試合レポート

日大藤沢vs藤沢西

2010.07.20

2010年07月19日 横浜スタジアム

日大藤沢vs藤沢西

2010年夏の大会 第92回神奈川大会 3回戦

一覧へ戻る

島仲(日大藤沢)

ガッツ溢れる日大藤沢に秘められたポジショニングのうまさ・カバーリングの徹底

横浜スタジアム2試合目。日大藤沢藤沢西の対決。筆者にとって日大藤沢は今春の県大会以来の観戦である。この時、目に留まったのがキャッチャーの島仲忠寛(3年)である。日大藤沢は伝統的に好キャッチャーを育てる土壌にあるが、彼も川辺(明大)以来の好捕手。彼は声を大きく張り上げて、ナインをがんがん引っ張る。そしてスローイングタイム1.8秒台を計測する強肩で、フットワークも良く、打撃も勝負強さを兼ね備えており、攻守ともに優れたキャッチャー。好選手に共通する存在感がある選手で、今年の日大藤沢は彼抜きでは語れない選手だろう。彼だけではなく、桐蔭学園の敗戦から選手たちが成長した姿を見ておきたかった。

藤沢西は昨年のレギュラーが多く残る好チーム。ノックを見るときびきびとした動きを見せており、また試合中、投手が投球練習をしている際には全員がベンチから出て、タイミングを測っているなど、なかなか意識が高いチームであった。試合は藤沢西の先攻で試合が始まった。

1回の表、藤沢西はツーアウトから四球で出塁したものの、無失点。日大藤沢の先発吉田 直也(3年)は上々の立ち上がりを見せる。
1回の裏、日大藤沢は藤沢西の涌井大樹(2年)を捉える。1番小林諭尚(3年)が右中間を破るスリーベースヒット。2番石橋賢人(3年)が歩いて、ノーアウト1,3塁となって3番篠原恭介(3年)のセカンドゴロで小村がスタート。セカンドはホームへ投げられず、一塁へ。日大藤沢が1点を先制する。ここで4番の島仲。甘く入った変化球を捉えて右中間を破るツーベース。一塁ランナーがホームインし、2対0とする。

更に3回の裏。ワンアウトから2番石橋がレフト前ヒット。3番篠原のセカンドゴロでツーアウト二塁となって、4番島仲。島仲は歩いて、ツーアウト1,2塁となって5番三戸がレフト前ヒット。二塁走者石橋がホームイン。さらに6番落合拓(3年)がレフト前ヒットで、島仲がホームイン。更に1点を追加し、4対0とする。

日大藤沢の先発吉田は好投。背番号7を着ける投手だが、右サイドスローからコントロール良く投げ分けていき、打たせて取っていく。

8回の表、藤沢西が9番小菅 望(3年)がサードのエラーで出塁。ツーアウトとなって3番本田航(3年)がレフト前ヒットでツーアウト1,2塁となって4番宮沢直人(3年)がライト前ヒット。二塁走者が三塁を蹴ってホームへ。藤沢西が1点を返すかと思われたが、ここからが素晴らしかった。ライトーファーストーキャッチャーと中継して、クロスプレーに。判定はアウト。日大藤沢、無駄のない連係プレーで点を阻止した。

8回の裏、先頭の島仲が四球。彼は選球眼がかなり良く、無駄な球は打たない。5番三戸雄介(3年)がセンターの頭を超えるスリーベース。島仲がホームイン。さらに7番片岡宏之(3年)の犠牲フライで1点を加え、6対0とした。
そして9回の表、ワンアウトからヒットとエラーでワンアウト1,2塁のピンチを迎えたが、後続をしっかりと抑えてゲームセット。日大藤沢が4回戦進出を決めた。

まさに対照的なチームだ。スマートな野球を見せる桐光学園に対して、日大藤沢は感情を表に出し、思い切りの良いチーム。二塁打を打てば、大きくガッツポーズ。そしてホームインすれば、ベンチ前でガッツポーズし、大きく喜びをあらわす。また外野手は際どい打球は躊躇すること飛び込んでいき、捕りにいくのだ。ガッツポーズすることは半ばタブーされており、有名な指導者、教育者になるほど禁止する風潮がある。

筆者はどちらかというとガッツポーズ肯定派で、必要以上にガッツポーズを否定するのは如何なものかと思っていた。なぜなら見ていて気持ちが良いのだ。彼らの笑顔を見ると、あれほど喜びをあらわすとこちらも楽しい気分になる。相手チームの配慮を考えれば、自粛するべきという見方を否定するつもりはない。ただ日大藤沢のナインの喜びようを見ているとガッツポーズは見ているものにとっても気持ちが良いものだと感じた。感情を表に出すチームに見られがちだが、このチーム、走攻守に渡って完成度が高いチームなのだ。1番~9番までしっかりと振り抜くことができており、打球はかなり速い。ずば抜けた長打力を持った選手は少ないものの、確実にミートできる選手が多く、なかなか侮れない打線なのだ。そして走塁もレフト前ヒットからでもホームへ還ることができており、無駄のない走塁が徹底できている。

一番素晴らしかったのが外野手の守備とポジショニング。打球に対しての反応が速く、落下点に入るのが速いし、抜けそうな打球を確実に捕球しているのだ。日大藤沢の守備陣ではなかったら、吉田投手は完封できなかっただろう。また無駄のない連係プレーとカバーリングも徹底されており、きちっとしたところはしっかりと締める良いチームであった。次は第一シードの桐光学園と対決。お互い完成度が高いチームだけに接戦が予想されそうだ。

(文=高校野球情報.com編集部)


[:addclips]

[:report_ad]

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.26

新潟産大附が歓喜の甲子園初出場!帝京長岡・プロ注目右腕攻略に成功【2024夏の甲子園】

2024.07.27

昨夏甲子園4強・神村学園が連覇かけ鹿児島決勝に挑む!樟南は21度目の甲子園狙う【全国実力校・27日の試合予定】

2024.07.26

名将の夏終わる...春日部共栄・本多監督の最後の夏はベスト4で敗れる【2024夏の甲子園】

2024.07.26

報徳学園が3点差をひっくり返す!サヨナラ勝ちで春夏連続甲子園に王手!【2024夏の甲子園】

2024.07.26

「岐阜県のレベルが上がっている」県岐商が2年ぶりの決勝進出も、岐阜各務野の戦いぶりを名将・鍛治舎監督が称賛!【24年夏・岐阜大会】

2024.07.25

まさかの7回コールドで敗戦...滋賀大会6連覇を目指した近江が準決勝で涙【2024夏の甲子園】

2024.07.24

享栄、愛工大名電を破った名古屋たちばなの快進撃は準々決勝で終わる...名門・中京大中京に屈する

2024.07.21

【中国地区ベスト8以上進出校 7・20】米子松蔭が4強、岡山、島根、山口では続々と8強に名乗り、岡山の創志学園は敗退【2024夏の甲子園】

2024.07.21

愛工大名電が今夏3度目のコールド勝ちでV4に前進!長野では甲子園出場37回の名門が敗退【東海・北信越実力校20日の試合結果】

2024.07.21

名将・門馬監督率いる創志学園が3回戦で完敗…2連覇狙う履正社は快勝【近畿・中国実力校20日の試合結果】

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.07.08

令和の高校野球の象徴?!SJBで都立江戸川は東東京大会の上位進出を狙う

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.27

高知・土佐高校に大型サイド右腕現る! 186cm酒井晶央が35年ぶりに名門を聖地へ導く!

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」