試合レポート

仙台育英(宮城)vs延岡学園(宮崎)

2010.08.16

2010年08月15日 阪神甲子園球場

仙台育英(宮城)vs延岡学園(宮崎)

2010年夏の大会 第92回甲子園 2回戦

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好リリーフをみせた田中(仙台育英)

喜ぶ仙台育英、喜ばぬ興南。

 3点をリードしたにもかかわらず、試合がなかなか落ち着かない。

 延岡学園の反撃を受けた仙台育英が、防戦一方になっている。3回裏のことである。相手も必死だから、反撃を受けることもあるだろう。だが、しかし、仙台育英ナインの落ち着きの無さには、技術以外のものを感じたものだ。この回一気に4点を奪われ、一時逆転された。

 指揮官の采配(投手交代)により落ちついたが、気持ちが上下動するチームというのが仙台育英に持った印象である。

 ヒットを打つたび激しく拳を作り、ピンチを抑えれば拳を突き上げる。守備からベンチに引き揚げてくる選手も、すべてではないとはいえ、感情をあらわにしている。抱き合う者も多い。

 今年の仙台育英は、とにかく、喜怒哀楽が激しいのだ。

 

 「ガッツポーズは自然ですね。心の底からでているものだと思います」と主将の井上が言えば、事あるごとに拳を作った右翼手・庄子も「守備の時に出るのは、テンションが上がってきて、ガッツポーズが出てきました。テレビに映るんで、友達ともガッツポーズをするって約束したんで」と笑顔で話す。

 相手があることだけに、少し、度が過ぎるような気がしなくもないが、「このチームのテーマは笑顔だ」と佐々木監督はこう説明してくれた。

「まやかしの笑顔じゃ、誰も評価してくれない。野球をやっている選手だから、真面目な顔をしなくちゃいけないということはない。ちゃんとした笑顔を出して、それが次へとつながっていく」。

 

 喜ぶことが、仙台育英の持ち味らしい。ただ、3点をリードしてから反撃をくらった時のナインの落ち込みが激しいのは、喜ぶのがスタイルゆえの、反面が出ているような気がしてならない。そこで、思い起こすのが、2試合目で、明徳義塾に完勝した興南の戦いぶりである。

 この日の試合では、2点リードから2回裏に1点を返されると、明徳義塾に試合の主導権を握られそうになった。3回裏にもピンチを招き、4回表の攻撃も簡単にツーアウトを取られた。まさに劣勢の試合展開だった。

 しかし、ここで興南に本塁打が飛び出すのだ。打ったのは7番・伊礼。その場面を彼はこう回想してくれた。

 「流れが悪いのは感じていました。ここで自分が出て、流れを作ってやろう。そう思って、打席に入りました」

 冷静に試合を進め、自分をコントロールできている。さらに、素晴らしかったのは、その後の伊礼の立ち振る舞いである。ホームランだと分かり、ダイヤモンドを回るのは「気持ち良かった」そうだが、彼は淡々とダイヤモンドを駆け抜けたのである。

 興南は本大会出場を決めた時、マウンドには集まらなかったそうだ。高校野球には恒例となっている優勝の儀式を作らず、そのまま整列したという。その姿勢には感心したが、今大会でも、彼らの立ち振る舞いは継続されている。激しくは喜ばない。淡々と試合を進めていくのだ。そこに彼らの強さを感じる。興南・我喜屋監督に聞いた。

 「高校生ですからね、喜怒哀楽はあります。しかし、相手もいることです。それを表に出すのではなく、中身が闘志を燃やせばいいわけです。精神的なコントロールをする。舞い上がるのではなく、足元を見つめた野球をする」。

 読者に問いたい。喜びを爆発させる仙台育英の姿に何を感じるのか。喜ばぬ興南に何が見えるか。

 「興南は点差が空いてるのに、喜ばない。ヒットを打っても当たり前、みたいな。でも、それは相手の方針なんで、それをどうこう思わない。自分たちは自分なんで」(庄子)。
「どのチームも完璧なんてないんで、試合が終わって、勝った方が強いわけですから。(喜ばない)そんな興南に付け込んで行けたらと思います」。(井上)

仙台育英ナインは興南をそう見ているという。

喜ぶ仙台育英、喜ばぬ興南。3回戦でこの両者がぶつかる。

(文=氏原 英明
(写真img01~18=宮坂 由香
(撮影img19~30=鈴木 崇


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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