修徳vs成立
![](/images/report/tokyo/20100419001/photo01.jpg)
三ツ俣(修徳)
快腕vs豪腕の140km/h対決、延長13回修徳がサヨナラ勝ち!
土曜日に予定されていた試合が雨で流れて、この日に組み込まれた。東京都を代表する速球派投手同士の対決ということもあって、ネット裏には多くのスカウトも集まった。また、試合は延長13回で3時間近くに及んだが、見ごたえのある投手戦となって好試合だった。
延長に入って 成立学園 は10回無死一二塁、12回にも無死で先頭打者の一番成田君が二塁打するなどして突き放す好機を得るものの、いずれも攻めきれなかった。修徳も11回には1死一塁で併殺、12回も先頭の鳥海君が内野安打で出塁し、バントで二塁へ進めながらも後続が打ち取られた。こうして、両投手の出来からしても、もしかしたら15回で引き分け再試合になるかもしれないなという気になってきた13回裏、修徳は一番からの好打順だ。下位打線と西潟君の力関係から見ても、修徳としてはこの回に何とかしたいところだった。
この回、先頭の藤谷君は三ゴロに倒れたものの、二番池田君が四球で出塁。ここで、3回に同点2ランを放っている菊入君だ。
菊入君は捕手としても、10回に無死一二塁から鋭い矢のような牽制球で二塁走者を刺すなどしてピンチを救っている。気持ちは充実していた。その初球、「ここは、スライダーしかないと思っていましたから、最初から狙っていました」という通り、ドンピシャリのタイミングで打った会心の一打だった。
菊入君は、この試合で3打点、6回の1点は三ツ俣君の左翼ソロアーチで、修徳はまさにバッテリーでもぎ取った勝利でもあった。もっとも菊入君は、「最初の2点はボクの責任で取られたと思っていましたから、3回はとにかく三ツ俣につなごうと思って無心で振りました」という気持ちで、リードと暴投後逸などを含めた失点の責任を感じていただけに、気持ちを盛り上げる一発だったともいえよう。
見る側としては、好試合だったが、当事者としてはさすがに疲労感は否めない試合でもあった。修徳の鳥山泰孝監督もサヨナラ勝ちに喜びながらも開口一番、「疲れました」と言った。しかし、「試合ごとに確実に手ごたえは感じられるチームになってきたと思っています。ただ、選手たちはここ2年間、大会であまり勝っていませんから、自分たちの成長に半信半疑のところもあったと思うんです。だけど、これで確実に自信になっていくと思います。ここまできたら、やはり関東大会に出たいですね」と、最後は力強かった。
昨秋はブロック予選の2回戦で、初回に9点を取りながらも最終的には 駒大高 に延長の大乱戦の末15―17で敗退して今大会もブロック予選からの出場となった修徳である。そこから這い上がってくる形で、4強進出は立派といっていい。鳥山監督の言うように、試合ごとに選手個々にも確実に自信めいたものが感じられるようになってきているのではないだろうか。
それにしても、両投手が共にストレートはスカウトのスピードガンでは140km/h以上を表示する試合は質が高かった。三ツ俣君は立ち上がりよりも、4回以降になって回を追うごとにスピードも増し、スライダーも130km/hで切れ味もよく低めに決まっていた。背番号6ながら、完全にエースとなっている。一方、成立の西潟君は、昨夏も投げていたのだが、下半身が一回り大きくなった印象で力強さも増した。三ツ俣君が快腕ならば、西潟君は豪腕という表現がぴったりだろう。
序盤は、もう一つスライダーも決まらず、ストレートも高めだった三ツ俣君を捉えた 成立学園 が先行したが、修徳は一発攻勢で逆転。粘る 成立学園 は7回にやはりエースで四番の西潟君の中前適時打で同点とする。その後は、両投手が持ち味を十分に発揮した手に汗握る投手戦となっていった。
最後は、「ここまで来たら何とかしたい」という思いが少しだけ強かった修徳に、勝利の女神がほほ笑んだのだろう。
(文=手束 仁)