試合レポート

明徳義塾vs高知商業

2010.07.26

2010年07月25日 高知県立春野運動公園野球場

明徳義塾vs高知商業

2010年夏の大会 第92回高知大会 決勝

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甲子園出場決定に沸く明徳義塾

明徳義塾、「守り勝つ」野球で甲子園に帰還!

(試合経過)
13時04分に迫田宣久主審によりプレーボールがかかった序盤は
高知商
・岡本健斗、
明徳義塾
・前田克樹という両3年生右腕による緊迫した投手戦が続いた。が、その均衡を破ったのはテンション高くベンチからでも闘う明徳義塾であった。4回表1死から5番・先田弦貴(2年)、松森大河の連続ヒットで1・3塁とした明徳義塾は、続く前田が一塁側へ絶妙のセーフティースクイズを初球で決めて欲しかった先制点を奪う。

明徳義塾はその後も全く攻撃の手を緩めることなく、続く5回には2死から相手エラーで出た2番・梅田翼(2年)をシング・アンドリュー(3年)、北川倫太郎(2年)の連続ヒット、6回にもヒットで出た6番・松森大河を送った後、前田を好リードしていた8番・杉原賢吾(1年)のタイムリー、さらに7回にも2死から北川の2塁打と先田弦貴(2年)のタイムリーで1点ずつを追加。「ウチの勝ち味があるなら3点勝負」(正木陽監督)と踏んでいた

高知商

のもくろみを打ち砕く。

なお、この4得点はすべて初球を狙ったもの。試合前会見で馬淵史郎監督が「好球必打」と語っていた岡本攻略法を選手たちが実践したことが、6回3分の2で10安打を浴びせ、

高知商

の絶対エースを降板させる好結果につながった。

そして明徳義塾は自己最速139キロを計測した直球とチェンジアップ気味のカーブを駆使し、6回を4安打無失点に抑えた前田に続き、7回からは前日の準決勝で岡豊を完封した岩元俊樹(3年)が満を持して登場。岩元は前日ほどのスピードはないものの、最速138キロのスピードに気迫を全面に押し出す直球で

高知商

打線を仕留めていった。

かくして15時21分、ついにその時はやってきた。梅田がセカンドフライを掴むと共に高知県立春野運動公園野球場マウンド上には歓喜の渦。そして重圧に打ち克った喜びの涙が土を濡らした。数々のドラマを演出したストライプに「明徳」のユニフォーム。これまで11度の出場では強打がクローズアップされた彼らであるが、今回は一転、5試合45イニング1失点という「守り勝つ力」を携えて6年ぶりに夏の甲子園に帰ってくる。

(監督・選手コメント)
明徳義塾
馬淵 史郎監督
(選手たちに胴上げされ)夏に胴上げされたのは2002年に全国優勝して以来ですね。それくらいこの弱いチームが猛練習をやって全国大会の出場権を取ったというのが、子供たちにとっては嬉しいんでしょう。新チームを結成したときも下級生がこんなに出場するチームもはじめてだったし、今日も先発に1年生が2人(杉原賢吾保守、今里征馬遊撃手)、3年生の先発は前田(克樹投手)、庄司(優斗一塁手)、松森(大河中堅手)、シング・アンドリュー(右翼手)の4人だけ。でも、3年の補欠も含めてチームが1つになれたことが大きかったです。3年前の選抜大会出場が挟まっているので夏の6年ぶりという感じはないのですが、今日も前半に畳み掛けられないのは「やはりしばらく甲子園に行ってないからなのかな」という感じで、ベンチから見ていました。

今日は最初からランナーが出たら(犠打を絡めて初球から)仕掛けようとは思っていました。得点を取れるうちに取っておこうと。普通にやると、併殺を取って勝ち進んできた過去の試合を見ても(

高知商

エース)岡本くんの持ち味を出させてしまうと思っていましたから。今年のウチは投手力が安定していますから、3点を取れば勝てる。よってビッグイニングを狙うよりも1点ずつを取った方が確実だと考えました。練習試合なら打たせている場面でもバントをしたのもそれがあったからです。

高知県大会5試合で無失点というのは経験がない(注:実際は1失点。それでも夏では明徳史上最小失点)ですね。2002年に優勝したときも県大会では結構取られていました(4試合8失点)し、今回は複数のピッチャーを持っているということが有利に働いたとは思います。ただ、今日は2人ともあまりよくはなかったですね。前田は決勝のプレッシャーから球が高かったですし、岩元(俊樹)も昨日の疲れが残っていた。今日は決勝前に学校で少し練習したのですが、岩元は肩の張りが残っていたので、前田で6回まで引っ張って、残り3回を岩元でいこうと考えていました。

決勝も終わってみれば終始明徳ペースにはなりましたが、今大会も第1シードでもないし、挑戦者で臨んだ大会だったことで積極性を9回貫けたことがよかったと思います。

昨日の準決勝・岡豊戦の後には(県大会準決勝でコールド負けした)悔しさを晴らして泣いた奴がいるんですが、それは負けたあとの守備練習ばっかりの猛練習を思い出したんでしょう。「これで明徳の伝統を消したくない」という気持ちを相当彼らは持っていると思います。僕も「野球では守りで負けるのが一番恥ずかしいんだ」ということを言って練習したので、それなりの成果は出たと思います。

