報徳学園vs市川
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優勝を決めた報徳学園
春の近畿大会初優勝の報徳学園が、兵庫県勢最多出場校で「夏の甲子園」へ
2年ぶり14回目の優勝をめざす報徳学園と創立50周年の初優勝をねらう市川の決勝戦は、1回の攻防で試合の流れが決まりました。
先攻の市川は、1番・新見が、サード内野安打で出塁し、準決勝まで4試合に登板・16回2/3・被安打16・奪三振13・与四死球1・失点4と、まだ本調子でない報徳学園の3年生サウスポーエース大西から先制のチャンスを作ります。
しかし2番・宮木のバントは、前進守備のサード前に転がるゴロになり、5→6→3のダブルプレー。2アウト後、3番・西井もレフト前ヒットで出塁しますが、後続のバッターはショートゴロに倒れ、市川は2本のヒットを打ちながら、大西の立ち上がりをとらえることができません。
一方、右のオーバースロー①萬(ヨロズ)と右のサイドスロー⑩荒池の3年生2本柱で勝ち上がってきた市川は、ランナーを背負っても失点が少ない粘り強いピッチングで今大会からエースナンバー1をつけた萬を先発のマウンドに上げます。その萬の立ち上がりを、準決勝までのチーム打率が4割3厘の報徳学園打線が、見逃しません。今大会最多安打の1番・八代が、初球をたたいてライト前ヒットで出塁し、2番・谷も初球をきっちりバントで送って、報徳は2球で、1アウト・ランナー2塁のチャンスを作ります。
そして3番・中島(ナカシマ)のレフト前ヒットで、ランナー1・3塁とし、迎えるバッターは、報徳学園でただ一人の2年生レギュラー4番・越井。越井は、雨天順延となった前日に12時間以上のバッティング練習をした成果を発揮し、センター前にタイムリー。初回に先制点を取った報徳学園が試合の流れをつかみます。
今大会は、失点してもすぐに追いつく市川も3回表、準決勝までの打率が5割と当たっている8番・萬が、ライトオーバーの2ベース。9番・新里がバントで送って、1アウト・ランナー3塁と絶好の同点のチャンスを迎えますが、1番・新見がサードゴロ。2番・宮木が三振と報徳学園のエース・大西をとらえきれません。
続く4回も、先頭の3番・西井が2打席連続のレフト前ヒットで、ノーアウト・ランナー1塁のチャンスを作りますが、4番・亀谷の打席で、1塁ランナー西井の大きなリードを、報徳の強肩キャッチャー森田が見逃さず、三振を取った後、1塁へ牽制球を投げてダブルプレー。市川は自らのミスで、流れを変えることができません。
逆に報徳は4回裏、第1打席で先制タイムリーを放った2年の4番・越井が、左中間に運ぶ2ベースで出塁し、2アウト後、7番・木下のセカンド内野安打で、市川の先発・萬から、しぶとく2点目をもぎ取ると、6回にも2アウトから左中間を破る3ベースヒットで6番・森田が出塁し、7番・木下が2打席連続のタイムリー。
6回を終わって3対0と、報徳学園がリードを広げていきます。これに対して市川も7回表、1アウトから4番・亀谷がライト前ヒットで1塁に出て2塁を狙いますが、盗塁失敗。2アウト後、5番・小寺と6番・川原の連打で再び、ランナー1・2塁のチャンスを作りますが、8番・佐野へのショートバンド投球を、キャッチャーが少しはじいたのを見て、2塁から3塁に走った小寺が、報徳学園のキャッチャーから送球されたボールにタッチアウト。3連打を放ちながら、またしても無得点。結局、その裏にも報徳に2本のヒットとバントで、1点を追加された市川は、8回に右のサイドスロー荒池がリリーフし、3者凡退に抑えますが、万事休す。8・9回を3人ずつに抑え、しり上がりに良くなった報徳学園のエース大西の前に、7本のヒットを打ちながら4対0の完封負け。
3回目の決勝でも、得点を挙げることができませんでした。試合後、市川の徳永 伸寿監督は「1回の先制のチャンスに、送りバントのダブルプレーで硬くなり、いつもの野球ができなくなった」と振り返り、「報徳学園ナインは、春の近畿大会で初優勝した経験を生かし、緊張感のある決勝戦でも普段通りのプレーをしていた」と経験の差を勝敗のポイントにあげていました。
しかし、市川も決勝で敗れたとはいえ、萬&荒池の2本柱を中心に防御率1点台の投手陣が安定。高校通算94本のホームランを打ったスラッガー伊藤 諒介を擁し、春夏連続の甲子園をめざした神港学園に、準決勝で4対3(10回)サヨナラ勝ち。決勝戦も、報徳学園とともにノーエラー・無四球だったことは、見事な戦いぶりでした。雨天順延がなく、決勝と準決勝の連戦であれば、勢いを持続して戦えたかもしれません。報徳学園は、準決勝まで1年生右腕・田村 伊知郎が大活躍。4割打線に支えられ、本来の調子が出ていなかった3年生ピッチャー大西も、決勝戦は9回108球を投げ、被安打7・奪三振8の完封。エースの意地を見せました。
これで報徳学園は、今春から公式戦負けなしで夏の甲子園に出場。バントと走塁をしっかり決めて、しぶといバッティングで得点し、四死球の少ない投手陣を堅い守りで支え、無駄な失点をしない「報徳学園の野球」が、兵庫大会161チームの頂点に導きました。「今年のチームは、戦うごとに選手たちが成長し、進化している」と語る永田 裕治監督の言葉通り、兵庫県勢最多出場となる14回目の夏の甲子園で、さらにどのような進化をとげるのか? 甲子園の地元・兵庫代表は、第75回大会の育英以来、優勝校が出ていません。それだけに、永田監督が選手時代に優勝した第63回大会以来、29年ぶりに全国制覇をめざす「報徳学園の野球」に甲子園でも注目です。
(文=氏原 英明)
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市川 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ||||||
報徳学園 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 1 | 0 | X | 4 |
市川:萬,荒池―小寺 報徳学園:大西―森田
三塁打=森田(報)二塁打=萬(市)