百合丘vs橘学苑
![](/images/report/kanagawa/20100719001/photo01.jpg)
帽子を飛ばして力投する佐々木(百合丘)
やるとなすこと当たった百合丘、会心の試合で第一シードを下す
創部4年目、内野のダイヤモンドを取るのが精いっぱいというグラウンドで80人の部員がポジション別に3~4のグループに分かれて、それぞれ工夫しながら練習をしてきて昨夏はベスト16、秋はベスト8、そしてこの春はベスト4にまで進出して第一シードを獲得した橘学苑。
その戦いぶりが注目された初戦は県内一の伝統校ともいえるY校こと横浜商を接戦の末に下しその力を示した。
一方、百合丘は公立の雄として注目され、01年には関東大会にも進出してその夏に全国制覇する日大三を下したこともあるが、このところはやや低迷気味だった。それでも、夏には確かなチームに仕上げてくるので期待の試合だった。
やや変則気味の右サイドからスピードのあるストレートと高速スライダーが武器として今春ベスト4の原動力となった橘学苑の高長根投手。これをどう攻略するのかが百合丘のポイントだったのだが、早いカウントから積極的に打ってきた。
初回は得点こそできなかったものの3安打したことで、「いける」感触をつかんだようだった。
そして2回、1死から六番内田が三塁線を抜く安打で出塁するとすかさず二盗、内野ゴロで三塁へ進むと古谷の左前打で先制する。さらに、4回にも高橋、内田、青山と3連打して追加点を挙げた。
圧巻は6回だった。1死後内田が中前打すると、青山の右越二塁打で帰し、幸運な太陽安打や四球で満塁として、一番中山が左前へタイムリー。さらにスクイズと門脇の右前打などで5点を奪った。高長根投手を擁して失点は計算できると踏んでいた橘学苑としてはよもやの7失点だった。
それでも橘学苑は、この回0だとコールドゲームになってしまうという追いつめられた局面で海野の二塁打や、木下主将の意地の三塁打などで3点を返して食い下がったのは立派だった。
結果的には完敗という形になった橘学苑だったが石黒滉一監督は、「(第一シードだからといって)受けてしまったという気持ちはなかったと思います。3年生たちはここまで積み上げてきたものを自分たちが築いた歴史として後輩たちに伝えていってほしいです」と、肩を落としながらも選手たちと登ってきた階段を踏みしめているようだった。そして、「限られた条件と施設の中で、これだけ頑張ってきた選手たちです。みんな勉強の成績もよく、いい子たちばかりです。野球もこれで終わりではないという選手も多くいます。さらなる上や次を目指せる子たちなんです」と、やや目頭を熱くしながら3年生たちの頑張りを称えていた。
一方、百合丘は組み合わせが決まった時からこの試合は1年生の左腕佐々木投手でいこうということを決めていたというが、それがうまくはまっただけではなく、「高長根君のスライダーは追いこまれたらそう簡単には打てないだろうから、三球三振で終わってもいいから早いカウントから積極的に打っていこうという指示を出していたのですが、それに応えてくれました」と、攻守に読みが当たった形となった宮地洋人監督はさすがに嬉しそうだった。
「高長根君は一昨日、接戦ということもあって気合を込めて全力で投げ切っていたので、今日はまだその疲れもあったのかもしれませんね」と、中一日の相手のエースに対しても気遣っていた。
OBでもある宮地監督は中央大学在学時代から、当時は指導者がいなかった母校の監督を務め、そのまま監督を継続するために早朝から昼過ぎで仕事を終えられる職場に就職して監督を続けている。そういう意味では公立校ながら百合丘は監督の異動がないということも大きな特徴となっている。さらに、仕事の都合などで宮地監督が顔を出せない日を含めて日々の練習は後輩で教え子でもある小池健一部長が見ているというシステムだ。小池部長は小学校の教員から、高校野球の指導がしたいという思いで高校教員に転身した情熱家である。それに、さらにOBのコーチングスタッフが支えるという百合丘の結束は固い。
久しく眠っていた感のあった神奈川の公立の暴れん坊だったが、新鋭校ながら第一シードとなった橘学苑を倒したことでこの夏は、「百合丘を忘れるな」とばかりに強烈にアピールしそうだ。
(文=手束 仁)
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橘学苑 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 3 | ||||||
百合丘 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 5 | 0 | 0 | X | 7 |
橘学苑:高長根―真鍋 百合丘:佐々木、吉村―古谷