試合レポート

札幌第一vs駒大苫小牧

2010.07.19

2010年07月19日 札幌円山球場  

札幌第一vs駒大苫小牧

2010年夏の大会 第92回南海道大会

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佐々木監督(駒大苫小牧)

新人監督の苦い経験

たった1球だった。

8回裏、駒大苫小牧の攻撃は2死走者なし。7回からリリーフした2年生左腕の西島隆成は、2番の中山俊に対し、カウント3ボールとしていた。

次は1球ウェーティングだろう。

そう思った瞬間、中山は4球目をスイング。当たりはよかったが、ショートライナーに終わった。

「相手は0-3から打ってこないと思うはず。すきを狙いました。(攻撃の)きっかけがほしかった。あの球を狙うしかないなと」(中山)

だが、西島隆は7回にも2死無走者から四球を連発。その後に連打を浴びて2点を失っている。打順が中軸に回ることを考えれば、結果はどうあれ、待っていきたい場面だった。

この打撃について佐々木孝介監督は「勢いに任せました」と責めなかったが、札幌一からすればラッキー以外何ものでもない。四球の可能性があったのが、簡単にアウトを取れた上、この試合初めてとなる三者凡退のイニングを作れたことで、9回の攻撃につなぐことができた。
「0-3から打ってくれて助かりました。ああいうプレーがあったので、終盤は負ける気がしませんでした」(捕手・梅澤武寛)
すきを突くはずのたった1球が、流れを変えてしまった。

その9回の守りでも、駒大苫小牧らしくなかったのが外野の守備位置。2点リードの無死一塁、長打警戒の場面で外野の守備位置は浅め。その位置があだとなって続く杉本恭兵の右中間への打球に追いつかず、三塁打にしてしまった。三塁まで進めたため、9番の梅澤はスクイズ。同点のきっかけを与えることになった。
対照的に札幌一は深めの守備位置。9回先頭の宮崎啓誠の右中間の大きなフライに追いつくことができた。7番の杉本だったとはいえ、金属バット。打力の上がる夏の大会であることを考えると、悔やまれる守備位置になってしまった。

守備位置に加え、もうひとつ対照的だったのがタイムの取り方。
札幌一の菊池雄人監督は4点差に広がった7回2死一、三塁の場面で3度目の伝令を送り、タイムを使い切った。
「2点差に追い上げ、いけると思ったところで4点差になってしまった。5、6点差ついてからでは遅いし、ここでキレたら終わってしまう。これ以上離されたら苦しいと思ったので7回ですが、使い切りました」(菊池監督)
一方の佐々木監督は3回目のタイムを残しながら使わず、ようやく伝令を送ったのは9回に同点に追いつかれた後の2死一、二塁の場面。完全にタイミングが遅れた。
「まだ流れ的にもうひとつ、と思いました。(間を取る場面を)見抜けませんでした」(佐々木監督)
ともに伝令の後はピンチを脱しただけに、駒大苫小牧としては惜しまれる間の取り方になった。

だが、これらは監督としての経験によって見えてくるもの。
昨秋に就任したばかりの佐々木監督に多くを求めるのは酷だろう。だが、香田誉士史元監督の後を率いるだけに、こういった部分が求められてしまうのも事実。常勝チームゆえにハードルも高くなる。
佐々木監督が就任して、雰囲気は以前のものに徐々に戻ってきた。茶木圭介部長も復帰し、甲子園で躍動した、あの駒大苫小牧が復活する予感は少しずつではあるが漂っている。
だからこそ、この苦い経験を生かしてほしい。
現在の2年生はわずか4人。好素材の揃った3年生が抜ける新チームからが本当のスタート。今後、佐々木監督が、駒大苫小牧がどう変わっていくのか。
持ち前のチャレンジャー精神で、這い上がることを期待したい。

(文=田尻 賢誉


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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