試合レポート

宇治山田商(三重1位)vs大垣日大(岐阜2位)

2010.05.24

2010年05月22日　小牧市民球場　

宇治山田商(三重1位)vs大垣日大(岐阜2位)

2010年第57回春季東海地区高校野球大会準決勝

大垣日大・阿知羅

宇治山田商、驚異的な粘りで延長12回逆転サヨナラ

　大垣日大が５回、六番小尾の右前打から２四球もあって１死満塁とし、ここで一番富田の一塁手強襲の打球（記録は、二塁ゴロ）や暴投に長岡のタイムリー打などで３点を奪って逆転。試合展開としては、４回から葛西投手をリリーフした阿知羅が抑えきって大垣日大がそのまま逃げ切りそうだった。

　しかし、宇治山田商は粘り強く諦めていなかった。８回に１死一塁から九番椛谷が右線二塁打し、中継が乱れる間に一走が帰って１点差。そして、９回はエンドラン失敗の盗塁死で２死走者なしとなりながら、五番中川が右前打で出ると続く大西が思い切りよく初球を叩いて中越三塁打して土壇場で同点に追いついた。

　延長に入ってからは、大垣日大が10回に一番富田が無死で安打したが生かせず、宇治山田商も11回に１死一塁二塁でサヨナラ機を迎えるがあと１本が出なかった。こうして迎えた延長12回、大垣日大は先頭の八番小島が右前打するとバントで送り、富田も三遊間を破って１死一三塁。ここで、大垣日大阪口慶三監督は長岡にカウント０―３からスクイズのサインを出したが、それに応えた長岡が巧みに一塁線に転がした。さすがに勝負どころで強い大垣日大というところを示したかという感じだった。

ところが、それ以上に宇治山田商は粘り強かった。その裏、１死後八番西井が中前打で出ると椛谷は三塁前へバントし２死二塁。前日２本の本塁打を放つなど３長打で３打点と大活躍だった玉川は四球で一二塁。二番伊藤悠はファーストストライクを狙い打って右中間を破る二塁打となり二者が帰って逆転サヨナラとなった。

劇的なサヨナラ勝ちに宇治山田商ベンチは優勝したかのように大騒ぎだったが、いつも冷静な中居誠監督もさすがにいくらか興奮気味だった。
「９回もそうでしたが、12回も２死になっても諦めないでやってくれた気持だと思います。決めるとしたら伊藤かなと思っていたのですが、その通りに打ってくれました。ファーストストライクから積極的に行けということだけは伝えていました」。
逆転サヨナラ安打した伊藤悠も、「２アウトになってもベンチでは誰も諦めていませんでした。９回も２アウトから追いついていましたから、絶対いけると思っていました」と思いを語っていた。

宇治山田商としては、打った伊藤もさることながら、12回にスクイズで突き放されてマウンドを降りたものの、１６０球近くを投げた連投の江川の好投も大きかった。中居監督も、「江川が２日間でこれだけ投げたことは恐らく初めてですけれども、夏を見据えてスタミナということを考えると収穫です」と、２年生エースの成長を評価していた。また、その後をしっかりと押さえた鈴木崇投手も、大事な場面を抑えられたことがその裏の反撃に繋げられたということで大いに自信になったであろう。

前日、東邦との大一番を制した大垣日大は、今や完全に岐阜県をリードしていく立場となっているが、今春のセンバツベスト４の力は十分に示したといえる。やはり、今夏も岐阜大会の中心となっていくであろう。

（文＝手束仁）

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