【特別企画】 高校スポーツのあした(3)
独占インタビュー 第46回 【特別企画】 高校スポーツのあした(3) 2010年05月25日
5、キャリアの逆転現象
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【国分先生】
「佐藤」 国分先生、かつて「雑草軍団」っておっしゃった時代があったでしょう?
「国分」 はい、はい、ありました。(笑)
「佐藤」 ねぇ。いや、あの、チームに対してのタイトルの付け方、そして、その的確なタイトル。雑草というだけで、私たちは踏まれても、踏まれてもはい上がるんだと。片方は綺麗なバラかもしれないけれど、雑草だって強く、たくましいところで、綺麗どころと勝負するんだとかね。そういうイメージがあるじゃないですか。私、あの時、いやーと思いましたね。チームとして今年のテーマっていうかね、そうやって選手たちに希望を持たせていくっていう、あれはずいぶん、参考にさせていただきましたよ(笑)
「国分」 そうですか(笑い)やっぱりね、時代が今、何を求めているのかってことも、指導者っていうのは大事じゃないのかなと。あの頃ね、村田兆治とかね、要するに雑草っていう言葉がひとつの時代の流行語っていうのかな、スポーツ界でね。踏まれても、踏まれても、ケガにも打ち勝っていくっていうので。たまたま、うちもその時は、宮城県の選手が圧倒的で、岩手県の子が一人だけいたのかな。
その、県でも3位のチームが最高だったんですよ、宮城県で。だから、雑草がいいのかなと。片方(八王子実戦)に大林素子(当時、八王子実践)がいたから、尚更。片方が全日本の中学時代に日の丸を付けた選手が6人中5人だったんですよね、レギュラーメンバーの中で。これに対抗するには、やっぱりこの言葉だと。そうすると、世間の大衆も俺たちの応援に回ってくれるんじゃないか、って考えでね(笑い)
「佐藤」 先生ね、たぶん、そういう風なテーマを付けるということは、キャリアの逆転現象を狙っているはずなんですよね。中学校の時、あの人たちは私たちよりも上よ、と。だけど、高校3年間で、私たちは逆転して抜きます、と。そういう風な逆転現象、私はキャリアの逆転現象をはからないといけませんよ、と。ただ、先生の「雑草軍団」の一言、あれは、先生のインタビューと雑誌と両方で拝見してね、チームとして、先生には先生のバレーボールのカラーがお有りでしょうけど、今年のチームはこのテーマでなきゃ、戦っていけませんよ、と。そういう作り方がすごく上手だな、と思いましたね。
「国分」 いやぁ。でも、先生の今年の(インターカップの)新聞記事を読んでっけども、最後の5分間でね。
「佐藤」 でもね、先生、それはね。野球でも1回戦から始まって、1つ勝てば違うでしょ。2つ勝てばもっと違うでしょ、選手。どうですか?
「佐々木」 えぇ、全然、変わっていきます。
「佐藤」 3つ勝つと、10ヶ月前に教えたことだって、出てくるじゃないですか。この高校生っていうのは、だから、面白いんですよねぇ。
「国分」 ねぇ。いや、本当にね、大会の始まった初日と終わった日っていうのは、同じ人間かって思うくらいにね。
「佐藤」 先生もそうでしょ!
「国分」 はい、そうですよ!1つ勝つに従ってね、ピカピカと自信めいたものがね、こう、くるんですよね。あれがやっぱり指導者の辞められない魅力じゃないですかね。
「佐藤」 ですね。そういう風にして、選手たちも頑張ってくれると、私なんかこう、練習であんなに出来ないことが今やってくれているぞと、泣けてくるんですよ、感動して。選手から感動をもらってね。その数が多ければ、多いほど、それが結果につながっているのかなと。今年なんかは、ちょっと、つらいチームだったんですけど、言っている通りに進んで、選手たちが自分たちで感動してしまって、試合が終わる前から涙流しているっていう場面があってね。いやぁ、まさにね、このアマチュアスポーツの原点に立ち返られたかなっていう、非常に嬉しい思いをしましたね。
6、試合中の監督の役割
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【佐藤先生】
「国分」 久夫先生の(ウインターカップ)決勝戦のニュースなんか見ているでしょ、あれを見ているとね、私なんかが思うのはね、かつて、能代の加藤さんが(能代工男子バスケットボール部元監督・加藤廣志氏)埼玉国体で初めて全国優勝した時、自分がね、こんなベンチにドンと座っている場合じゃねぇ、つってね、観客席に向かって、「能代を応援してくれー」って言ってね、逆転勝ちしたあのシーンをね、この間の選抜大会の決勝の先生の顔を見るとダブってね。
「佐藤」 バレーはそれ(ベンチを立ち上がっての指導)、できるんですか?
