試合レポート

中京大中京(東海)vs神港学園(近畿)

2010.03.28

2010年03月29日 甲子園球場

中京大中京(東海)vs神港学園(近畿)

2010年選抜大会 第82回選抜高校野球大会 2回戦

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試合中の一つのプレー・瞬間のジャッジで大きく結果が変わってくるのが野球である。
今大会、松倉雄太が試合を決定づける「勝負の瞬間」を検証する。

心理戦の醍醐味!

痺れた。いや、痺れさせられた。それは単に1点差だったからだけではない。後半の両チームの攻防に、似たような場面があったからだ。両チームのバッテリーとベンチの心理戦、その醍醐味を見たのがこの試合だった。  
 その場面は1対1で迎えた6回裏と7回表に訪れる。

 まずは6回裏、 神港学園 の攻撃。 中京 の失策と内野安打、それに盗塁で無死2、3塁とチャンスを作る。打席には7番前仲正志(3年)。 中京 の捕手・磯村嘉孝(3年)は考えていた「スクイズでの1点はしょうがない」。どこかで仕掛けてくるのか?
 だが前仲は3球目を打ちショートゴロ、走者はくぎ付け。1つアウトを取った所で 中京 バッテリーの気持ちは変わった「やはり1点も与えるわけにはいかない」。
 続く打者は8番の清水将太(3年)。神港学園・北原光広監督はこの清水でのスクイズを考えていた。どのタイミングでサインを出すか?
 しかし北原監督は結果的にスクイズのサインを出すことが出来なかった。「(サインを出す)タイミングを計っていたが、カウントが悪くなった。後手後手に回ってしまった」と悔しがる。 中京 バッテリーはとにかく変化球を多投し、低めを徹底。最後はチェンジアップで清水を空振り三振に切って取った。
 2死となったところで北原監督が動く。9番の所で代打・山口俊騎(3年)を起用。四球などで当たっている1番の益田久貴也(3年)には絶対に回したくない所。磯村が考えたのはここでも低めを徹底的に要求することだった。清水の時と同じ初球はボールから入り、2球目はストライク、そして3球目はチェンジアップで空振りとまったく同じ配球。結局最後はワンバウンドになるチェンジアップを降らせて三振。この場面は 中京 バッテリーの勝ちだった。

 そして直後の7回表。 中京 は1死から7番川本毅(2年)ヒットで出塁。盗塁で二塁に進むと、8番福島大剛(3年)のセンターフライの間に三塁に進む。
 2死3塁で打順は9番。 中京 ・大藤敏行監督は、北原監督と同じようにここで動いた。代打に堀井保裕(3年)を起用。前仲と清水の神港学園バッテリーは「何としてもここで切らなくては」と考えた。次はこの日最もタイミングが合っていた1番の小木曽亮(3年)。まさに6回裏の2死2,3塁と似たような状況だ。
 慎重な配球でカウントは2-3。バッテリーと北原監督の思惑は一致した
「ストライクからボールなるスライダーを振らせる」。
 前仲が投じた勝負の1球は注文通りのスライダー。堀井は思わずバットが出しかかった。しかし寸前の所でバットが止まる。ハーフスイングにも見えたが審判の判定はボール。自信を持って投げただけにバッテリーとしてはあまりにも痛すぎる場面だった。
そして恐れていた小木曽に左中間へ運ばれる。三塁走者が還り、 中京 が待望の勝ち越し点を挙げた。結局この1点が決勝点となり、 中京大中京 が勝利した。

 7回の四球を振り返り、「タイムを取る余裕がなかった」とうなだれたのは捕手の清水。前仲も同じ気持ちだっただろう。
あの場面、6回裏と違うことが1つある。それは走者が1,3塁だったことだ。小木曽だけに神経を集中させなかったら、無理な勝負を避けて最悪満塁にするという選択もできた。しかし、四球を与えてしまったことが頭に残り、バッテリーは冷静さを欠いてしまったのだ。
 「 中京 の磯村君は落ち着いていた。すごい」と舌を巻いた 神港 の清水。
 その磯村のコメントが興味深い。
「ウチもそうですが、代打というのはチームで1番勝負強いバッター。それに人間的にしっかりしていて強気な人が多い」。
 その勝負の打者に対して、いかに負けずにリードをするか。磯村、清水両捕手のリードは間違っていない。だが、ほんのわずかだけ、 中京 の代打・堀井の強気が上回った。
 ピンチにも冷静さを最後まで失わなかった 中京大中京 と、痛すぎる四球が頭にこびりついてしまった 神港学園 。チームが未完成の春とは思えないような両チームの心理戦はこうして決着した。

(文=松倉雄太

【関連ニュース】
■ 2回戦 広陵(中国)vs宮崎工(九州)
■ 2回戦 興南(九州)vs智弁和歌山(近畿)

【選抜大会特集】
■ 中京大中京(データ)
■ 神港学園(データ)


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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