試合レポート

鷲宮vs新座柳瀬

2010.07.10

2010年07月09日 大宮公園球場  

鷲宮vs新座柳瀬

2010年夏の大会 第92回埼玉大会 1回戦

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グランド整備をする鷲宮野球部員

命がけのグランド整備

球場が、どよめいた。
プレーで、ではない。
鷲宮の控え選手たちのグランド整備をする姿を見て、スタンドの雰囲気が変わったのだ。
開会式直後の試合のため、スタンドには各校の父兄の姿が目立ったが、中には感嘆の声とともに、こんなことを口に出している人もいた。
「あれをウチの1年生に見せたかったわねぇ」。

試合前のシートノック終了の合図と同時に、鷲宮の控え部員たちは猛ダッシュでグランドに飛び出す。そして、あっというまにダイヤモンドを占領。地面と胸を平行に近い姿勢にまで低くし、素早く、丁寧にトンボをかける。その勢いに、しばらく新座柳瀬の部員たちは入り込む余地がなかったほどだ。試合は始まる前だったが、この姿だけでスタンドを味方につけ、試合の流れをも作り出してしまった。

4月の東部地区予選後、部員間のいじめが発覚して対外試合禁止の処分を受けた鷲宮

出場が決まっていた春の県大会は辞退せざるをえなかった。処分が明け、夏の大会の出場は認められたが、部員の中には「大会に出るべきではない」という者もいた。不祥事後、初の公式戦。しかも開幕試合。これまで声援を送ってくれていたファンが、同じように応援してくれるのだろうか……。そんな不安もある中での試合だった。

だが、試合前の数分間だけでその不安は消えた。
それだけ、グランド整備のインパクトが強かったのだ。スタンドからは、いつもどおり「鷲宮がんばれ」という声援が飛んでいた。

実は、大会前にこんなことがあった。
いじめ発覚後、高野連からの処分が下った5月7日までは全体練習を自粛。練習は選手個々による自主練習だけに限定された。その間もグランド整備はしていたのだが、やはりいつものグランド整備とは違う。いつのまにか、セカンド後方の地面に数本のひびが入っていた。
「やっぱり、グランドは正直ですね。それをあらためて教えてもらいました。整備を大切にする鷲宮ですから、生徒はショックだったと思います。でも、そこでこう言いました。『このグランドはお前らの心と一緒だぞ。そういうものが正直に出るんだ』と」。(柿原実監督)
心が乱れているから、心が緩んでいるから不祥事も起きる。グランドも荒れる。
もう一度、原点を見つめ直さなければいけない。先輩たちから続く伝統をここで途絶えさせるわけにはいかない。グランド整備の重要性を全員が実感した。
鷲宮らしいグランド整備とは何か――。
本質を見直すことで、今までのような整備も戻ってきた。

1996年4月から昨年3月までチームを率いた高野和樹前監督(今年4月に上尾に異動)は在任時、グランド整備についてこう言っていた。
「低い姿勢、下半身でやることを意識させています。『本当に平らにしようと思ってするもんだ』と。それに、こうやっていれば野球にもつながると思うんです。ピッチャーでもバッターでも“わる”姿勢が大事。今の子は股関節が硬い子が多いですから、これだけでも少しは違うと思います」。
高野前監督時は全体練習終了後に30分かけて整備をし、さらに翌朝、朝練習をしないで7時20分からもう一度グランド整備するほど徹底していた。
「いろいろな方にお世話になってできたグランドなので、埼玉県のどの学校よりもきれいなグランド、しっかりしたグランドにしようというのが目標。選手たちには、『グランド整備は命がけでやらなければいけない』と話しています」。

グランド整備を見るだけで、どんなチームかわかる。ただやっているのか。感謝の気持ちをもってやっているのか。野球につなげようと思ってやっているのか。
鷲宮のグランド整備には、感謝の気持ち、平らにしようという気持ちの他に、勢いまでももたらす雰囲気がある。

まさに、全国の高校へのお手本。
グランド整備だけでも見る価値があります。
ぜひ、生で鷲宮のグランド整備を見てください。
スタンドで、思わず父兄の方がもらした言葉の意味がわかるはずです。

(文=田尻 賢誉


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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