

 佐原高校が県大会進出を決めたこの試合。取り上げたい選手は佐原のエース瀬川 篤(2年)だ。瀬川は夏の公式戦(7月13日 松戸六実戦)で見ているが、まとまった投手で、高校2年生としてはまずまずの投手と思っていた。

今日の試合を見て、夏よりも成長した姿を見せてくれた。ややトルネード気味に足を巻き込んで投げ込むストレートは目測で125キロ~130キロ前後ぐらいか。ストレートは夏よりも速くなっている印象で、回転のかかった良いボールを投げ込むことができている。また体重が乗った時のストレートは素晴らしく、130キロ中盤は出ていてもおかしくないボールが何球かあった。変化球はカーブ、スライダーで主にストレートとスライダーのコンビネーションで抑える投手だ。

投球フォームはゆったりとワインドアップから入り、左足を巻き込むように上げるトルネードスタイル。そこから軸足に体重を乗せて投げる投手だ。左腕のグラブの使い方が上手く、トップに入ったときは開きを抑えて投げることができている。

上からしっかり振ることができており、バランスの良いフォームで投げることができている。課題は単調な投球。この投手は自分の間で投げているときはしっかりとストレート、スライダーの投げ分けができているのだが、まだ焦って投げてしまうときがあり、甘く入って簡単に打たれてしまうケースも目に付いた。もう一つの課題はクイックになると制球力、威力が落ちてしまう。やはり捻転を効かしたフォームから普通のクイックで投げてしまうとどうしても球威がおちてしまう。ただ球威だけではなく、ランナーがいるほど慌てて投げているので、自分の間でしっかり投げる工夫が必要だろう。

素材は良いし、投球もある程度まとまっている。クイックも1.1秒台と投球以外の部分もしっかり鍛えられている。秋の段階でこれぐらいの投球ができれば十分に合格ラインに達しているだろう。あとは体を鍛え込んで、ストレートを磨きながら、投球ではストレート・スライダーのコンビネーションから引き出しを増やしていけると数多くの好投手が揃う千葉県でも注目される存在になってくるのではないだろうか。ぜひ注目していただきたい投手の一人だ。

(文=編集部 河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.26

新潟産大附が歓喜の甲子園初出場!帝京長岡・プロ注目右腕攻略に成功【2024夏の甲子園】

2024.07.27

昨夏甲子園4強・神村学園が連覇かけ鹿児島決勝に挑む!樟南は21度目の甲子園狙う【全国実力校・27日の試合予定】

2024.07.26

名将の夏終わる...春日部共栄・本多監督の最後の夏はベスト4で敗れる【2024夏の甲子園】

2024.07.26

報徳学園が3点差をひっくり返す!サヨナラ勝ちで春夏連続甲子園に王手!【2024夏の甲子園】

2024.07.26

「岐阜県のレベルが上がっている」県岐商が2年ぶりの決勝進出も、岐阜各務野の戦いぶりを名将・鍛治舎監督が称賛!【24年夏・岐阜大会】

2024.07.25

まさかの7回コールドで敗戦...滋賀大会6連覇を目指した近江が準決勝で涙【2024夏の甲子園】

2024.07.24

享栄、愛工大名電を破った名古屋たちばなの快進撃は準々決勝で終わる...名門・中京大中京に屈する

2024.07.21

【中国地区ベスト8以上進出校 7・20】米子松蔭が4強、岡山、島根、山口では続々と8強に名乗り、岡山の創志学園は敗退【2024夏の甲子園】

2024.07.21

愛工大名電が今夏3度目のコールド勝ちでV4に前進!長野では甲子園出場37回の名門が敗退【東海・北信越実力校20日の試合結果】

2024.07.21

名将・門馬監督率いる創志学園が3回戦で完敗…2連覇狙う履正社は快勝【近畿・中国実力校20日の試合結果】

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.07.08

令和の高校野球の象徴?!SJBで都立江戸川は東東京大会の上位進出を狙う

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.27

高知・土佐高校に大型サイド右腕現る! 186cm酒井晶央が35年ぶりに名門を聖地へ導く!

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」