船橋芝山vs拓大紅陵
![](/images/report/chiba/20100903002/photo01.jpg)
拓大紅陵・森田
船橋芝山完勝! 拓大紅陵、早すぎる冬の到来
【試合経過】
船橋芝山が終始、自分たちのペースで試合を進めていき、強豪・拓大紅陵を破り2回戦に進出した。
千葉県の高校野球ファンにとっては拓大紅陵が二次予選で敗れるのは衝撃的なことだろう。
しかし通の千葉県高校野球ファンならこう思ったのではないだろうか。「またも普通の公立校に負けたよ」と。
そう、拓大紅陵は近年、公立校に敗れることが多かった。昨年は決勝で県立の
に敗れた。一昨年は
成東に敗れた。そして3年前は
鎌ケ谷にコールド負けを喫した。同じケース(普通の公立校)で負け続けると見くびって戦っているなと思うのが普通だろう。この試合も
八千代東戦を思い出させるような試合であった。
1回の表、2番が四球で出塁する。しかし古城が牽制タッチアウトでチャンスをつぶした。拓大紅陵にとって嫌な流れがたちこめていた。1回の裏、
船橋芝山の攻撃。拓大紅陵の先発は背番号15の木曽であった。木曽は乱調。1番西田にレフト線ツーベースを放つ。2番大谷はバント。ファースト新井はサードへ送球。フォースアウトを狙うが、セーフ。ノーアウト1,3塁のチャンスを作る。
3番石野はセンターフライに倒れワンアウトになったが、4番石井健がセンター前ヒットを放ち、
船橋芝山が1点を先制する。さらに笠もヒットで続き、ツーアウト満塁。7番大石が四球を選び、押し出しで1点を追加し2点目。更に
船橋芝山は2回の裏に先頭の春原がライト線を破るツーベースを放ってノーアウト二塁のチャンスを作る。ここで拓大紅陵は木曽から右サイドハンドの鈴木にスイッチ。
船橋芝山は攻め立て、2番大谷のスクイズで1点を追加し、3対0。序盤で3点先制。
船橋芝山は理想的な試合運びを見せる。
先発の春原は好投。スピードはないが、コントロール投げ分けていき、拓大紅陵打線を打ち取っていた。なんと5回までノーヒットピッチング。拓大紅陵打線は完全にドツボに嵌っていた。
しかし6回の表、春原を捉え始める。ワンアウトから途中登板の鈴木がライト前へしぶとくヒット。その後は四球、バントヒットでワンアウト満塁になった。ここで代打・初芝。元ロッテ初芝清(現かずさマジックコーチ)の息子である。初芝はライトへクリーンヒット。二者生還し、1点差に迫る。打球の速さ、勝負強さは親譲りだ。
ここで
は投手交代。夏のエースであった安田を投入する。安田は小野を打ち取りツーアウト。そして4番海保はセカンドへ痛烈なライナー。セカンドが横っ飛びでキャッチ。大ファインプレーで安田がマウンド上でガッツポーズ。拓大紅陵、同点ならず。
7回にもツーアウト1,3塁のチャンスを作るが、同点ならず。チャンスの後にピンチあり。
はツーアウト二塁から6番笠のヒットで1、3塁とし、追加点のチャンス。7番大石がライト前ヒットで1点を追加。ここで投手を交代。右の速球派森田を投入する。8番石井滉は四球を選び満塁。そして9番の安田も四球を選び押し出し。拓大紅陵にとっては痛恨の押し出し。そして次打者のときにパスボールで更に1点を追加し、なんと6対2と大きくリードする。そして9回の表、安田が三者凡退で退け
船橋芝山が金星を手にした。
敗因はエースを登板させなかったことに尽きるだろう。豊富な投手陣を揃える拓大紅陵にとっては次の試合に備えてエースを温存しておきたかったかもしれない。
しかし大事な初戦ではエース、あるいは中心投手が投げて自分たちのリズムを取ることを大事であって温存させるべきではなかった。控え投手で先発した結果、先制点を取られて後手に回った。
逆に
