佐賀学園(佐賀)vs旭川実(北北海道)
![](/images/report/zenkoku/20100809004/photo01.jpg)
(佐賀学園)
甲子園で勝つための守備
ファーストの守備力――。
この言葉で片づけたくない場面があった。
初回、佐賀学園の攻撃。
2死一、三塁で打席には5番の柴崎翔也。
一塁に走者がいるため、当然のことながらファーストは一塁ベースにつく。旭川実・持立翔太もそうしていた。
高校野球では、このケースはほとんど一塁走者がスタートする。二、三塁にして一打2点のチャンスを作りたいからだ。打者が打てそうにない場合は、一塁走者がわざと挟まれ、その間に三塁走者が本塁を狙ってスタートするというのがお決まりのパターンだ。
ところが、佐賀学園・巨瀬博監督はそのどちらも選択しなかった。
走者を動かさず、一、三塁のまま攻めることを選んだのだ。ファーストをベースに釘づけにして、一、二塁間を広げる。右方向への打球が安打になりやすい守備隊形をとらせるためだ。
打者は本来9番を打つ柴崎翔。好調さを買って5番に抜擢したが、もともとは小技や俊足が持ち味の選手。巨瀬監督はスイングをコンパクトにするため、バントの構えから打つバスターヒッティングのサインを送り、右狙いを徹底させた。幸い、旭川実バッテリーの配球はほとんどが外角球。逆方向を狙うには好都合だった。
チャンスにも気負わず、柴崎翔はしっかりと球を見極め、カウントは3ボール2ストライク。
そして、6球目。
外角へのチェンジアップに柴崎翔が食らいつく。
「外の球だったので、逆らわずに打った」という打球はファースト・持立のミット右横をかすめるようにしてライト前へ。佐賀学園に貴重な先制点が入った。
うまいファーストなら捕球できる当たり。一般的な守備力でも止めることぐらいはできただろう。だが、ここではファーストの守備力をとやかく言うつもりはない。
それよりも、問題にしたいのは準備やかけひきができなかったかという点だ。
2死、3ボール2ストライク。
一塁走者は自動的にスタートを切る。
それがわかっているから、投手の鈴木駿平も6球目を投げる前にけん制を1球入れている。
だが、結果的に“それだけ”だった。
持立は、初球から6球目まで、同じようにベースにつき、同じ位置に守った。
このケースなら、ファーストの動きはいくつか考えられる。
(1)けん制球を多めに入れ、一塁走者を出づらくしたうえでファーストがベースから離れる。
(2)ファーストがベースから離れた状態からけん制を入れておいて、再びファーストが離れる。
(3)プロ野球の外国人選手のように、自動スタート以外はまず走らないという鈍足選手なら、はじめからファーストは離れる。
佐賀学園の選手は、総じてリードが小さめ。走塁意識が高いようには見えなかった。どうせ自動スタートなのだから、(1)~(3)のようにはじめからベースを離れ、ヒットゾーンを狭める手もあった。
持立に守備位置について尋ねると、「一、三塁はベースにつきます。離れて守らなかった理由ですか? 特にないです」。これが一般的な高校生の考えだろう。決して間違いではない。
だが、2死、フルカウント、リードもほとんど取らない走者と条件がそろっていただけに……。後ろに守っていれば確実にアウトにできた打球。けん制球やファーストの動きで一塁走者とかけひきをし、カウントによって、守備位置を変える。1球1球、状況が変わるのが野球。
リスクを承知で、守備で勝負をかける――。
全国で勝つには、守りでも思い切りが必要だと感じさせられた1球だった。
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旭川実 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | ||||||
佐賀学園 | 1 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | X | 5 |
旭川実:鈴木 成瀬―渡部 佐賀学園:峰下―貝原