佐原vs二松学舎沼南
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瀬川君(佐原)
佐原が攻守にはつらつとプレーして二松学舎沼南を振り切る
佐原がいい雰囲気の野球を展開して、かつて何度か甲子園に手の届きかかったこともある強豪二松学舎沼南に快勝した。先制して、一旦は追いつかれても少しも慌てることもなく、その直後のチャンスをしっかりものにしていくという堂々たるものだった。
1―1の同点で迎えた4回、佐原は安打と二つの失策などで1死二三塁の好機を得る。ここで、二番比嘉君がスクイズと見せかけて投手をけん制しながら好球を待ち左前へ2点タイムリー打を放った。このあたりは、ベンチワークに選手がしっかりと応えたという感じだった。
比嘉君はこの試合ではキーマン的な存在となっており、6回にも1死一三塁で右前打してこの日は打点3。2回には、1点先制してさらに満塁というところで回ってきて、打たされた形で投ゴロに倒れてしまっていたが、それを取り返してあまりある活躍となった。
佐原の瀬川投手は大きく足を上げて腰をきゅっとひねって投げ込んでくるトルネード型の投げ下ろしだ。ストレートは低めでグーンと伸びてくる感じで角度もある。腰をしっかりとためて回転を利用して腕を振ってくるというタイプなのでセットになると、少し投げ急ぎ気味になって球威も落ちるかなというところもある。2回はそこを突かれて一番森田君以下に4連打されて1点を失った。それでも3回以降はそのあたりも多少修正できたのか、ほとんど危なげなかった。
奪った三振は6個で思ったよりも少なかったが、上手に打たせていたといってもいいであろう。5回以降はわずかに2安打と後半になってからの内容がよかったことで、この投げ方でもスタミナも十分にあるということを証明してみせた。
一方、二松学舎沼南の角田君は時に帽子を飛ばしながらの力投だったが、6イニングで9安打を浴びて5失点。制球を意識しすぎて、球が集まったところを打たれたという感じだった。それに、4回の2失点など守りの破綻も痛かった。
二松学舎沼南は90年代には夏の大会で二度決勝に進むなど、県内の強豪として君臨していたが、その当時に比べるといくらか小粒になったという印象は否めない。学校の方針など、さまざまな状況や環境の変化もあるのだろう。しかし、伝統のタテに漢字の「二松学舎」のユニホームは変わっていない。同デザインのユニホームを着用している東京の二松学舎大付も夏の東東京大会決勝に進出すること七度、その壁を突破しきれていない。このユニホームが夏の甲子園ではまだ姿を表していない。それを待ち望んでいるOBや関係者は多くいる。
(文=手束 仁)
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瀬川(佐原)
佐原高校が県大会進出を決めたこの試合。取り上げたい選手は佐原のエース瀬川 篤(2年)だ。瀬川は夏の公式戦(7月13日 松戸六実戦)で見ているが、まとまった投手で、高校2年生としてはまずまずの投手と思っていた。
今日の試合を見て、夏よりも成長した姿を見せてくれた。ややトルネード気味に足を巻き込んで投げ込むストレートは目測で125キロ~130キロ前後ぐらいか。ストレートは夏よりも速くなっている印象で、回転のかかった良いボールを投げ込むことができている。また体重が乗った時のストレートは素晴らしく、130キロ中盤は出ていてもおかしくないボールが何球かあった。変化球はカーブ、スライダーで主にストレートとスライダーのコンビネーションで抑える投手だ。
投球フォームはゆったりとワインドアップから入り、左足を巻き込むように上げるトルネードスタイル。そこから軸足に体重を乗せて投げる投手だ。左腕のグラブの使い方が上手く、トップに入ったときは開きを抑えて投げることができている。
上からしっかり振ることができており、バランスの良いフォームで投げることができている。課題は単調な投球。この投手は自分の間で投げているときはしっかりとストレート、スライダーの投げ分けができているのだが、まだ焦って投げてしまうときがあり、甘く入って簡単に打たれてしまうケースも目に付いた。もう一つの課題はクイックになると制球力、威力が落ちてしまう。やはり捻転を効かしたフォームから普通のクイックで投げてしまうとどうしても球威がおちてしまう。ただ球威だけではなく、ランナーがいるほど慌てて投げているので、自分の間でしっかり投げる工夫が必要だろう。
素材は良いし、投球もある程度まとまっている。クイックも1.1秒台と投球以外の部分もしっかり鍛えられている。秋の段階でこれぐらいの投球ができれば十分に合格ラインに達しているだろう。あとは体を鍛え込んで、ストレートを磨きながら、投球ではストレート・スライダーのコンビネーションから引き出しを増やしていけると数多くの好投手が揃う千葉県でも注目される存在になってくるのではないだろうか。ぜひ注目していただきたい投手の一人だ。
(文=編集部 河嶋 宗一)