試合レポート

城東工vs河南

2010.07.22

2010年07月22日 舞洲スタジアム

城東工vs河南

2010年夏の大会 第92回大阪大会 2回戦

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城東工エース・杉本が11奪三振完封勝利

10日待っても変わらぬ城東工、「いつもどおり」。

 大阪大会が開幕して10日が過ぎた。
姿を消したチームもあれば、すでに2度戦っているチームもある。しかし、その中で、いまだに試合すらしていないチームがあるのも、また事実である。出場校数が180を数える大阪ならではのいびつな日程のアヤ。例年、そうしたチームが生まれるのだ。
 「そんな経験したことないからね。どうやったらいいのか分からなかった」とは、その当事者となった城東工科の見戸監督である。

 待たされるだけ、不安も募る。試合勘の鈍り、気持ちの入り方。メンタルの未熟な高校生ではそのコントロールが難しい。しかも、城東工科の相手・河南は一戦を戦っていて、大会にすでに「参加」していたのだ。

 しかし、彼らは変わらなかった。いつものように、試合に入り、いつものように、戦った。見戸監督は言う。
「まぁ、その中でも特別なことをせんかったからね。それが良かったと思う。試合の間が空くから何かをするのではなく、この期間、いつもどおりの練習しかしてこなかった」
 

 今までやってきたことを変えるのではなく「いつもどおり」。それが、城東工科が普段から目指している形でも、あるのだ。

1回表、先頭の岡部はカウント1-3からの5球目のストレートを鮮やかに振り抜き、左中間を破る二塁打を放った。犠打野選のあと、3番・山本の適時打で1点を先制。2回表にも、岡部は走者を置いて、左中間へ適時二塁打。幸先よく2点を先行し、城東工科はリズムに乗った。先頭の岡部は言う。
「試合に合わせるのは難しかったけど、みんなでいつもどおりやろうって言っていました。1打席目は1-3になったので、ボールが中に来たらセンター返しを狙おうと思っていました。打てて、ホッとしました」

 とはいえ、試合の中では、リズムが壊れる時もある。三者凡退で味方の攻撃が終わったり、守備にミスが起きたり、また、相手が好プレーを見せたり……。エースの杉本が抜群の立ち上がりを見せていたが、中盤以降は、攻められる場面も多かった。

 ただ、それでも城東工科はリズムを失うことはなかった。6回表に東野の三塁打と相手のバッテリーミスで1点を追加。その直後の6回裏、無死走者のピンチも、エースの杉本は落ち着いたピッチングを見せ、バックもそれに応えた。逆に8回表には2死から東野が出塁すると、7番・船橋のところでエンドランを成功させ、貴重な1点を奪った。

 9回表には河南にビッグプレーが飛び出した。城東工科先頭の9番・秋山は、セカンド左に痛烈なゴロを放つ。しかし、河南の二塁手・杉本がこれをバックハンドでさばき、ボールをグラブトスで遊撃手・石村に渡すと、石村は一塁へと転送、アウトにしたのだ。
プロ野球で、荒木・井端(中日)のコンビが見せて、話題となったプレーだ。昨今の高校野球でも強豪チームが良くやるプレーを河南が見せた。

 この鮮やかなプレーは劣勢だった相手チームの気をよくさせたし、スタンドもざわつかせた。球場を包みこみそうな気配さえあったプレーだった。

しかし、この時、城工ナインは手を叩いていた。相手の好プレーをたたえ、一緒に盛り上がっていた。そこが彼らの変わらぬ強さなのである。主将の山本はいう。
「いいプレーがでたことは、相手でも味方でも関係ない。相手に出ても、いいプレーはいいプレーなので、みんなで手を叩きました。いつものことなんです」。

 このあと、城東工科は、1番の岡部が二塁打で出塁すると、3番・山本が適時打を放ち、さらに1点を挙げた。
いいプレーにいつものように手を叩いた彼らは、相手の盛り上がりにも呑まれることはなかった。

 「試合の中で、流れが変わるときはこっちにミスが出たり、相手にいいプレーが出たり、そういうのが重なった時だと思います。そういう時はみんなで。この回やぞ、って声を掛けて、いつもどおりプレーをしようと言っています。今日はいい試合ができた」と山本は笑顔で語った。

 城東工科はいつもどおりだった。それは、この大会だけのことではなく、この1年もの間、「いつもどおり」をテーマに練習してきた成果である。

 10日待たされた城東工科は、「いつもどおり」、そして、勝った。

 

(文=氏原 英明


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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