は理想的な展開に持ち込むことができた。春原と安田の二枚看板をいかにうまくつなぐか。春原は最低でも試合を作ってほしいというのが監督の考えであり、願いだろう。3点を先取したことで、彼もだいぶ楽になり、自分の投球をしていた。
その結果、6回ワンアウトまでノーヒットである。しっかりとゲームメイクした。安田も厳しい場面から登板したが、よく抑えた。見事な試合運びだった。この2人を盛り立てたのは野手陣の存在も忘れてはならない。守っては際どい打球でも前へ落として処理し、外野手のポジショニングもよく、ぎこちなさは残るが、しっかりと守っていたし、打っては大振りにならず右、左へと打ち返していた。しっかりとした野球が勝ちに繋がった。ネームバリューのあるチームに勝ったことでこのチームは大きな自信を得た。これからは警戒されるチームになることは間違いないだろう。
一方、拓大紅陵はアウト27個のうち11個である。後半になってゴロが増えたが、前半まではフライばかりで全く工夫が見えなかった。戦略の失敗が敗因のひとつではあるが、根本的にこのチームは打力がない。新チーム発足したばかりなので、打撃が仕上がっていないのは仕方ないという考えもある。ただ甲子園を目指すことを標準に置いて練習に取り組んでいる拓大紅陵が工夫のない打撃をしていることに残念に思った。
拓大紅陵にとっては早すぎる冬の到来。しかしこの期間で拓大紅陵にとっては大事な期間だ。ただ練習するだけでは強くならない。挨拶が曖昧だったり、グラウンド整備に積極的ではなかったりとなにかグラウンド以外の立ち居振る舞いにも問題があった。それがすべてではないと思うが、今日のようなゲームにつながったのではないだろうか。つまり練習だけではなく、普段の取り組みから意識改革していかないと同じ繰り返しになることをナインは認識しておくべき。これは全員が実行しなければならないことである。
【PICKUP PLAYER】
今回、取り上げる選手。
は春原と安田隆太の二枚看板だ。
春原は右のオーバーハンド。アーム式の投げ方なためあまりキレを感じないが、コントロールは良い。球速は120キロ前後でも内角にもコントロールできているので打たせて取ることができていた。もう少しスピードが伸びてくると面白い投手だ。
安田はスリークォータ気味から投げる右投手だが、ややインステップさせて出所を隠しているので、スピードはなくても思ったほど打ち辛い投手ではないだろうか。ゲームメイクはしっかりできる投手なので、あとはスピード、変化球など基本能力を伸ばすことが課題だろう。
拓大紅陵は2番手で登板した鈴木 稜也(1年)、三番手の森田 真基(1年)、捕手の石井 大和(1年)か。
鈴木は正統派サイドハンド右腕。球速は120キロぐらいだが、コントロールは良く、体が出来れば面白い投手。
森田は速球派タイプで、130キロ前後は出ているのではないだろうか。ポテンシャルは素晴らしいものがある。ただ顔がホーム方向に向いていないので、制球を乱しやすい投手であり、この試合でも2者連続四球を記録した。変化球はスライダー、チェンジアップを投げていたが、キレ、コントロールはまだまだで未完の大器という印象だが、この投手を成長させることが拓大紅陵復活の鍵を握っているのはいうまでもないだろう。
捕手の石井は鉄砲肩で素晴らしいスローイングを見せてくれるが、テークバックは大きい上に頭が突っ込みやすいフォームになっているので、タイムは遅くなってしまうし、コントロールは乱れるし、負担が大きいので、スローイングは修正したほうがいいだろう。肩だけの選手で、ワンバウンド処理はまだまだだし、打撃もまだまだ。ただ正捕手として期待されているのは間違いなくこれからの成長を期待したい捕手であった。
(文=河嶋 宗一)