横浜vs藤沢翔陵
![](/images/report/kanagawa/20100714001/photo01.jpg)
大石(横浜)
横浜の象徴
今年の横浜は弱い。
夏の大会前から、マスコミも、ファンもそう評価している。
なぜなら、秋、春の神奈川県大会で結果を残していないから。秋は初戦の2回戦で
に8対11で敗退。初回に7点を先行しながら、2回に9点を奪われる信じられない負け方だった。春は初戦となった2回戦こそ
城山を5回コールドで退けたものの、3回戦で
慶応義塾に延長12回2対4と競り負け。組み合わせに恵まれなかったとはいえ、2季連続で県内ベスト16にも残れなかった。秋に負けたとき、渡辺元智監督も、小倉清一郎前部長も「今までの横浜ならありえないことばかり」とあきれていたほどだ。
そうはいっても、横浜だ。夏には仕上げてくるだろう。
そんな期待を持っていたが、それは見事に裏切られた。初回は簡単に2死を取ったあとに3連打で失点。4番の鈴木健太郎には、カウント2-2からエンドランを決められた。攻撃では、3回の先頭打者の齋藤健汰が2ボールからの3球目のスライダーを当てただけのセカンドゴロ。打力のある選手なら狙い球を絞ってフルスイングし、打力のない選手ならボールを選ぶべきカウントで、ただ打たされただけの打撃。およそ横浜らしくなかった。
極めつけは、セカンドのキャプテン・大石竜太の守備。6対1と5点差をつけた直後の4回、先頭打者の何でもないゴロをはじくと、6回の先頭打者の平凡なゴロも捕球しそこない、2失策を記録した。大石は初戦で左ひざを痛め、きのうの練習でも同じ場所を痛めて万全の状態ではない。それでも、1年生からレギュラーとして活躍。唯一、甲子園を知る横浜の“顔”が凡プレーを連発するところに、今年の横浜の状況が見てとれる。その点を大石に問うと、こんな答えが返ってきた。
「エラーは故障の影響? そんなことはないです。気持ちが切れていた部分がありました。アウトにすることを考えればいいんですけど、うまく見せようというのがありました。やっぱり、あんなエラーはしちゃいけない。走塁も守備も打撃も完璧じゃないといけないのに、2つのエラーは弱さを見せてしまいました」。
だが、一方で、大石は「さすが横浜」という走塁を見せた。
6回無死一、三塁で三番の近藤健介は左中間への大きなフライ。三塁走者の木藤幸大は悠々ホームインしたが、同時に一塁走者の大石も二塁へタッチアップ。1死二塁となおも得点圏の場面を作り、四番の荒木翔平のレフト前タイムリーを呼んだ。
「深く上がったので、2つ(二塁)につなげてくるかなと思ったんですけど、ショートの位置を見たら(二塁ベースとの延長戦上に)まっすぐに入っていなかった。あれで行けると思いました」。
実は、これは甲子園での経験が生きている。
1年生時に出場した夏の甲子園の3回戦・
戦。
仙台育英の一番・橋本到(現巨人)はレフト前への当たりを打つと、ノンストップで一塁を回り、二塁打にしてしまった。横浜はこれをきっかけに失点。そのときショートを守っていたのが大石だった。
「あのプレーはこっぴどく怒られました。あれ以来、(自分が走者のときは)常にショートの位置を見て、狙うようにしています。1年生のときにはできていなかったこと。常に先の塁を狙う意識がありますし、自信があります」。
スキのない、したたかな“横浜らしさ”をいかにチームメイトに浸透させることができるか。
スタメン9人中、下級生が4人を占める若いチームだけに、大石の役割が重要になる。
「今年のスローガンは『泥くさく』。甲子園に行った経験をみんなに伝えることが自分の役目だと思います」。
「先輩に迷惑をかけないようにと必死だった」という2年前。
エリート集団の横浜にあって誰よりもユニホームを汚していたのが大石だった。チームとして結果を残していない今季。だが、スローガン通りのプレーができるようなら、スキはなくなってくる。
その雰囲気を演出するのは、チームの顔である大石。“らしさ”の見えない横浜を見るのはさびしい。キャプテンが先頭に立って2年前のプレースタイルを見せ、“らしさ”を取り戻してほしい。大石なら、それができるはずだ。
(文=田尻 賢誉)
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横浜 | 0 | 0 | 0 | 6 | 0 | 3 | 0 | 9 | ||||||||
藤沢翔陵 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 |
横浜:齋藤、篠崎、山内―近藤 藤沢翔陵:高木、高秀―永島