大分工業vs別府羽室台
![](/images/report/oita/20100720001/photo01.jpg)
田中(大分工)
奪三振マシン、本領発揮!
この試合で大分工・田中太一が記録した最速は、テレビ中継のスピード表示で148キロ。これは春の九州大会予選・明豊戦で記録した自己最速タイ記録である。猛威を振るった昨年からは一変し、比較的おとなしく推移している今年の九州高校生ドラフト戦線だが、数少ない逸材右腕のひとりとして注目されているのが田中であり、この日も10球団約30人のスカウトが田中に対してスピードガンを向けている。
初回を圧巻の3者三振で立ち上がる。この日の田中はストレートが浮く傾向にあったが、前述のとおり球速・威力ともに充分で、8回までに17奪三振を奪った。140キロ台をコンスタントに記録するストレートに加え、最大の武器となるスライダー軌道の高速カーブは、通称“太一カーブ”。本人が「40点の出来」というように、万全のキレというわけではなかったが、17三振のうち6個がこの伝家の宝刀で奪った空振りによるものだった。
8回を終わり被安打はゼロ。快記録達成の期待も高まったが、9回の先頭打者に右前打を浴び、毎回奪三振とノーヒットノーラン達成はならなかった。それでも許した被安打はこの1本のみだ。
「最後は20奪三振でノーヒットノーランを狙ったのですが……」。
自己最高となる18奪三振の更新、さらには今年の佐賀NHK杯で、多久・宮島勇ニが記録した20奪三振の大台を意識したと田中。しかし、8回途中に足がつり、終盤はベストな状態ではなかったのだから、これは致し方ない。
17個のうち14個が空振り。3球三振が3度、1イニング3者三振は計3度。しかも先発全員から奪っているのだから、奪三振マシンの実力は存分に見せつけたといっていい。
田中は4月に肘を故障、実戦での復帰は6月後半と、調整が心配される中でのマウンドだった。「雨でスケジュールに狂いが生じる中、万全の調整とはいかなかった」ためか、“太一カーブ”はリリースポイントが定まらず、ストレートの浮きも目立った。左肩の開きが早く、重心が右足に乗りすぎるために上方向に起き上がってしまう傾向も見られる。
また、球種によって肘が下がってしまうクセも見られた。もともと横振り型の投手だった田中は、昨秋から冬にかけて右腕のスイング角を修正。より出どころを上方に持ってきたが、昨秋までの名残は主にスライダーを投じる時に垣間見えた。
しかし、指にかかった時の走りは抜群で「手元でのひと伸びが恐ろしかった」という相手打者も。肘のしなやかさも健在で、故障明けの大きなブランクは微塵も感じさせなかった。
本人はあくまでプロ志望。この日の17奪三振1安打完封は、視察したスカウト陣の胸中に、大きなインパクトを残すに充分な結果といえる。
(文=加来 慶祐)
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大分工 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 4 | ||||||
別府羽室台 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
大分工:田中 ― 佐藤 別府羽室台:森本 ― 首藤