横浜商大高vs横浜商業
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高良君(横浜商業)
新生・横浜商大は「全力疾走」で流れを掴む
正直、驚いた。
それまでの横浜商大に抱いていた印象から、まったく変わっていたからだ。
前回、横浜商大を見たのは昨年の春。群馬県で行われた関東大会でのこと。プロ注目の捕手・中村亘佑(現広島育成)を擁していたが、帝京に5回コールド負け。敗色濃厚の展開に一塁駆け抜け5秒台の選手が3人とプレイ、態度にがっかりした。中心の中村がカバーにはまったく行かず、点差が離れると投げやりなしぐさ、ふるまいを見せる。点を取られたのはすべて投手のせいだといわんばかりの態度にあきれさせられた。
ところが、久々に見た横浜商大はまったく別のチームになっていた。
初回、1死から服部が四球を与え、走者が出す。次の投球のときだ。捕手の返球に合わせて、セカンド、ショートの選手が投手の後ろにバックアップに入ったのだ。この後も2人は、ランナーが出るたび、バックアップを欠かさなかった。
攻撃面でも変化は顕著だった。内野ゴロでは明らかなアウトとの当たりでも全力疾走。ベースまでではなく、外野の芝生まで走っていた。9番の中村などは、送りバントで捕手にタッチされたにもかかわらず、芝生まで走っていった。
なぜ、変わったのか。金沢哲男監督は理由をこう説明する。
「(広島入りした)中村は、あれでも中学のときに比べたらマシになったんですよ(笑)ただ、あのあとですね。『イメチェンしよう』と。去年の夏の新チームから始めました。力もなかったし、選手には『全力疾走しろ』と『声を出せ』としか言っていません(笑)今回も総入れ替えで力がないので、同じですね」
別のチームに見えると印象を伝えると、笑顔でこう話してくれた。
「そういってもらえるのはうれしいですね。やっぱり、全力疾走をすると勢いがつくし、チームにスピードも出ますよね」
金沢監督の言葉通り、試合でも、走る姿勢が得点につながった。
3回、2死走者なしから四球で出た佐俣が次打者の初球にすかさず盗塁。2球目に続けて仕掛けたエンドランが見事に決まり、田中智のライト前安打で先制した。
「相手はいいピッチャーでしたし、普通に打たせたら攻略できないかなと」(金沢監督)
4回には1死三塁で三塁走者の伊藤が、澤村のセカンド前へのどん詰まりの小フライを見て判断よくスタート。打球は二塁手の前に落ち(セカンドゴロ)、貴重な2点目を奪った。
この他にも得点にはつながらなかったものの、エンドランあり、バスターエンドランありと積極的な攻めを展開。左腕二枚の横浜商からしぶとく1点ずつを積み重ね、反撃を抑えて逃げ切った。
「(エースの)服部という軸がいるので、彼を中心にして展開していきたい。1週間あくので、エラー、サインミスという課題をひとつずつつぶしていきたいですね」(金沢監督)
1年生が5人の若いチーム。例年のような力はないが、どんな展開でもやるべきことをやり続ければ、結果はついてくるはず。変化した横浜商大に注目だ。
(文=田尻 賢誉)