川崎北vs神奈川工業
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小野寺君(川崎北)
同級生監督対決。3時間22分をかけた大乱戦の末、川崎北が勝利を掴む
何とも長い試合となって延長戦でもないのに3時間22分。かといって、四球連発の2ケタ得点の試合かというとそうではなく、スコアとしては終盤までは競り合った試合だった。それにしても、選手や監督はもちろんだろうが、見る方もさすがに疲れた。
中学野球部の指導で県内では多くの実績を挙げていた佐相眞澄監督が、高校野球の監督として川崎北に赴任して6年目。その佐相監督とは中学、高校を通じてライバルとして競い合い、日体大では同級生となった神奈川工の西野幸雄監督だが、佐相監督が川崎北に赴任以来毎年3月の解禁日にオープニング試合を組んでいるという間柄である。手の内を知っている同士ともいえるのだが、公式戦で対戦するのは初めてだという。
神奈川工は04年夏の神奈川大会では準優勝という実績もあるが、近年ではどちらかというと川崎北の方が実績としては上回っている。しかし、今秋に関しては、「佐相のところと当たったとしたら、今年は勝てるぞ」という思いはあったという西野監督だったが、それがこの秋実現して満を持しての試合となった。
ところが、それが気負いになったというわけではないだろうが、初回2死走者なしから川崎北の三番榎本君が一塁手の股間を襲う内野安打が出ると、ここから川崎北打線に火がついた。続く田辺君が中前打すると、平山君が左越二塁打して二者を迎え、小野寺君も中越三塁打。中野君も左前タイムリー打を放つなど5連打で4点が入った。
立ち上がりにやや不安のある神奈川工の先発長谷川君としては、順調な滑り出しかなと思っていたところだっただけに、「あれ、あれ?」という感じの失点だったのではないだろうか。
それでも、自力のある神奈川工は2回には二つの併殺崩れの失策で、3回には三番門間君のタイムリーで、1点ずつ返す。4回にもともに1点ずつ奪い合った。この回はお互い九番打者がタイムリーするなど、打線は切れ目のないことを示していた。
とはいえ、ともにあと一つ決め手を欠いていたことも否めない。それにしても、5―3というスコアで5回を終えた段階で1時間51分というのは長い。それでも、5回裏には川崎北の二番手酒井君がこの試合ではじめて3者凡退で抑えていただけに、後半は試合のテンポも変わってくるのかなとも思わせた。
ところが、6回、神奈川工の代打桑名君が絶妙のバントヒットを決めると、酒井君は球が上ずった。ここで、佐相監督は3人目の鈴木悠君を送り出す。元々、川崎北しては6人の投手を用意しており、「何とか継投で一人3イニングをしっかり投げていくということで、こなしていくことがテーマです」(佐相監督)と言うように継投は必須である。ただ、そのリズムがベンチの思惑とは異なり、苦しい中での継投という形なので試合が作りきれない。
こうした展開で、試合そのものも落ち着きがなくなっていたのだが8回、川崎北は失策と四球、ポーク、暴投などもあってチャンスが広がった。神奈川工も4人目のエースナンバーを付けた門間君がマウンドに登っていたが、川崎北は富田君、石井君の連続二塁打などで4点を加えて試合の方向性を決定づけた。
しかし、その裏にも神奈川工は1死満塁とするなど、とにかく塁上に走者がい続けるという試合だった。こうした展開になった要因には、さすがに両監督ともに、投手の不整備を挙げていた。「素材としては先発した左の長谷川が一番だと思って賭けているのですがね、メンタル部分でまだなんですよ」と、西野監督が言えば、佐相監督は、「とにかく、目先を変えていこうと思っているんだけれども、軸がないといけませんよね」と、やはりエース不在を嘆いていた。
試合そのものは長くて、やや大味だったという印象もあったが、それでも県内公立校の雄として、個々の素材力は高い。特に、神奈川工にはこれから秋のシーズンを過ごして、ひと冬越えた成長を大いに期待したい。
(文=手束 仁)