試合レポート

新潟明訓(新潟)vs京都外大西(京都)

2010.08.14

2010年08月13日 阪神甲子園球場

新潟明訓(新潟)vs京都外大西(京都)

2010年夏の大会 第92回甲子園 2回戦

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試合シーン

いつもの野球ができなかった理由

 「(先発は)左で行きます」

試合前、先発投手は誰かと聞かれた京都外大西・上羽監督はそう答えたのである。
その時点で、誰もが、その左とはエースナンバーをつける中村允だと思っていた。しかし、スタメンが発表されると、その左とは2年生の佐藤優太だった。「佐藤の調子がいい」「けん制が上手い」「むこうには佐藤のデータが少ない」が抜擢の理由だ。

まさに奇襲作戦。だが、府大会決勝で完封したエースがマウンドにいないという、不安が募ったのもまた事実である。

試合が始まると、京都外大西にミスが目立つ。まず、先頭の下村が左翼前安打で出塁、2番・荻野は当然のように送りバントを試みたが、これを失敗する。手堅い野球が身上の京都外大西からすれば、らしくないプレーである。しかし、これが始まりだった。

 直後の1回裏、新潟明訓に上手く攻められ1点先制されると、2回表には無死から走者を出すも、またバント失敗。2回裏にまた1失点。さらに3回表、今度は1死・三塁から思い切ってスクイズを敢行するが、ここでもまた荻野が空振り。その裏に、また1点を挙げられた。

 序盤を終わって0-3のビハインド。

序盤でのこの点差はたいして重くはないが、バントを得意とするチームが3度にわたって失敗しての劣勢は点差以上に大きい。バントや小技など、つながりを重視して勝ち上がってきた京都外大西だけに、序盤からのつまづきは試合の流れを大きく失うものだ。

5回に相手のミスに乗じて2点を返すも、2番手で登板したエース・中村がすぐれず。6回に2点を奪われ、試合は決まった。「ロースコア」に持ち込みたいと試合前に話していた上羽監督の思惑が外れての敗戦になってしまった。

 試合後、上羽監督は「自分たちがやろうとしていることを向こうにやられてしまった。先手を取られてしまった」と悔しそうだった。序盤の悪い流れのまま、試合が進んでしまったことを考えると、序盤の立て続けのミスはチームにとっても痛かった。

とはいえ、バントをミスした選手は責められない。それも野球の一つだからだ。それよりも、バント職人として起用されてきた荻野が、なぜ、バントを失敗してしまったのか、そこが気がかりである。荻野は通常の練習、ほとんどバッティング練習をしないという。バッティング練習中は、バントやエンドランを想定した小技を磨くのに、当ててきた。技術的な部分だけで論じれば、バントを失敗するような選手では決してないのである。

「選手がいつもの力が発揮できなかった」と振り返ったのは小金コーチである。「厳しさが足らなかったということでしょうね」とも。確かに、大舞台での失敗は、日ごろの練習量がモノをいうとは思う。しかし、この試合を見る限りにおいては練習だけではない、選手たちが「いつもどおり」を発揮できる状態を保ているようには見えなかった。

バントを二度失敗した荻野にしても、「いつも以上に緊張していて、決めないといけないという気持ちが強すぎました。スクイズは1打席目が小フライだったので、ボールを殺そうとしたら、空振りになってしまった」と心情を吐露している。

「いつもと違う」奇襲作戦は、戦略としては悪いわけではない。試合には必ず相手がおり、その相手を上回るためにいろんな策を練るものだ。負けてから言うのは単なる結果論でしかない。しかし、「いつもどおり」を発揮できない京都外大西ナインの硬さを見ていると、奇襲作戦は必ずしも相手に与えるだけのものではないと、そういう気がしたのだ。

「2年生が多いチームという経験の浅さもあって、こちらにリズムが乗ってくるのに時間がかかってしまった。ただ、こうして、甲子園にこしてもらって、経験できたこともあるので、それはうちのチームにとっては財産です」と上羽監督は前を向いた。

奇襲作戦の狭間で力を発揮できなかった2年生の選手たちをみて、″いつもどおり″の戦いをすることの難しさを痛感したのではないだろうか。

(文=氏原 英明


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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