五條vs橿原
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田原監督(五條)
カバーリングの勝利。
野球のプレーの中で、カバーリングほど無益なものはない。
来るかどうかも分からないモノにために、体力を使うことに意味をあまり多く見出せない。カバーリングが直接、試合を分けることなんて、そう多くない。
しかし、このプレーにこそ、チーム力の違いを感じてしまう。
ある指導者は言う。
「カバーリングしている方がエラーは減る。いてくれるって思うから」。
また、ある指導者は言う。
「自然とするもんでしょう、カバーリングって。公式戦でどれだけできるかは、普段からどれだけやっているかやと思います」。
五條のカバーリングは良かった。特に目立ったのは捕手・田中優と右翼手・上田で、彼らは試合開始から一度たりとも、手を抜くことはなかった。
彼らのカバーが生かされることはなかったのだが、彼らはまさに「黙々」と、実践し続けたのだ。
さて、試合の方だが、両チームともに、複数投手をつないでの総力戦での戦い。
五條が先制し、 橿原 がクリーアップの連打で逆転する。さらに反撃に出た五條は相手のミスに乗じて再逆転。5回表には2本の長打を集めて、貴重な3得点で突き放したのだ。
五條は7回からエースの日下を投入。実は、日下は絶不調だったのだが、7回を乗り切ると、本来に近い形でストレートが冴え、カーブ、スライダー、チェンジアップを巧みに使い分けだ。3イニングを無失点。エースの復調とともに、チームは接戦を制したのだ。
日下は「試合の中で修正できたのが良かった。公式戦なので、先発ができなくて、悔しいという気持ちはないですね。みんなが投げてくれるので、自分も助かるという気持ちで投げてます。今日の途中から良かったんで。この気持ちを大事に、明日の練習に取り組みたい」と笑顔を見せた。
彼らの気持ちがつながったのは。カバーリングの影響が出たからだと決めてしまうのは早計だが、チーム内に、まとまりが出始めているのは、紛れもない事実だろう。
「練習の合間、合間は、常に速く動くことを意識している」という尾中主将は、カバーリングについて、こう続けた。
「練習試合からもずっと意識してやってきました。公式戦だからというのではなく、自然とできました」。
橿原 がいいチームなのは誰もが認めるところである。
ただ、きょうの試合だけは五條のカバーリングが良く、そのまま、彼らが勝った。
カバーリングの勝利。チームワークの勝利だと僕は思っている。
(文=氏原英明)
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