試合レポート

畝傍vs奈良情報商

2010.07.16

mm2010年07月15日 佐藤薬品スタジアム  

畝傍vs奈良情報商

2010年夏の大会 第92回奈良大会 1回戦

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畝傍のエース・中矢が粘投をみせた

仕掛ける勇気。

 野球とは主導権の奪い合いである。
流れをいかにつかむかで試合は決まる。待っていても、流れはこない。圧倒的な個の力を武器にするのか、作戦を駆使するのか、方法論は様々あるが、いかに流れをつかんでいくかで勝敗は分かれる。

畝傍奈良情報商の対決は、実に、激しい主導権争いのゲームだった。
初回、奈良情報商は1死のあと、2番・大隅が内野安打で出塁すると、3番・森崎がバスターエンドランを敢行し、左越えの適時二塁打で1点を先行した。まさに電光石火。4番・石本以外が、この回、ファーストストライクを打って出たものだ。奈良情報商の仕掛け、これには主導権を握りたいとする気持ちが見えたものだった。

畝傍

も譲らない。二つの四球で1死・二、三塁の好機を作ると、ダブルスチールを成功させたのだ。適時打を待つのではなく、先に仕掛けた。そして、5番・栗山の適時二塁打で逆転。自力で流れを引き寄せて、試合をひっくり返した。

 1回表の攻撃を、奈良情報商・黒木監督が「うちは今日に限らず、試合では積極的に打つことを心がけてきました。それが初回にいい形で出た」と言えば、

畝傍

・百合監督は「うちは待っていても得点は取れないので、積極的に仕掛けました。いつも、心がけていることなので、あの盗塁も走れる選手ですので、普通のプレーなんです」。

 「仕掛ける」両者の攻防は1回から白熱したものである。
ただ、試合としては逆転した

畝傍

が主導権を握った。5回裏にも1点を追加。流れは

畝傍

にあった。

ところが、7回表、

畝傍

にミスが出る。1死から左翼の失策と死球で絶体絶命のピンチ。二死にこぎつけるが、ここですかさず、奈良情報商の1番・細川が二球目のファーストストライクを左翼にはじき返し、同点に追いついたのだ。

主導権は自ら勝ちとるものでもあるが、エラーや四球などで、明け渡す時もある。そこで奈良情報商の攻撃が積極だったため、同点への流れができたのである。

俄然、奈良情報商が優勢、8、9回にも好機をつかみ、追い抜きにかかった。
だが、追い抜けなかった。8回に一時的に降板した

畝傍

のエース・中矢が好投を見せ、奈良情報商にあった流れを食い止めた。

 9回裏、

畝傍

に千載一隅のチャンス。安打と内野ゴロの間に二死・二塁と得点圏に走者を進める。ここで打者は守備で途中起用されていた高橋だったが、ここで、

畝傍

が仕掛けた。代打・若井を送る積極策にでると、これを相手バッテリーが嫌い、四球で走者がたまる。9番は守備の上手い中村侑だが、ここでも百合監督は代打を指示。

その初球、四球を怖がった奈良情報商のエース森崎のストレートがわずかに高めに浮き、代打の上田が左翼へぽとりと落としたのだ。二走・栗山が生還、試合は決まった。

 「うちには三拍子そろった選手がいませんので、適材適所。守る人、走る人、打つ人と分けて使っています。ですから、あの場面は待っていてもしょうがないので、後がない気持ちで勝負を掛けました」と百合監督は代打策の成功をそう打ち明かした。
百合監督の代打策。いや、仕掛けていく作戦が見事にはまっての勝利である。

(文=氏原 英明


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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