その意味では今年の優勝はこれまでと違いますね。春の時点でこんなに弱いチームでも、地道に守備練習をやればこういうチャンスもあるんだということを私自身も勉強させてもらいました。「やればできるじゃないか」ということを後輩たちにも伝えられたと思います。

甲子園では大きなことは言えませんが、投手陣はいいし、何とか打撃陣も決勝では当たってきたので、この状態であれば何とかどことやっても戦えるとは思います。大会までは2週間ありますので、ちょっと休養をとって調整したいと思います。夏に出られるのは何か嬉しいですね。がんばります。

松森 大河中堅手(3年・主将)
(4回の先制点につながるヒットは)エンドランのサインも出ていたし、直球を投げてくることも読めていたので、ライトに振りぬくことだけを考えました。監督からは「初球の甘い球を積極的に狙っていけ」と言われていたので、積極的にいった結果です。
今大会はピッチャーがしっかり投げて、しっかり守備で守ることができました。そして親元を離れて県外から来ている選手も多いので、甲子園にいきたい気持ちは誰よりも強かったと思います。

前田 克樹投手(3年)
春の県大会準決勝で岡豊にコールド負けてしてから、ノックとかはメチャクチャきつかったです。でも、ピッチャー陣は朝5半時に起きて6時半の点呼前に選手寮近くの急坂を1時間ダッシュする自主練習もしました。春、岡豊に負けた悔しさはあまりに強かったので、選手同士でも仲良くという感じではなく練習でも揉めたりしながらも、声を出し合ってきたことが今日につながったと思います。今日は苦しかったそのときのことを思い、応援してくれるみんなのことを思いながらマウンドに上がりました。

杉原 賢吾捕手(1年)
(この日2安打1打点。今大会1年生捕手でチーム無失点に貢献)今大会は当たっていなかったので、初球から狙っていきました。6月の高知県高校総合体育大会で公式戦デビューしましたが、あのときは監督が1年生を多く使ってくれた中での試合だったので、さほどは緊張せず一生懸命やるだけでした。そして今大会では自分はキャッチャーなのでまずは先輩方をリードすること、その上で打てたラッキーくらいの気持ちで臨みました。その考え方は明徳義塾中のときから変わっていません。

リードではピンチのときに投手が一番いい球を投げてもらうような配球を考えました。山田(寛・3年)さんのときには思い切ったボールを、岩元さんのときには
智弁和歌山
戦のときから自信を持っているストレートを、前田さんのときには調子を見ながら一番いいボールを決め球にしました。特に前田さんとは今大会、僕との考えが両方かみ合っていたと思います。

甲子園はTVで見ていた世界なのでどんな感じかわからないですけど、3年生に一日でも長く高校野球をしてもらえるように頑張りたいです。

シング・アンドリュー右翼手(3年)
今日は気合でがんばりました。監督からも「思い切って初球から打て。今まで自分のやってきたことをここで全部出すしかないんや。三振になろうがそれは全部俺が責任取ったる」といわれて気分が楽になりましたし、監督がそういってくれたことが嬉しかったです。

チームとしては5月の末に関西(岡山)に2試合続けてコールド負けし、落ちるところまで落ちたことで、みんなも「ここから伸びるしかない」と考えられたたこと1球に対する気持ちが変わってきました。小さなことを徹底してできたことが今日につながったと思います。

甲子園では今まで支えてくれた人のためにも勝ちたいし、個人的には記録に残るのでホームランを打ちたいですね。


高知商

長山 翼外野手(3年・主将)
(夏は控えに回り)自分が出て活躍したい気持ちはありましたが仲間を信じていましたし、夏に勝つためにみんなをサポートしていこうと思いました。今日はできなかったですが、今大会では最後までしつこい、あきらめない野球ができたと思います。

実は大会の前日、ベンチに入れないメンバーがみんなで鶴を折って「信じる」と入ったオブジェをサプライズで渡してくれたんです。その気持ちが嬉しくて、チームもそこで1つになれたと思います。

僕は大学でも野球を続けようと思っているので、この経験を大人になってもつなげていきたいし、選手としてかなえられなかった甲子園の夢を指導者として叶えられたらと思っています。野球が終わっても人生は終わっていないですから。

岡本 健斗投手(3年)
試合前には正木陽監督から「思いっきり投げろ!インコース突いてこい!」と言われましたが、明徳義塾は初球のインコースを相手にうまく合わせてきました。でも(捕手の)武内(洋申)が何回も「あきらめるな!」と何十回も言ってくれて心が熱くなりました。

この2年半を振り返ってみると投手として精神的な弱さを克服できないところはありましたが、人間性や気持ちの部分では学ぶことが多かったです。特に正木監督はこれまで僕らが甲子園に行くには何をしなければいけないのか分からなかった部分を、ワンプレーを大切にすることをよく言ってくれて明確にしてくれました。

(文=寺下 友徳


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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