試合レポート

祐誠vs新宮

2010.07.07

2010年07月07日 久留米市野球場  

祐誠vs新宮

2010年夏の大会 第92回福岡大会 2回戦

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市川(新宮)

天の川に願いを

七夕、ちょうどこの時期は、梅雨前線が日本列島に停滞し、天の川が見えるかどうか、星空が気になる。
福岡地方で七夕の晴れ確率は、3年に1度ともいわれている。
その確率で晴れ渡った[stadium]久留米市野球場[/stadium]で、福岡ナンバーワン左腕の凄みが増してきた。
初戦の香椎戦で3安打13奪三振の完封ショーを演じた祐誠のエース左腕・坂田将人だ。

初回、先頭打者を味方の失策で、いきなりの出塁を許した。
しかし、全く動じることのないエースは、落ち着いていた。3番打者を遊ゴロの併殺に仕留めると2回からシフトをギアチェンジするかのようにどんどん凄みが加速していく。2回~3回だけでも4連続を含む5奪三振。
「4回を終了した時点でスコアボードのH(ヒット)が“0”だということに気付いて、少しは意識(ノーヒット・ノーラン)しましたが、いつかは打たれると思っていました(坂田)」というが、ホップするようなキレあるストレートと緩いカーブ、鋭いスライダーを織り交ぜたピッチングは、まさに“圧巻”。打たれる気配すら感じさせないほどのオーラが漂っていた。

6回2死から9番・豊福康太に絶妙のセーフティーバントを決められ、7回から後輩の吉村淳司にマウンドを譲ったが、6回を投げ、セーフティーバントの内野安打1本のみ。8個の三振を奪い、四死球もゼロ。
ほぼパーフェクトなピッチングに本人も「自己採点は80点・・いや90点です!」と手応えを感じている様子。「あと1つ勝って、まずは県大会出場が目標(坂田)」と気を引き締め直したが、着実に階段を上っていくその先には、もちろん“聖地”という七夕の願いが込められている。

新宮は初回、いきなりのピンチを迎えた。祐誠打線に3安打を集中され1点を献上し、しかも満塁。この場面で、6番・大隈慶修の放った打球は三塁線への長打コース。しかし、新宮の三塁手・市川奨馬が横っ飛びの好捕で併殺。この回のピンチを1点にしのいだ。
市川は3回にも祐誠の4番・大神翔平の頭上を越えるかと思われた強烈な打球をジャンピングキャッチ。この随所にみられるプレーは、練習してきたことをすべて出し切るという新宮ナインの一球に対する気持ちを象徴しているかのようだった。
8回表に5点を献上した新宮は、8点差のビハインドで、その裏の攻撃を迎えた。
そしてその先頭の打席に立ったのが2番・市川であった。この回からマウンドに上がった祐誠の2年生右腕・吉村淳司の初球を見事にセンター前に弾き返した。「とにかく繋ぎたかった・・・(市川)」試合後、溢れる涙が止まらない。
「この回、点を入れなかったらコールド負けという厳しい場面で、初球を積極的に振っていってセンター前。このチームの気持ちをみせてくれた一打だった」と試合後のミーティングで森谷史浩監督が市川を含めた3年生部員を称えた。その言葉に監督を囲んだ新宮ナインは数え切れないほどの涙を流した。

そして最後に監督から
「人生でも厳しい場面がある。そんな場面でもあの一打のような積極的な姿勢を持つように」。
その願いはきっと天の川に届くはずだ。

(文=PN アストロ


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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