試合レポート

須賀川桐陽vs福島明成

2010.07.12

2010年07月11日 あづま球場  

須賀川桐陽vs福島明成

2010年夏の大会 第92回福島大会 1回戦

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小針(須賀川桐陽)

兄の思いを背負って挙げた完投勝利

 9回表、先頭打者にヒットで出塁を許したが、次の打者を打ち取りショートゲッツーで2死。勝利まであと1アウト。先発・小針朋晃(3年)は「2アウトになって、三振を取ろうとしました」と回想する。投げ急いだ結果、四球とエラーで走者を許し、2死1、2塁。すっきりとはいかなかったが、最後は「思いっきり投げた」ストレートでショートゴロに打ち取りゲームセット。須賀川桐陽が5-2で勝利した。

 須賀川桐陽の初戦のマウンドを任された小針は背番号10。岩渕雅士監督は「一番、コントロールが安定している。ウチの2枚看板の1人ですから。コントロールと変化球が通用するだろうと思って。展開によっては1番も考えていたけど、こういう展開になったので最後まで投げさせた」と話した。

 福島明成

に7安打2失点で完投した小針は「内容は悪かったんですけど、勝てたことは大きい。うれしいです。ホッとしています」と白い歯をこぼした。先発を言い渡されたのは先週の日曜日。「去年のベスト16を越えるためには1回戦が大事。(この一週間は)責任を感じて授業に集中できなかった」と振り返る。プレッシャーもあったが、「週末の練習試合と同じように調整した」。前日はボールを投げず、気持ちを作った。

 この試合、幾度かピンチがあったが、その時はこの言葉を思い出した。
「深呼吸をして、周りに声をかけろ」。
兄・拓真さんがこの日の朝、メールしてくれたアドバイスだ。ピンチを迎えるたびに、マウンドで深く息をして、野手に声をかけた。最後の9回2死1、2塁でもそうだった。アドバイスを実践することで冷静になれた。
拓真さんは現在、日大工学部の3年生。今はプレーしていないが、3年前の須賀川桐陽のエースだ。3年春、県大会で4位になり、夏のシード校になった。しかし、その夏は、初戦で散った。それも、0-16のコールド負け。当時、中3だった小針は学校があったため応援に行けなかったが、結果を聞いた時は驚いた。その時、兄は肩を痛めており、先発したもののわずか11球放っただけで無念の降板を強いられた。

 野球を始めたのは中学1年の時。小学校ではサッカーをしていたが、「サッカーに飽きて、兄が野球をやっていたんで」という理由から。中1の秋から投手に。兄の影響もあり、須賀川桐陽に進学した。投手を希望したが、最初はショートなど内野を守った。マウンドに戻ったのは、2年秋。ずっとやりたかったピッチャー。理由は「一番目立つから」。岩渕監督からも「やってみろ」と言われ、本格的に始めた。

 兄とは家の庭でキャッチボールをし、技術的なアドバイスをもらう。「体重移動や軸足にしっかりためろとか言われます」。“専属コーチ”として弟を教える兄の心の内には、きっと、彼の最後の夏が残っているのだろう。

 そして迎えた最後の夏。大事な初戦で先発マウンドを踏んだ。「11球以上投げたので、兄に勝ったなと思う」と、ちょっとおどけてみせた。一緒に住んでいるが、お互いの時間が合うことはなかなかない。それでも、会ったらこう言うつもりだ。
 「やったぞ。お兄を越えたから」――。

(文=高橋 昌江


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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