試合レポート

飾磨工vs上郡

2010.07.11

2010年07月10日 明石公園野球場  

飾磨工vs上郡

2010年夏の大会 第92回兵庫大会 1回戦

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小田,サヨナラ打を放つ(飾磨工)

クラブ活動としての高校野球

 近畿では10日、大阪、兵庫、京都、奈良の4府県で開幕。その中から明石球場の兵庫大会に足を運んだ。
兵庫大会の開会式は進行が早い。出場161チーム全てが来るわけではないが、前年優勝の関西学院、準優勝の育英を除く71校が4校ずつ一列になって行進。
1校ずつが行進する大阪などとは違い、わずか15分で行進は終了。式全体でも40分弱だった。熱中症患者が増加している昨今。練習で鍛えている高校球児といえども、炎天下で水分補給なしに長時間の立ちっぱなしは体にかなりの負担がかかる。式典の簡素化は今後もどんどん奨励していくべきだと思う。

 試合に先だっての始球式には須磨友が丘高校3年の八木かなえさんが選ばれた。八木さんは高校からウェイトリフティングを始めたが、全国高校選手権2連覇、世界選手権入賞など1年生の時から目覚ましい活躍を見せた。そんな八木さんの始球式はキャッチャーの手前でワンバウンド。「ちょっと悔しかった」とはにかんだ。

ウェイトリフティングと野球ボールを投げることの共通点を訪ねると、
「集中力と瞬発力」と答えた。また高校野球では一発勝負の部分も似ているという。7月16日で18歳になる八木さんの次の目標は『高校記録の更新』。
緊張するタイプの自分にとって、とても大きな経験になったと自らを振り返った八木さんは、「選手のみなさんも目標に向かってがんばってください」と笑顔で戦いに挑む球児にエールを送った。

 さて開幕戦は上郡飾磨工の対戦。この勝者と2回戦であたる神戸国際大付のナインも熱心に見守っていたが、延長14回の激闘の末、飾磨工が9番小田健太(3年)のレフト前タイムリーでサヨナラ勝ちを収めた。
「あー、2時間半も試合するとは思わなかった」。
試合後のベンチ裏、飾磨工の3番ライト・金山孝弘(3年)そう言って仰向けに倒れた。延長戦に入り、両脚が痙攣していたのだ。

 

渡邉正監督が近付くと「これは酸素カプセルに行かなあかんな。(2回戦まで)中2日で、こんなんでどうしよう」と笑った。倒れていた金山も笑顔。173球を投げ抜いたエースの境裕一郎(3年)など、みんな疲労困憊のはずだが、選手たちの充実感がそう思わせなかった。
その源には選手の自主性がある。
「うちの理想はノーサインの野球。選手が自分で考えてやりなさいと言っています」と渡邉監督は話す。

 実際、この試合も選手が送るのか、強行策で打つのかを選手たちが自分自身で判断していた。さらにサヨナラの場面は2塁走者だった代走の三浦大幸(3年)は完全にアウトのタイミングで本塁へ突入。指示をした3塁コーチの黒田陵(3年)は上郡外野陣の動きを見抜いていた。返球は思惑どおりそれて三浦はサヨナラのホームを踏んだ。
「一応、バントとエンドランのサインはあるのですが、私自身もめんどくさがりなので、すぐにジェスチャーとして出てしまう。あの場面もアウトのタイミングだけどGOしかなかった」と渡邉監督も無意識に腕を回していたようだ。

 そんな飾磨工の自主性は練習から実践しているという。練習メニューは基本的に選手任せ。
「ノックの時に私がやるのか、選手が自分達でやるかは私が尋ねます。私がやらない時は見ているだけ」と渡邉監督。中2日での2回戦も「神戸国際大付とやるみたいですよ」ととぼけた。
選手の自主性、監督のひょうきんなキャラクターにツッコミを入れる姿。それがこのチームの神髄のような気がした。
私学の鍛えられた強豪校では中々見ることのできない、クラブ活動としての高校野球。それを見ることができるのが夏の大会ならではの特徴でもある。

(文=松倉 雄太


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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