「国分」 バレーはできますけどね。
「佐藤」 選手と一緒にしゃべれる?立って歩いて指導できる?
「国分」 できるようになったんです。そうなったんですね。
「佐藤」 先生の時(指導していた時)はダメだったんでしょ?
「国分」 私の時はダメでした。最後の2年くらいはできたんですかね。
「佐藤」 あぁ、そうですか。
「国分」 でも、長い習慣で、監督というのは、ドンと座って状況判断を間違わないことしかないんだと。そういう風にずっと思っていましたのでね、最後、2年間くらいは立って指示も出来るようになったんですけど、すぐにはできませんでしたね。
「佐藤」 野球はどうなんですか?
「佐々木」 野球はベンチにいなきゃいけないので。
「佐藤」 外に出ちゃいけない?
「佐々木」 出ちゃいけないですね。伝令を使うとか。直接出来ないので、ゲーム中のアドバイスというのが。
「佐藤」 あぁ。
「佐々木」 伝令をうまく使わなきゃいけないというのも。
「国分」 佐々木先生ね、私、ずっと甲子園を見ていて、疑問に思ったのは、こうグラウンドがあるでしょ。ここが一塁か。ここが二塁。ここに三塁ありますよね。ここにホームがあって、両方にベンチがありますよね。先生、いつもここ(外野側)にいますよね。
「佐々木」 ほとんどの監督こっち(バックネット側)にいるんですけど、私いつも端にいるんです。
「国分」 監督さんによってはここにいる人もいれば、真ん中に蔦さん(池田高元監督・蔦文也氏)のようにここに座っている人もいれば、ここに座る人もいるんだけど、何故、先生はここ(外野側)にいるんですか?
「佐々木」 基本的にはですね、ここにバッターボックスがあるので、監督さんってサインを見られたくないために、この後ろ(バットケース)に隠れるんです。それでいつもみなさん、こっちにいるんですけど、私ですね、ここに三塁コーチャーがあってですね。
「国分」 ここにありますよね、コーチャーボックスがありますね。
「佐々木」 最後、判断する時、実は私がアドバイスしているんです。最後は私が判断するからと言って。回すか回さないか、私が判断しているんです。
「国分」 うん、うん。
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【佐々木監督】
「佐々木」 したがって、こっち(バックネット側)にいないでですね、こっち(外野側)に来ているんです。
「国分」 なるほど。それが理由。
「佐々木」 はい。
「国分」 私、どこに監督さんが座るのかって、すごく興味があってね。
「佐々木」 あと、甲子園ですね、位置的にベンチがすごくこっち(バックネット側に寄っている)なんです。なので、バッターが監督を見るたびに、こうやって(体をすごくひねって)見なきゃいけないんです。あっち(外野側)だとパッとすぐ見られるということもあるので、位置的な問題もあってですね。
「国分」 なるほどね。
「佐藤」 先生は、サインは出すの?試合中にサイン。
「国分」 出しません。ほとんど。
「佐藤」 要するに、選手の判断?
「国分」 はい。
「佐藤」 でも、それだけもう練習しているわけでしょ。
「国分」 まぁ、自分ではそう思っているんですけども。
「佐々木」 バスケットってサイン出すんでしょうか?
「佐藤」 いや、あんまりないですね。まぁ、苦しい時なんかは、このオフェンスプレーとかっていうのでありますけど、あんまりないですね。サイン出していたら遅れる、どうしても。野球でバッターが構えていて、構えた瞬間にバントってサイン出してもできるわけない。それと一緒なんですよ。だから、選手の判断が最優先であって。
「佐々木」 ゲーム中にされることって何が多いんでしょう?バスケットの場合。
「佐藤」 ないですね。タイムアウトっていうのが取れるので、それ以外は。タイムアウトだって競っていたら耳になかなか入らない。だから、先生と同じ、選手の判断。その判断が監督と一緒になればいいと。そういう練習をするんだと思うんです。
「佐々木」 私、若い頃、選手に判断をさせなかったんです。結局、考える能力あるのに邪魔をしていたんですけど、どうやったらその力を養われるか、意識してやられていることとかってありますか?
「佐藤」 間違ってもなんでも、とにかく自分の考え、人の考えを合わせることというのはもう、毎日うるさいですね。技術の上手い、下手でなくて。それを常時、どんな時でも訴えていって、考えながらやっていくと、最後は高校3年間でひらめきとか感覚に変わっていくんですよね。
「国分」 うん、うん。
「佐藤」 そのひらめきとかで、一瞬のところでわかっちゃうっていうね。判断っていうのは、時間がかかりそうなので、パッとひらめいていくる、パッとわかるというところまで持って行く。そういうのが、一番時間がかかる。
第4回に続く【全8回】