試合レポート

横須賀vs明和

2010.07.26

2010年07月25日 刈谷球場

横須賀vs明和

2010年夏の大会 第92回愛知県大会 5回戦

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桑原(横須賀)

激戦区愛知でベスト16まで上り詰めた進学校対決、横須賀に軍配

ともに愛知県内では指折りの公立進学校が、ベスト8の座をかけた5回戦で顔を合わせた。
「進学校」という学校の特徴や、部の環境面などで似通った両チームの戦いは、死闘と呼ぶに相応しい激戦となった。

明和は、県で1、2を争う難関校。毎年、東大・京大に計30人程度を送り、地元の名古屋大にも毎年約50人の生徒が合格を果たす。某自動車メーカーの創業者をはじめ、地元財界に明和OBは多い。野球部のここ数年を振り返ると、06年~08年の夏の大会は初戦敗退だったが、昨夏は2つ勝ち星を挙げている。

一方の

横須賀

も、国公立大学に毎年約200人が合格する進学校。野球部は2年前、福谷浩司という素晴らしい選手が出現して話題になった。最速145キロ・高校通算20弾の大型選手でプロからも注目され、現在は慶応大(2年)で既に主力として活躍している。

野球に学業の「偏差値」は関係ないかもしれない。けれども、上達のコツを頭と体で理解する「学習」の習慣や、工夫をする能力は、進学校の選手に多く見られる特長なのではないか。そんなことを時々思う。「(野球での)細かいプレーや集中力の点では、勉強もできる生徒のほうが優れている傾向にある気がする」とは、知り合いの高校教諭の談である。

さてこの試合であるが、両校のクレバーなイメージとは反対に、ほとんどの選手がユニフォームを泥だらけにし、気迫と気迫がぶつかり合う熱戦になった。
明和が試合前半で6-3とリードするが、9回表に

横須賀

が3連打などで4点を挙げ土壇場で逆転する。しかし明和も譲らず、その裏に執念の内野安打で同点に追いつき、延長戦にもつれ込んだ。延長10~12回は、両者ランナーを出すも、投手が踏ん張って「あと一本」が出ない。灼熱のグラウンドでまさに「マラソン」状態だ。それでも延長13回表、敵失などを足掛かりに

横須賀

が平林和也、温品哲洋の連続タイムリーで4点を挙げ、粘る明和を振り切った。

横須賀

は、劣勢の4回裏途中から2年生エース・桑原啓太郎をマウンドへ投入。この桑原がよく投げた。「きつかったです。それでも、味方が打ってくれると信じて投げました」と本人が語るように、走者を出しながらも踏ん張り、味方の9回表の反撃を呼び込んだ。その直後の9回裏に、打ちとったはずの打球が内野安打となって同点を許すが、「延長戦になってもオーケーだ、と味方から声をかけられていたので」と意に介さない。延長戦はやはり「きつかった」と繰り返したものの、最速140キロのストレートとスライダーで凌いだ。ハートの強い好投手である。

「ベスト8は一つの目標だったが、本当にここまでこれるとは思っていなかった。

春日丘

戦(4回戦)に勝って、『いける』という思いになった。先輩・後輩間の仲の良さと、チームワークが最大の売りです」と桑原が誇るとおり、試合後のベンチ裏での

横須賀

ナインの喜びようは、それはもう凄かった。学年関係なく歓喜の声を挙げて抱き合い(顧問の先生ともガッシリ抱擁する選手多数)、とびきりの笑顔があふれた。

敗れた明和は、序盤で杉山彰麻が2打席連続タイムリーを放ち、鞍馬宏紀、鬼頭昌康が打たせて取るピッチングで試合を優位に進めた。9回表に逆転されたが、その直後の9回裏に執念の同点。延長戦では、渡辺寛暉らがダブルスチールを仕掛け成功させるなど、勝っていてもおかしくはない内容だった。
それだけに、試合後は悔し泣きする選手も。
球場を出てすぐのゲートで、父兄や同級生らの出迎えを受けた選手たちは、整列してあいさつに臨んだが、「胸を張れ」「笑え」と言われても、涙がこぼれてくる。だがキャプテンの伊藤圭祐は、部を代表して立派にあいさつを言い切った。「今まで野球部で自分たちを追い込んできたが、過労で倒れたり、何のために野球をやっているか分からないときもあった。それでも、ここ(ベスト16)までくることができて、このメンバーでやれた高校野球は僕の宝物です」。温かい拍手が鳴り止まなかった。

横須賀

明和ともに、失礼ながら「強豪校」というわけではないから、守備ではしばしばボールがこぼれ、エラーも少なくはなかった。それでも、決して緩慢なプレーによるエラーではない。この暑さの中で、集中力を切らさず、選手たちは全力でボールを追いかけた。

(文=尾関 雄一朗


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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